BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――若者の歓喜、若者の悔恨

「おっちゃん!」 ピットに響く、おっちゃんコール。新鋭王座だというのに、どこのオヤジに声援が飛んでいるんだ。まあ、報道陣にはおっちゃんが多いのはたしかだが、声援を飛ばされる道理がない。「おっちゃん、おめでとう!」 どこのオヤジだ、めでたいことがあったのは。

 

 

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   はい、すみません、くだらない展開で。おっちゃんとはおとふじ・さとし。乙藤智史ですね。1行目を書いたところ、文字にするとおっちゃんという言葉がどうにも、だったもので……。9RでGⅠ初1着。水摩敦、木下大將の同県同期の二人から、「おっちゃんコール」は浴びせられたわけです。おっちゃんは、漢字を使えば、乙ちゃんであろう。

 乙ちゃんは、仲間の祝福に笑顔満開。初めて参戦する新鋭王座でいきなりの初勝利なのだから、忘れられない徳山の秋となったことだろう。

 

 

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 それにしても、乙ちゃん、岡崎恭裕に似てないか? 顔もそうだが、髪型、体型、服装、仕草までよく似てるように思えるのだが……。今節、乙藤とは初対面、正直顔と名前が一致しない一人だったのだが、岡崎に似ていると気付いた瞬間に、「乙藤を探すなら岡崎を探せ」と勝手に決めたのでありました。

 

 

 

 似てるといえば、中尾カメラマンが「上野真之介と下出卓矢が似てる」と言い出した。なるほど、顔の輪郭とか雰囲気、よく似ているような気がしますね。「ピットで上野の写真を撮っていたら、そのとき上野はレースを走ってたんだよ。おかしいなと思ったら、撮ってるのは下出だった」だそうです。

 

 

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 で、下出は別項にあるように、本日は水神祭を達成。かたや上野はゴンロクと対照的な成績になってしまった。9Rを戦い終えた上野の表情は実に深刻で、芦屋で見たハツラツとした雰囲気が消え失せている。機力がかなり劣勢のようで、どうしたって顔は曇っていくのである。レース後はペラ調整所で一人、プロペラと向き合っていたが、その後ろ姿にも力が感じられない。言うことを聞いてくれない相棒の存在は、元気者から元気を奪ってしまうのだ。 なお、チャーリー池上カメラマンは「河合佑樹と森喜春が似てる」と言っています。森とはBOATBoyきってのイケメンで、宇宙一女子リーグを見ている男。このニフティにも時折執筆者として登場します。ま、えらい内輪の話なので、これくらいにしておきますけど、たしかに似てます。河合ファンの女性は、森もよろしく。

 

 

 

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 顔を曇らせていたのは、真之介だけではない。10R、三宅健太は1号艇のチャンスを活かせず、松崎祐太郎のまくりを浴びてしまっている。それでも、2番手争いには残っていたのだが、2周1マークでは坂元浩仁のツケマイを浴びて後退。さらに、3周1マークでは片岡雅裕のツケマイ強襲を受けて4着に転落。なんと、1レースで3度もまくりを喰らって着順を落としてしまったのだ。これは悔しい。とてつもなく悔しい。勝負での出来事とはいえ、少し同情してしまうほどだ。

 ピットに戻り、川下晃司が声をかけ、両手をボートに見立てて、アドバイスを送り始めた。まくりに対する艇の合わせ方、だろうか。三宅は、笑顔でそれを聞いていた。意外とショックは軽いのか? 川下の熱心な言葉が2~3分続いて、三宅は頭を下げて、控室へと向かった。 その瞬間、三宅の表情が一変した。

川下に背を向けた瞬間、露骨に悔恨があらわれたのだ。笑顔は悔しさを押し隠すための方便だったか。一人になった瞬間、心の奥でたぎる悔悟の念が湧き出したか。最初で最後の新鋭王座。この悔しさを晴らせるのはあと5日のみ。三宅が心の底から笑うのを、あと5日のうちに見たい。

 

 さてさて、徳山水面といえば、干満の差が激しいことで有名。それもあってか、ピットから水面を見下ろすと、相当な高さがあるのである。たとえば、住之江や尼崎はフラット。水面はほとんど目の高さだ。しかし、徳山の場合は推定6m。係留所の柱に水位を示す目盛があって、この最大値が5mだから、干潮時にはやっぱり6mはあるはずで、少なくとも通常家屋の2階以上の高さはあると思う。ハッキリ言って、水面際に立っていると怖い。

 

 

 

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 その岸壁から、木下大將が身を乗り出しているのを目撃してしまった。キャーッ! 背中にぞぞっと嫌な空気が走る。肩がすくみ、とても直視してられない……やーめーてー! しかし大將はまったく怖がることもなく、係留所にいる水摩敦の姿を探して、声をかけているのだった。

 

 

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 さらに、河合佑樹が岸壁に腰かけるのも発見。足を水面のほうに投げ出して座っているのだ。だから、やめてってば。見ているだけでおっかないんす。それにしても、レーサーたちって、高いところが怖くないというよりは、バランス感覚に優れてるんですよね。そうした動きも実に安定しているもの。あのスピードのなか、ターンでボートの上にすっくと立ち上がってしまうのだから当然といえば当然だけど、それもまたレーサーの大事な資質なのではないかと、高所恐怖症の素人は考えたりもしたのであった。

(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)