●9R
勝ち上がり ①前田将太 ④寺田祥 ⑥磯部誠
西山貴浩が落水。3番手争いのさなか、遠藤エミが西山と守田俊介に挟まれる格好になり、後退した遠藤の舳先が西山のモーターに接触(守田が不良航法)。ハンドルをとられた西山のボートは挙動がおかしくなり、制御不能なまま消波装置に激突している。西山自身は自ら飛び降りる格好となっての落水だったが、はレスキューで救助されたあと担架で医務室に運ばれており、容態はかなり心配された。どうやら水を飲んで溺れた状態になったようで、意識はあるとのこと。医務室に駆けつけた仲間たちの様子も、そこまで深刻なものではなかった。それでも救急車が駆けつけており、これを書いている時点では心配は止まらない。大事でなければと願うのみだ。※追記! 12R終了の頃にレース場に戻ってきました! ひとまず元気そうです! 何より!
そうした事故レースだったため、完走した5人もやはり複雑な表情のレース後であった。逃げ切った前田将太も歓喜をあらわすことはなく、寺田祥の表情もカタいまま。彼らは事故とはまったく無関係だったのだが、事故は他人事ではないだけに、結果に対する感情は浮かんでこなくても当然だ。また、本来は事故艇の外側を通過するべきところを、充分な間隔がなかったために内側を通過しているのだが、「内」の航走指示灯が点灯しなかったので、本当に内を走っていいものか迷いも生じていたようだ(もちろん問題なし)。そのあたりも選手間では話題にのぼっていたので、いろいろな意味で複雑なレース後だったということになるか。
結果的に準決勝へ繰り上がりとなった磯部誠もまた、それが決まったあとでも難しい表情。西山とは仲がいいだけに、心配が大きくもあっただろう。とにかく、勝ち上がることになった3人には途中帰郷となった西山の分も奮闘してほしい。
●10R
勝ち上がり ①河合佑樹 ②上條暢嵩 ⑤白井英治
河合佑樹が逃げ切り。危なげのない逃走劇で、微笑が浮かぶレース後であった。やはり勝った選手が表情を柔らかくしているのを見るのはこちらも爽快な気分になるものである。
2着の上條暢嵩も笑顔を見せていたが、こちらはしてやられたといった感じの、河合を称えるかのような笑顔でもあった。実際、レース後は河合に深々とお辞儀。まいりました、とでもいうような心の声が聞こえてくるようだった。
3着は逆転で白井英治。レース後にヘルメットを脱ぐと、いつもの眉間にシワを寄せたような表情が見えたのだが、エンジン吊りに参加した仲間へ礼を言う声はかなり明るく、野太い。もちろん1着2着が理想ではあるが、逆転で勝ち上がり圏を確保したのだから、気分が悪かろうはずがない。一方、逆転された土屋智則は対照的に浮かない表情。上の写真は笑顔もあるが、レース直後は本当に悔しがっていたのだ。
●11R
勝ち上がり ①定松勇樹 ③馬場貴也 ⑥島村隆幸
定松勇樹が逃げ切り。馬場貴也のまくり差しを寄せ付けずの快勝である。レース後の充実し切った表情が実に清々しい! 対戦した先輩たちには最敬礼で、さらに申し訳なさそうに顔をしかめる。なにしろ3000番台の先輩が3人。いずれも自分が生まれる前から選手であり、濱野谷憲吾は生まれた頃にはスーパースター。そんな先人たちを相手にしたら、そうした初々しさが一気に顔を出すというわけである。
馬場は、定松に笑顔で応えると、そのまま話し込みながら控室へと戻った。最も近くで定松の逃げを見ていたわけだから、自分との足色の違いなども含めて、感想戦の相手が定松となるのは自然なことだ。若者の堂々たる走りを称えるという部分もあったかもしれない。
大外から勝ち上がった島村隆幸は粛々としたレース後。やはり対戦相手に頭を下げて回っていたが、濱野谷に対しては礼の角度も深いように見えた。5カド濱野谷が握って攻める展開となって、自身の差し場も生まれた。そうした感謝の意味もあったか。濱野谷もニッコリ笑って応えており、気持ちのいいレース後の交流であった。
菊地孝平は2マークでキャビって濱野谷と接触。やはり濱野谷にはすぐに頭を下げている。また、接触したのが濱野谷のボートの舳先で、エンジン吊りのあとにはその部分に傷をつけていないかと確認もしている。馬場のまくり差しにジカで越されて勝ち上がりを逃したことも含めて、かなり消化不良なレースとなってしまったか。表情も悔恨にまみれていたのであった。
●12R
勝ち上がり ①茅原悠紀 ⑤毒島誠 ②菅章哉
チルトを跳ねた菅章哉に対して、毒島誠がマーク策! しかも、スタート展示では6コースになったものが、本番は6号艇の新開航を入れず、菅を4カドにしての5コース奪取という、駆け引きも見せてくれた。さすが! しかも、菅のまくりが茅原悠紀に止められたことで、まくり差しの展開ズバリ! 勝負手を実らせたあたりも素晴らしい。
ただ、足的にはもうひとつということなのか、2マークで茅原に逆転を許してしまう。これは、菅を止めてさらに毒島を抜いた茅原がお見事! レース後の茅原はやはり充実感あふれる表情をしており、カポック脱ぎ場では毒島と笑いながらレースを振り返る様子も見られている。まさに気合の逆転勝ち!
あの毒島にマーク策を選択させた菅もさすが! まくりは不発だったものの、3番手競りを制したのも素晴らしかった。チルト3度は競りに弱いというのが定説であるが、先行する山口剛に追いつき、直線の伸びを活かして接戦に持ち込んで、最後は捌いたのだから、実に価値ある3着勝ち上がりである。もっとも、菅はまくれなかったことが悔しいのか、レース後は浮かない表情。そんな菅を見た菊地孝平が優しく笑いかけて、菅を慰めていたのだった。勝ち上がってしまえば枠不問のスタイルなのだから、とにもかくにも全力で準決勝を戦ってほしい。
一方で山口もまた無念の表情。また、2マークで新開航を弾き飛ばす格好にもなっており、すぐに競技本部に呼び出されてもいる。不良航法をとられて賞典除外となってしまったが、3着勝負の場面ではなんとかスキを突こうとするのはある意味で当然。もちろん反則は反則だが……。そんな山口を慰めたのは磯部誠。「真剣勝負してたじゃないっすか!」。僕も同感。反省しつつも、しっかり前を向いてほしい!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)