トリプルクイーン
12R優勝戦
①前田紗希(埼玉)06
②鎌倉 涼(大阪)11
③小野生奈(福岡)10
④遠藤エミ(滋賀)11
⑤渡邉優美(福岡)12
⑥今井裕梨(群馬)23

昨夏の女帝が4カ月後に極限女王に書き換わり、年をまたいだ2カ月後に爆速クイーンへと進化した。2025年度(4月~翌3月)の女子プレミアムGI全制覇!!!

決まり手は「抜き」。1周バックの出口は少し置かれた3、4番手。簡単な勝利ではなかった。まず、スリットラインで称賛したいのはインの前田だ。GI初優出、しかも1号艇というとんでも重圧の中での唯一ゼロ台スタートは天晴れの一語。

さらに、トップスタートを生かして1マークを先取り、2コース差しの鎌倉~3コースまくりの生奈を寄せつけないインモンキーも見事だった。つまり、前田紗希はスタートから1マーク出口まで、完璧な立ち回りを魅せた、はずなのである。

だがしかし、このレースにはとんでもない“魔法使い”が潜んでいた。4カドから二番差しであっという間に前田の膝元に食らいついたエミ! 窮屈かつ鋭角なターンを強いられる二番差しなのに、上半身をくの字に折り曲げて重心を変動し、できる限りサイドの掛かりを軽減したスピードターンは、3本の引き波をするりと超えてさらに加速した。

なんちゅうターンぢゃ。
エミの舳先がガッチリ前田ボートの内に食い込む。こうなったらマウントをとりきったエミが断然有利なのだが、今日のエミは(も?)ここでストレート足が売りきれる。
「出足はいいけど、そこからが重くて伸びがつかない。もうひと伸び欲しい」
初日から不安視していた“重たさ”が、この正念場でも顔をもたげたか。もちろん、逆にいうと前田の行き足が秀逸だったわけで、「気に入ってるのは行き足です」という自信がそのまま反映されたスリット裏でもあった。

ただ、いったんねじ込んだエミの舳先は、すぐには振りほどけない。2艇の抜きたい抜かせない鍔迫り合いは2マーク手前まで続き、ようようエミの舳先が抜け落ちたときには、2艇ともに簡単に勝つべきマイシロを失っていた。

そう、ここでやっと鎌倉だ。充足なマイシロを失った前田とエミが力なく2マークを回った瞬間、その最内をシャープに差し抜いた。あっという間の逆転劇! レース後、私はリプレイで鎌倉の1周バックの航跡を確認した(リアルタイムでは、前のふたりだけを見ていたから)。1マークで生奈の引き波を浴び、エミに並ぶ間もなく交わされた鎌倉は、当面の敵を生奈にロックオンした。最内を走る先頭2艇はさし置いて、外へ外へと艇を振って生奈とラップ。そして、マウントを取りきったまま狭い鳴門水面の外ラチを直進し続けた。

もしかしたら、今日の最大の勝因はこれかも。
なんとなくだが、私はそう思った。前の2艇が競っているのは見え見えだったはずで、3番手を行く鎌倉としては一刻も早くその前線に向かいたかっただろう。並の選手なら実際に矢も楯もたまらず、その局地戦に向かって自身も逆転すべきマイシロを失ったり、ブロックを中座した外選手に叩かれたりで自滅する。そんなシーンを何度みたことか。
鎌倉の航跡は冷徹にして正確だった。2マーク手前まで徹底的に生奈の面倒をみて反撃の芽を消し去り、だからこそたっぷりのマイシロを持って大逆転の差しをねじ込めた。もちろん、前のふたりが大競りにならなければ、鎌倉は同じ戦法で3着をキープするだけだっただろう。だが、鎌倉がわずかの可能性でも1着になれるチャンスは、この戦法しかなかった。そして、今日の鎌倉はその待機策が鮮やかにハマった。

「私はスピードがぜんぜんないので(苦笑)、この大会に推薦してくれた住之江さんに恩返ししたいです」
昨日のレース後、鎌倉はこう言ったとか。確かに鎌倉よりスピードのある選手は若手主体に大勢いるだろうが、ボートレースの“強さ”はスピードだけでは決まらない。今日の鎌倉は、その事実を完璧に証明した。いや、今日だけでなく、それを証明し続けながら3つの女子ビッグを連続でもぎ取った。

去年の賞金女王は遠藤エミだった。さまざまなビッグレースでも、レース中に派手なパフォーマンスが際立ったのはエミだった。今日のレースでも。最強女子の強さ速さを知り尽くしているライバルが、その力を信頼し、巧みに利用しながら1着を奪い取る。ボートレースの深淵をちょいと垣間見るような逆転劇だった。(photos/シギ―中尾、text/畠山)
