BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――頑張ってる!

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 序盤はなかなか快調だった羽野直也は、尻すぼみの成績になっていき、9Rは4着競りに敗れての5着。4着ならば得点率は6.00だっただけに、ハナ差負けは悔やまれる。それでも、11R終了時点では20位につけていたので、12Rの結果次第では滑り込みの可能性はあったのだが……。
「いや、それを願うことはしないです」
 羽野は潔くそう言うのだった。それから羽野は、最近の自分の詰めの甘さを語った。それが今の課題なのだ、と。勝負駆けに失敗したことにも、そんな自分が悪いのだと彼はしっかり向き合っているのだ。
 そして結果、滑り込みはならず。エンジン吊りに向かう羽野は、まるで意に介したふうもなく、粛々と作業に加わるのであった。

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 10Rでは、高野哲史が2着。快調にポイントを積み重ねて、この時点で4位に浮上していた。レース後のモーター格納作業は、特に表情を変えることなく粛々と。その作業中に11Rが始まって、前本泰和が3着に敗れた。これにより、高野は3位に浮上。準優1号艇だ! それでも高野の表情が大きく変わったようには見えなかったのだが、周囲の見る目はもちろん変わる。すぐに報道陣が高野を取り囲み、1号艇の弁を取り始めたのだ。SGの準優1号艇の重みを早くも味わった!? 明日はとにもかくにも平常心で臨みたいところ。

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 10R、白井英治は勝てば予選トップ通過が確定だったが、3着に敗れてしまう。それでも予選2位以上は確定で、準優の白カポックのひとつは彼に渡ることは決まっていた。ペラを手に整備室に入っていく白井が、そばにいたこちらを見つけ、ニヤリと笑った。
「俺、よう頑張ってるでしょ!」
 2連対率31%のモーターで、よくぞ準優1号艇に辿り着いた。そりゃもう、よう頑張ってるに決まってるでしょ! というか、今の白井英治、本当に強い。

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 そして、迎えた12R。峰竜太は2着以上でトップ通過だったのだが、4着に敗れてしまう。篠崎仁志がピット離れで遅れて、しかし回り込み、これを山口剛、上野真之介が譲らなかったことから、オールスローになっている。スタートの起こし位置が想定と違ったようで、峰は対戦した上野に「スタートぜんぜんわからんかった」と言って苦笑いを見せた。おそらく、状況は把握して臨んでいただろうから、文字通り、敗因を呟いた一瞬だっただろう。

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 というわけで、結果として白井英治が予選トップ通過だ! もう、よう頑張ってるどころか、ですよ。すれ違いざまに白井に人差し指を立ててみせると、白井は「ガハハハハ!」と呵々大笑。まあ、10Rで自力で掴めれば一番だったわけだけれども、これが勝負の綾というもので、価値の高さに変わりはない。

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 12Rは菊地孝平が逃げ切り勝ち。2着でも予選を突破できはしたが、当然1着しか考えていなかっただろう。ピットに上がった瞬間、「ヒューーーッ!」と雄叫びをあげた菊地。それはもう、会心の逃走劇を決めた歓喜の叫びである。同時に、テンションは高いが、安堵の思いもこめられた叫びだったかも。気合の入る一番だったのは間違いないのだ。

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 今日の渾身の勝負駆けはやはり毒島誠だ。前半は5号艇で1着、そして11Rは逃げ切り! バックでは前本泰和に迫られたがなんとか押さえこんでの勝利だった。おそらく足的には前本との差を感じたはずであり、勝負駆け成功の快心はあるにはあるだろうが、明日に向けてさらに褌を締め直したはずだ。レース後のペラ点検も抜かりなく行なっており、明日もまた“ギリペラ”で準優突破をはかるだろう。

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 さてさて、その毒島が出走待機室を出てボートリフトに向かった11R発売中。このとき、平本真之がただひとり試運転をしていて、切り上げてリフトに乗ったのを見つけた毒島が駆け付けたのであった。これを見て、次いでやって来たのは長田頼宗。リフトから見上げたら先輩二人が出迎えていて、恐縮する平本であった。

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 それを見た後輩たちは、先輩に働かせるわけにはいかんと(しかも毒島は1号艇を控えているのだ)、次々にわらわらと集まってきた。気づけば10人前後がエンジン吊りをしており、後輩たちが相手とはいえ、自分一人に多くの選手が助けてくれたとかえって恐縮。それを見て、秦英悟が一言。「全員の顔、覚えました?」。ダハハ、恩を売ろうってことですか(笑)。えーっと、毒島、長田、秦、仲谷颯仁、磯部誠、高野哲史……うがーっ、俺が覚えてないよー。ともかく、遅くまでの試運転、本当にお疲れ様でした!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)