半周だけのデッドヒート
11R優勝戦
①中島孝平(福井) 11
②西山貴浩(福岡) 15
③新田雄史(三重) 13
④篠崎元志(福岡) 15
⑤岡崎恭裕(福岡) 17
⑥上野真之介(佐賀)17
今節は1周1マークと2マークでの事故が相次いだが、この大一番でも残念なアクシデントが起こった。2コース西山が気合の差しハンドルを入れた直後、攻めすぎてターンマークに追突して転覆。
そこに二番差しの元志が乗り上げて連鎖の転覆。さらに6コースから最内を差した上野も乗り上げ、転びはしなかったものの先行艇に置き去りにされた。西山は妨害失格。1着狙いの勝負手が裏目に出た感じだけに責めきれないが、この反省を来年に生かしつつ、もうひとつ後のレースで活躍してもらいたい。
さてさて、そんな玉突き惨事があったとはいえ、こと1・2着争いは事故の影響がまったくないデッドヒートだった。逃げる中島と、3コースからまくり差した新田! 事故があって実質次の2マーク決着だからして「舳先が入らなければ中島、入ってしまえば新田」という半周勝負!
雌雄を決する行き足勝負は、わずかに出足系統が強力な新田がジリジリと舳先を伸ばし、ついには中島の内フトコロを貫いて大勢が決した。新田雄史、4年ぶり2度目のGPシリーズ優勝、3つめのSGタイトル戴冠、おめでとう! GPウイナー中島を切り裂いた剃刀のようなまくり差し、事故とは無関係にメチャクチャかっこ良かったぞ!!
で、残念ながらレース内容についてこれ以上は書きようがないのだな。2周ホームからは、事故艇を避けてどんどん縦長になっていく隊列。こういうちょっと後味の悪い決着も、「水上の格闘技」と呼ばれるボートレースの悲しくも宿命的な一形態なのだ。
などと、ここまで書き終わってスタンドの2マークに駆けつけてみたら……
まくり決着!!
12R賞金王決定戦
①峰 竜太(佐賀)07
②丸野一樹(滋賀)10
③平本真之(愛知)09
④瓜生正義(福岡)05
⑤白井英治(山口)09
⑥毒島 誠(群馬)10
今日の住之江の1マークには、魔物が潜んでいた。そうとしか思えない。
11Rは西山貴浩がターンマークにぶつかり、2艇が転覆した。惨事と呼ぶに相応しい事故だったが、12Rはその比ではなかった。圧倒的人気の峰の舳先がターンマークに衝突して横転。直後、2コースから差した丸野、5コースからまくり差した平本が玉突き状態で同時に転覆。6コースから最内を差した毒島もこの同時多発事故をギリギリ避けきれずに転覆……。
1周バック直線で、生き残ったのは瓜生と白井だけだった。一瞬にして3連単は不成立。約41億円という恐るべき金額が購買者に返還された。それまでの最高額は約24億円だから2倍近い返還額……この数字も含めて、紛れもなくボートレース史上最大の惨事とお伝えしていいだろう。そのあたりは、ちょっと頭が混乱したままで何を書けばいいのか分からない。
レース担当の私が声を大にして読者に伝えなければならないのは、これだ。
3コース瓜生正義のまくりは、イン峰竜太を完全に捕えきっていた。
まくりでも恵まれでも優勝は優勝。そう思われる方もおられるだろうが、この1億円とプライドを懸けたボート界最大のレースで、瓜生がどう勝ったかは後々まで語り継がれる。恐るべき大惨事の記録・記憶とともに。事故は事故、レースはレース。今日の瓜生は、インコースの峰をまくりきった。それに関しては、素晴らしいレースだった、とファンのすべてに伝えたい。
あとはもう、残念という言葉しか浮かばない。瓜生のまくりを浴びた後の峰の追い上げ、今節の主役だった丸野の最後の立ち回り、5、6コースから差した平本、毒島の追撃……ファンの胸を躍らせるそれらの攻防は、ついぞ住之江の水面に投影することはなかった。ただただ残念無念。だからと言って、峰を責める気にもならないのだが。(photos/シギー中尾、text/畠山)