BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――あと2つ!

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 来たのか。ついに来たのか!?

 SGにもっとも近い男たる、敬称でありながら本人にとっては屈辱でもある異称。それを返上する瞬間が、あさって到来するのか!

 白井英治が予選トップ通過! 12Rを2着以上で1位が決まるというなか、白井は6号艇。不利枠でありながら、5カドをとって、攻めて、判断よくまくり差して、1着! 堂々たる航跡でポールポジションを勝ち取った。

 というわけで、すっかりアツくなった僕は、白井に「今度こそ!」と声をかけた。白井はそんな僕を見て、ニッコリ。「まあまあ、そんなに力入れないで(笑)」。そりゃ力入るでしょ! 白井はさらに大笑いした。

 よく考えれば、問題は「白井自身が力入り過ぎないか」であろう。白井がここまで無冠に甘んじたのは、実はメンタルの問題ではないかとにらんでいる。優勝を意識しすぎて決め手に欠いたのではないかということだ。だから、今日の段階での白井の状態は理想的だと思う。白井の好きな将棋でいえば、勝ち筋は見えて、あとは的確に寄せるだけ。悪手さえ指さなければ、獲れる位置にはいるのである。明日明後日、白井がどんな一日を過ごすか。まずは明日、王手をかけねばならない。それができれば、まさに今度こそ!だ。

 

 

 

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 一方、SGにもっとも近い男を継承しかねない男が峰竜太である。3日目を終えて予選トップで、今日の10Rを勝てば文句なしの予選トップ通過だった。だが、5着に敗れて得点率も降下、準優1号艇も逃してしまった。もちろんチャンスは継続中だが、逃した魚の大きさはなかなかのものだ。それを認識していたかどうか、レース後の峰の表情は冴えなかった。もちろん敗戦自体が悔しいには違いないが、ややテンションが下がってしまったように見えたのである。この精神状態をどう引き上げていくか。カギは案外そこにあるのではないかという気がする。白井も峰も優出すれば、まさに悲願強奪バトルとなる。そんなドラマが14年ファーストSGにあってもいいと思う。

 

 

 

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 ボーダーラインは結局、5・67まで下がった。急降下したのは11R以降で、10R終了の時点では6・00でも上位着順差で予選落ちという事態が起こりかねない状況だった。だから、10Rで4着に敗れた齊藤仁は、表情をカタくしている。予選を突破できなかったという意識が強かったのだろう。

 11R、4着条件の勝負駆けを失敗した鎌田義の表情など、怒りに打ち震えているようにしか見えなかった。なにしろ、同じレースを戦った師匠の松井繁が先に「ありがと!」と声をかけたのに、それが耳に入らず、松井の姿すら目に入っていないようだったのだ。岡村仁の快活な「ありがとうございました!」は聞こえていたと思うのだが、それに反応する余裕もない。その20分ほど後に顔を合わせたが、僕などに声をかける余裕などあるはずもないのである。その表情は、なかなかにツラいものだった。

 

 

 

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 だが結果、仁ちゃんもカマギーも予選突破! 二人がそれを知ったときの表情は見ることができなかったが、田村隆信が記者さんに「鎌田さんは?」と訊ねており、その田村が控室に消えたあと室内から歓声のような声が聞こえてきたので、カマギーはきっと表情を緩めたものと思う。二人とも、一度は諦めていたのだから、明日は失うものは何もないはず。開き直りの一発を期待するぞ。

 

 

 

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 それにしても、松井繁の貫録には改めて圧倒されますな。予選トップ通過はならなかったが、2位で準優1号艇。レースを終えた直後の表情には、少なくとも準優1号艇ゲットはわかっていたとしか思えないほど、充実感がうかがえたのだった。王者の風格が漂っていた。

 ただし、機力的には納得してはいないようだ。素早く着替えると、速攻でペラ室へと向かったのだ。レース中に何かを感じたのだろう。対岸のビジョンでリプレイが始まると、それにじっと見入り、その後ペラを叩き始めている。残された時間はわずかだったので短時間ではあったが、その短い時間を無駄にするつもりはいっさいない。明日も一日、調整に励む姿があるはずだが、その成果がどういうかたちで出るのか、楽しみだ。白井や峰にとって、悲願達成のもっとも高いハードルは、やはりこの人だろう。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)