動き出しが早い、という印象を受ける。
たった3回しか戦えないトライアル。
万全で臨むには少しでも
時間を無駄にできないというのは当然だが、
11R、12Rの出走であることを考えると、
水面にある決定戦組のボートが
やけにたくさんあるように思われるのだ。
今垣光太郎は朝特訓後もボートを水面につけて、
試運転とペラ叩き。かつては“整備の鬼”と称したほど、
整備室で姿を見る機会が多かったものだが、
今日はひたすらペラと向き合う心づもりのようだ。
表情は凛々しい。
異変というほどではないが、
太田和美の本体整備というのは、
最近のSGで見かけた記憶のない光景だ。
優出したダービーやチャレカでは、
その優勝戦の朝、ゆったりと過ごす姿に感じ入ったものだった。
何もすることがないといった風情であり、
それが好仕上がりを物語っているようにも思えた。
それだけに、1R展示前から本体と向き合う姿は、
なんとも珍しいものと映ったのだ。1R直前には装着し、
その後、水面へと向かっている。
もし整備の場面を見逃していたとしても、
早い始動と見えたことだろう。
なお、ほかに本体整備をしていたのは、
平尾崇典と瓜生正義だ。
その平尾の整備の様子を外から眺めていると、
整備室の隅のほうに松井繁の姿があることに気づいた。
隣には金子龍介。時に談笑シーンも見えるなか、
松井がしていたことはゲージ擦りだった。
平尾の本体整備と松井のゲージ擦り。なんとも対照的だ。
「早い段階のゲージ擦りは出ている証し」。
この新プロペラ制度以降のセオリーに当てはめれば、王者は……。
JLC解説者の青山登さんが背後から忍び寄ってきて、
そっと耳打ちしてきた。
「朝特訓の松井、(エンジン)出てたぞ」。そういうこと、なのか。
2R発売中になると、丸岡正典が試運転に飛び出した。
昨日はナハハハっと笑いながら話しかけてきた丸ちゃんだったが、
今朝は表情が一変。鋭い視線をこちらに投げてきている。
井口佳典、坪井康晴といったあたりも
試運転の準備を始めており、
決定戦組の動きはここから本格化してきた。
気になる山崎智也も試運転に出るべく、カポックを着込んだ。
ん? カポックにはオレンジベスト。
昨日の体重は……50・4kg。1キロ以上落とした!?
過去1年、智也がオレンジベストを着たのは、
笹川賞時の2走のみ! 52kg台で走ったこともあるし、
智也の重量調整というのは珍しいことなのだ。
やっぱり一味違う!
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)