ざっくり言って、優勝戦の日の序盤の時間帯、ベスト６は大きな動きを見せないことのほうが圧倒的に多い。今日も例外ではないのだが、ひとりだけ、精力的に動いていた選手がいる。石野貴之だ。
“朝特訓”では、池田浩二と桐生順平が参加しないなか、４コース２本。といっても１本は６コースの位置からのスタートで、桐生の前付けがあり、池田が突っ張った場合を想定したものと思われる。つまり、コースにこだわらずダッシュ、それも“カド”を選択するという意思のあらわれであろう。
そのままボートを上げずに、優出公開インタビュー後はすぐに試運転。赤灯がついて試運転タイムが終わると、ペラを外して調整室へ。序盤の時間帯から懸命な動きを見せているのである。これはもう、パンチをつけての一撃仕様を目指しているとしか考えられない。こういうときの石野がどれだけ勝負強いか。もちろん仕上がりが目論み通りになればということにはなるのだろうが、彼の代名詞たる圧倒的攻撃力が繰り出さられてもまったく不思議ではないだろう。
池田と桐生の外枠勢は、ひとまずエンジン吊りでしか姿を見なかった。池田は東海勢と談笑している様子があって、リラックスして過ごしているようだ。桐生も動き出しはもう少し先になるか。
やや足的には劣勢かとも思える馬場貴也はペラ室の奥のほうにこもっている。１Ｒも２Ｒも近畿勢の出走がなく、エンジン吊りにもあらわれずに調整に没頭していた。３号艇だから、おそらくは３コース。３コースの馬場といえば、鋭すぎるまくり差し。これを繰り出せるような仕上がりを徹底して追求していくことになるのだろう。
片岡雅裕は調整室で森高一真と並んでペラ調整をしていた。今日は森高の存在が精神的に大きな支えとなることだろう。昨年のチャレンジカップ、ＳＧ初制覇の一昨年メモリアルでは森高は不在だったのだ（チャレンジカップは三国に出迎えに来ていたけど、会うことができたのは優勝を決めたあと）。ただでさえ違った感情になりやすい地元ＳＧ優勝戦。森高が近くにいることは心強いはずだ。ペラ調整も突き詰めてという感じではなく、２Ｒ発売中にはいったん切り上げている。もう少しで着水しそうな雰囲気はあった。
１号艇の平本真之はペラ調整室に姿が。しかし胡坐を組んで座っていて、これはペラを叩く態勢ではない。ゲージを当てての点検程度と見られるが、何もしないよりはこうしてペラと向き合うことで緊張を和らげようとしているのかもしれない、と思ったりした。ＳＧ優勝戦１号艇での優勝はすでに経験している。だからといって、緊張しないというものでもないだろう。一方で、対処の仕方はもうわかってもいるはずだ。彼なりに心を整えて、優勝戦のポールポジションに入る、のである（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
