BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

若松英治の優勝

12R優勝戦
①瓜生正義(福岡)15
②白井英治(山口)16
③大峯 豊(山口)15
④新田雄史(三重)12
⑤吉田裕平(愛知)13
⑥仲谷颯仁(福岡)18

 白井が勝った。
 ガチで紙一重の攻防だった。昨日の準優で、私はふたりのパワー評価をまったく同じ【出A+・行S】と鑑定した。今日のスタート展示の足色も展示タイムも一緒だったし、オリジナル時計の1周タイムも酷似していた。

 いざ本番、私がもっとも注目していたスリットラインをふたりはほぼ同時に通過した。その外、4カドから新田がわずかに覗いたが、むしろ伸び返したのは内の2艇だ。想定どおり、数字どおり、ふたりは舳先をぴったり揃えたまま1マークに向かう。外の4艇をじりじり引き離しながら。

 パターン白で、1-2決着だ。
 私は心の中でつぶやく。予想欄で書いたが、「スリット同体ならパターン白で瓜生逃げ」と確信していた。実力もパワーもスタートも伯仲したふたりが1マークを回れば、コースが有利な瓜生が勝つ。白井の差しがどんなに凄くても、瓜生には届かない、と。

 瓜生の先マイは、ほんの少しだけ握りすぎだったかも知れない。そして、白井の差しは本人が吐露したように「完璧です!」だったかも知れない。それでも、ターン出口で私は「瓜生がギリギリ凌いでいる」と思った。この出口からの、ほんのわずかなストレートの足色が両者の明暗を分けた。

 わずかに舳先が入ったまま、白井が長身を折ってフルッ被りで握る。瓜生も握る。白井の舳先がじわり、じわり、目でわかるかどうかのレベルで食い込む。この微妙なスピードの差が逆だったら、白井の舳先がこそげ落ちて瓜生の12度目のSG戴冠が決まっただろう。

 白井の舳先はじんわり侵食しつづけ、2マークの手前でついに瓜生艇の心臓部まで食い込んだ。それを察した瓜生が強ツケマイで潰そうとしたが、もう振りほどけない。逆に白井が力強く瓜生を押っつけ、ここで白井の4度目のSG優勝が決まった。まったく同レベルと思っていた両者の機力は、行き足~伸びの部分だけ、ほんのちょっとだけ白井が優勢だった。レース的には、その“微差”が最大の勝因だったと思っている。

 細かい話はここまで。とにもかくにも、白井は素晴らしいブッ差しで4度目のSGを獲得した。初タイトルは、やはり11年前の若松ナイター水面だった。
「若松は……死んでも忘れません!」
 優勝後のインタビューでこう言いきった瞬間、表彰式に殺到した観衆のボルテージが一気に噴きあがり、やがては凄まじいエイジコールへと発展した。なんとなく、似たような光景を見た気がすると思い、すぐに合点する。

 つい1カ月前の徳山オーシャンカップの表彰式だ。徳山で初めてのGIと初めてのSGを獲った西山が「徳山貴浩」に改名するとかしないとか、観衆が大爆笑していた光景と重なった。西山にとって徳山が忘れられないレース場であるように、徳山のファンにとっても西山がごくごく近しい大切なレーサーだ。それと往復するように、今日の白井は若松のファンにとっても同じように近しく愛すべきレーサーだと実感した。

 今節の開会式で、徳山⇔若松の絆をユニークに伝えたのは大峯豊だ。
――僕の地元の徳山のSGで貴浩にやられたので、今度は貴浩の地元でやり返したいと思います!
 直後に白井がネタを被せた。
――珍しく大峯がいいこと言いました。当然、僕もそのつもりです!
 さらには海野康志郎。
――今も言いましたように、徳山のSGを貴浩に持ってかれたんで、やり返しに来ました!
 最後のオチは寺田祥
――ぼくもそう思います。
 6日後の今日、この面々は有言実行を果たした。1着・白井、2着・瓜生、3着・大峯。地元のエースを挟んでのリベンジ優勝。もちろん、多くのファンは気づいているだろうが、この4人の言動は復讐とは裏腹の「恩返し」だ。地元の徳山SGで不甲斐ない成績に終始した白井ら地元レーサーを温かく見守り、「俺が代わりに徳山代表として優勝する!」と宣言し、優勝戦当日に白井から「今節の地元代表をお前に託す」と指名され、西山はその重責に応えて見事に優勝した。徳山のことをもっとも慕ってくれる隣県のレーサーが、自分らの代わりに地元のSGをメチャクチャ盛り上げてくれた。

 今度は俺たちが、西山の地元水面で負けないくらいに盛り上げて優勝する。他のヤツらには優勝させない!
 そう強く心に決めて若松に足を踏み入れ、残念ながら不振に喘いだ西山に代わってこの大会を盛り上げ続けた。そしてそして、猛烈なエイジコール。徳山で西山貴浩から受けた多大な恩恵を、白井はじめ山口支部4人衆が身体を張って返済した。海野康志郎は3日で5キロほども減量したが、それはただただ己が優勝したい、活躍したい、だけではなかったと私は思っている。

 西山の優勝と、白井の優勝と。支部も世代もシチュエーションもまったく違うふたりの優勝の、水面下にたゆたう絆をやんわりと感じさせる6日間だった。おそらく来年あたり、ボートレース徳山と若松の間で【白井英治⇔西山貴浩】の超大型トレードが執り行われるだろう。(photos/シギ―中尾、text/畠山)