あわや、銀河競り??
10R
①井口佳典 17
②丸岡正典 12
③平尾崇典 16
④山崎智也 13
⑤重野哲之 11
⑥湯川浩司 15
2コース丸岡の動きが、レースを決めた。丸岡は、スリット付近でスーーッと伸びた。昨日までより、はるかに強い行き足。が、スタート慎重だった井口もじわり伸び返す。2艇はちょうど半艇身ほどの差で、1マークに向かった。この微妙なアドバンテージは、実は2コースにとって厄介な代物なのだ。まくり、差し、どっちにするか。ふたつにひとつを、迅速に決めなければならない。
一瞬、丸岡は握って攻めようとした、と思う。こうなると、SG名物「銀河競り」で2艇ともにぶっ飛んだかもしれない。が、さらに強烈に伸び返した井口を見て、差しに構えた。その分だけ、差しのタイミングが遅れた。また、井口も同期のまくりを牽制して、強めに握りながら1マークを回った。まくらせず差させずのターンではあったが、それでも艇は微妙に流れる。
そこに、エイヤの気合いで舳先を突っ込んだのが智也だ。今節の智也は、とにかく思いきりがいい。ターンに迷いがない。この渾身のまくり差しは、半艇身だけ井口の内にめり込んだ。さらに、その智也の半艇身内に丸岡。ここで、態勢を立て直した井口が、絶妙なタイミングですっと内に艇を寄せる。智也の艇も内に寄れ、丸岡の艇も内に寄れて、それぞれの舳先がすつぽりと抜けた。極端な斜行ではなく、「流れた艇を立て直している途中ですよ」という感じで内に寄せるあたり、心憎い。これで、1~3番手の優劣が決した。
1着・井口、2着・智也。
井口の足は、初日からゴキゲンだ。行き足~伸びを主体に、悪いところが見当たらない。が、初日からの上積みはどうか、と聞かれれば「?」だ。おそらく、伸びは相対的にみて落ちている(他が仕上げてきた)。明日はセンター枠だけに、この「伸び」の気配が明日のレースを左右するだろう。
智也の足は選手間で評判らしいが、私の見立ては「サイドの掛かりがいい以外は、ほぼすべて中堅レベル」だ。今節の智也は、この準優も含めて機力より気力で活躍している。明日も、迷いなく5コースから握って攻める智也。怖い存在だ。
それから、絶対にマークしなければならないのは丸岡の足。丸岡は持ちペラ制度の頃から5、6日目に仕上がることが多いのだが、今日の足はモンスター級に見えた。智也はもちろん、井口より上だったと思う。明日の丸ちゃん参戦レースは、アタマ以外買う気にならない。
不可解な直進
11R
①太田和美 15
②横西奏恵 12
③重成一人 19
④瓜生正義 07
⑤森高一真 12
⑥石野貴之 15
スリットから1マークまで、レースを支配したのは4カド瓜生だった。stタイミングのとおり、カド受けの重成を圧倒した。スタンド騒然、誰もが強い瓜生の復権を予感しただろう。だが、スリット直後に重成の舳先からちょうど1艇身出切ったにも関わらず、瓜生は真っ直ぐ走り続けた。場内は、また違う意味で騒然となった。「おいおい、まくらんかーー!!」
誰かが叫んだ。どうしたことだ? 私も思った。まくりきるかどうかは別に、とりあえず重成を叩きながら、内に艇を寄せるべき隊形だろう。きれいなレースに徹するとか、芦屋は裁定が厳しいとか、そんな理由で直進するようなレベルの隊形ではなかった。あれは、行けるところまで行くべき隊形でしょう、瓜生。この瓜生の直進に、外の森高と石野は、ほとんど何もできなかった。
逆に太田は楽々逃げた。そして、もっともラッキーだったのは重成だ。瓜生に潰されるどころか、太田に続いてくるりと1マークを回る余裕を得たのだ。この遅れ差しが見事にハマッて、早々に1、2着が決した。待って待ってまくり差しを選択した瓜生は、重成さえ捕まえることができなかった。パワー云々とは関係なく、これは瓜生そのものの変調だ。新ペラ制度への対応の遅れなどがあるのかもしれないが、そんなこんなをひっくるめてスランプなのだと思う。池田とともに。瓜生も池田も、人の子なのだ。
1着・太田、2着・重成。
今日の圧勝ぶりで正味の足がわかるはずもないが、太田の気配は抜群。全部がいいバランス型で、その分恐ろしく突出したものは感じられない。まぁ、2コースにもうってつけの足といえるかもしれない。
重成の足は、優勝戦では回り足は互角くらいで、あとはちょっとずつ弱めだと思う。特に弱いのは、伸び足。今節の重成は、智也同様メンタル面の強さでここまできた。そして、今日はスタートで失敗し、本人も大いに反省していることだろう。となれば、九死に一生を得た身の上をわきまえ、明日はスタートを決めるはずだ。伸びも足りないことだし、全速で行けるところまで行く。そういう男だ。
必殺、トビウオ差し
12R
①吉田俊彦 14
②原田幸哉 11
③白井英治 17
④魚谷智之 13
⑤佐々木康幸 08
⑥荒井輝年 09
今日の準優で、いちばんすんなりスマートなレースだった。スタート決めた佐々木が出切らず、内から逃げて差して握っての紛れのない展開。強かったのはイン吉田で、まくらせず差させず、回った瞬間に5艇身ほど後続を突き放していた。
2着争いはやや混戦だったが、必殺技を繰り出した魚谷がギリギリ抜け出した。必殺技とは……センターからの「まくられ全速差し」だ。正直、私は1マークで魚谷の存在を見落としていた。佐々木にまくられて、どこさもないと思ったから。だから、いきなりバック最内からニョキニョキ現れたときは、ちょっと驚いた。
で、記者席に戻ってリプを見たら、なるほど、魚谷は外から握る佐々木には目もくれず、全速モンキーでまっしぐらにブイを目指していた。ほぼ全速で、かつ腰の入ったモンキーだから、ターン後もしっかり伸びる。なるほど。センター筋でまくられながらも2、3着に残す魚谷をよくよく見かけるのだが、これで謎が解けた。今日の魚谷優出は、他の選手には真似のできない超テクニックの賜物だった、と思う。
1着・俊彦、2着・魚谷。
吉田俊彦のパワーははっきり言って軽視していた。いつもどおり出足、回り足が強く、だから安定した走りをしている。その程度。悪いとは思っていないが、「いつもと変わらない俊彦スタイル」くらいに考えていたのだ。で、実際にそうだった可能性もある。今回の俊彦はスリット隊形や集団Fや、様々な事象が重なってここまできた。パワー以上の着順だったことは間違いない。
が、今日の準優はこれまでで一番の足に仕上がっていた。とりわけ、私が不安視していた伸びが昨日までよりはるかに強かった。自慢の出足、回り足に伸びが付いてしまっては、もはや軽視すべき点は見当たらない。明日はパワーよりも、メンタルとの勝負になる。
魚谷の足は、中堅に毛が生えた程度だと思う。今日は必殺技で主導権を握ったが、それでも後続に追い上げられてアップアップという雰囲気もあった。このままの足では、6号艇でははっきり厳しいとお伝えしておく。
(photos/シギー中尾、text/H)