息詰まる攻防
10R
①渡邉優美(福岡) 10
②守屋美穂(岡山) 09
③竹井奈美(福岡) 12
④浜田亜理沙(埼玉)09
⑤魚谷香織(山口) 14
⑥上田紗奈(大阪) 17
9Rまで①-②が5本も出現した内寄り水面は、まんま準優の開幕戦にも反映された。インコース渡邉が1マークを先取り、2コースから差した守屋も3コースからぶん回した竹井も届かない。
おそらく3人の機力差は微々たるもので、コースの利が大きくモノを言う1マークだった。竹井は開幕3連勝から失速しての3号艇⇔優美は4・6着スタートから後半3連勝で1号艇。その勢いが、そのまま1マークの明暗を分けた、とも言えるだろう。
ただ、バック直線で優美1着は固まったが、2着争いは混戦ムードに。バックで守屋が抜け出したところ、4番手の浜田が2マーク手前で内に切り込み守屋を押っつける。先行する敵に楽をさせない立ち回り。最近の浜田の強さをモロに感じさせる激辛の追走だ。
守屋は嫌味で迫る浜田を抱いて交わしたが、今度は最内から竹井がにょっきりと舳先を突き出した。2周ホーム、守屋はまずは真ん中の浜田を絞めきってから、竹井の横にぴたりと付けて差しを選択。竹井は追い風でやや流れ、浜田が背後から握って追走し、あれよあれよと1周目のバック直線とほとんどまったく隊列、位置取りになった。つまりは、実にレベルの高い攻防だ。
そして、2周2マークもまるで1周前のリプレイのように【守屋先制~浜田押っつけ~守屋抱いて交わし~竹井差し】の息詰まる攻防。しかも、浜田の押っつけが1周前より厳しさを増したから、守屋の航跡も大きくなる。竹井の差しがさらに激しく突き刺さる。
差してばかりでは危ないか。
おそらくそう判断した守屋は、今度は竹井に急接近して絞め込んだ。気の強さに定評のある竹井も一歩も引かない。このまま2艇が並んでいたら内の竹井に分があった気もするのだが、ここでスリット近辺の行き足にはっきりと差が出た。守屋がスーーッと伸びて、竹井の舳先を置き去りにしたのだ。それでも竹井は内から押っつけにかかったが、1艇身の貯金を得た守屋が力ずくで叩き潰し、ここでやっと勝負あった。守屋vs竹井vs浜田の力量が随所に見て取れる、迫力満点のバトルだった。
サプライズな伸び足
11R
①海野ゆかり(広島)14
②藤原菜希(東京) 15
③小野生奈(福岡) 16
④宇野弥生(愛知) 19
⑤大瀧明日香(愛知)18
⑥西村美智子(香川)20
ちょっとビックリの1周バック直線の攻防だった。それまではほぼ脳内レースどおり。スリット横一線からパワー強力な海野が逃げて、行き足のいい生奈が3コースからぶん回して、2コース藤原はその引き波でやや失速して、ターン出口で1=3態勢の出来上がり。藤原がしぶとく舳先を突っ込んでいるが、2マークまでに力尽きるだろう。
などと見ていたらば、4カドから差した弥生が伸びる伸びる伸びる! 昨日までそんなパンチ力はまったく感じていなかったから、「実は紗奈29号機が紛れ込んだのでは?」などとアホな錯覚を起こすほどだった。
改めてリプレイを観てみたら、先マイした海野の艇が少し暴れ、そこに藤原~生奈が玉突き的に圧迫して軽く接触。それで3艇の推進力が削がれた見え方ではあったが、それにしてもの弥生の伸び足よ……。昨日の『週刊BOATBoy』配信でも今日の当ブログ予想でも、私は弥生の機力を鼻で笑うレベルで扱っていたから、これはもうお詫びするしかない。弥生47号機が、あんなに伸びるとは思いませんでした、ごめんなさい!
「まさか、届くとは思いませんでした!」
レース直後の弥生自身も、あのバックの鬼足にビックリしていた。極端に気圧が変わった中、今日は乗り心地を求める調整をしていた、というからモーターは分からない。明日はまた天気がぐずつき気圧も下がる予報でもあり、どんな足になるのか。もちろん軽視はしないつもりだが、悩ましい予報ではあるな。
さてさて、あっという間に先頭に立った弥生の後方では、生奈vs海野vs西村vs大瀧の4人がバチバチやり合っていた。この中からギリギリ抜け出し、大事な大事な2着を奪ったのは海野。展開のアヤもあったし、海野自身の好判断・好旋回も味方したが、1周2マークの出口でスーッと抜け出した押し足はじめ、要所要所で三島敬一郎イチ推しの58号機が背中を押していた、と思う。明日はダッシュ戦になりそうだが、「展開一本でバック突き抜けるパワーはある」としっかり肝に銘じておきたい。たとえば、今日の弥生のように。
2度目の4カドまくり
12R
①遠藤エミ(滋賀)16
②香川素子(滋賀)20
③平山智加(香川)16
④三浦永理(静岡)10
⑤寺田千恵(岡山)10
⑥西岡成美(徳島)12
絶対エースの遠藤エミが負けた。埋伏の兵は、11Rの弥生と同じ東海の青カポック! ただ、私の感想としては11Rほどのサプライズではない。三浦は初日に豪快な4カドまくりを決めていたし、それを実現させるだけのパワーも感じていたし、黒須田から「最近のエリーの4カドは差しよりまくり」と聞いていたし。4カドからスタート突出しての一撃まくりは、初日のそれによくよく似た光景でもあった。
ただ、それでもインコースの遠藤エミが一撃で叩かれるシーンは、実になんとも想像しにくいものでもあった。コンマ16は6年前にFを切った身の上、地元のエース&圧倒的1番人気の重責などを加味すれば、及第点のタイミングだろう(全速だったかどうかはわからないが)。やはり、今日のところは4カドから猛烈なスタート力で一気にケリをつけたエリーを絶賛するしかない。
こんな展開だから、バック直線ではさらなる大波乱の芽も生えていた。人気の盲点テラッチのマーク差し一閃!! インでまくられたエミは三浦の引き波でもたつき、寺田の舳先を甘受した。でもって、スリット裏を通過しても、その舳先はしっかり食い込んだまま離れない。寺田のストレート足がアップしたのか、遠藤のそれが劣化したのか分からないが、昨日までのふたりとは違う見え方だ。
4-5で絶対エースのエミが消えるのか??
そんな予感も漂った2マーク、エミは冷静にテラッチを回し、俊敏な差しハンドルで2番手を取りきった。このあたり、さすがの立ち回りではあった。
1着・三浦、2着・遠藤。
この着順によって、明日のファイナルの枠番は多くのファンの想定を覆すことになる。それが新たなる波乱の布石なのか、絶対エースが脇役に回っての本命決着となるのか。これはこれで興味深いファイナルになった、と私は思うのだがどうだろうか。(photos/チャーリー池上、text/畠山)