BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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びわこ名人戦 準優ダイジェスト

'風の功罪

 

10R 進入順

②西島義則(福岡)03

①長谷川巌(山口)11

③北川幸典(広島)10

④藤井定美(群馬)14

⑤岡  孝(徳島)14

⑥日高逸子(福岡)17'

 

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 鬼気迫るピット離れからイン奪取、そしてコンマ03の悶絶スタート。西島は己の仕事として、やるべきことをすべてやった。激辛の勝負師に徹した。ただ、勝ちきるにはわずかに運がなかった。

 7Rあたりから吹きはじめた強い追い風は、10Rスタート展示を前にして、ひとまず止んだ。本番も同じ水面状況で同じスリット隊形だったらば、西島が豪快なインモンキーで後続を千切り捨てただろう。

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 だが、ファンファーレの直前になって、いきなり強烈な追い風が戻ってきた。厄介なうねりが生まれ、完全な差し水面だ。西島のターンは真横に流れたように見えた。

 一方、インを奪われた長谷川にとって、この強風は神風と言っていい。流れる西島を尻目に、しっかりじっくり落として冷静に小回りした。落として回っても、外枠の脅威はほとんどなかった。外の艇も、風とうねりで前に進まないのだ。

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 バック中程で、やや経緯は変則ながら1-2の“準優フォーカス”がほぼ出来上がった。西島の2艇身ほど後方に日高がいたが、おいそれと逆転を許す西島ではない。2マーク、切り替えした日高を先に行かせて、冷静に差し抜ける。またまた2艇身差。

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この差が永遠に変わらないと思えた2周1マーク、日高が絶妙な切り返しで西島の前を塞いだ。おそらく、西島はここも落として差すべきだったのだろう。しかし、安芸の闘将の選択は、握りマイだった。1周前と同様に、艇が虚しく流れる。日高の舳先が入り、体が入れ替わった。

 1着・長谷川、2着・日高。

 結果論としては、差し巧者でもある西島は、2コースのままの方が勝ちやすかったのかも知れない。だが、「取れるインをあえて取らない」などという文字は、西島義則の辞書にはない。

 

'青い稲妻

 

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11R

①江口晃生(群馬)09

②西山昇一(愛知)16

③金子良昭(静岡)14

④落合敬一(長崎)10

⑤富山弘幸(大阪)12

⑥山口哲治(長崎)11'

 

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 びわこの風は、どこまで気まぐれなのか。このレースはほぼ無風、どちらかと言えば向かい風になっていた。レースを作ったのは、先マイした江口と4カドからまくりに行った落合。この自力で攻めた2艇は、ターンマークから真っ直ぐ力強く伸びていった。西山の2コース差しはじめ、落として回った艇はバック中間で完全に千切られてしまった。

 1着・江口、2着・落合。

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 江口がインで強いのは当たり前として、特筆すべきは落合のスリット攻勢だろう。昨日あは嵐の如き強風にも関わらず、4カドから委細構わず握って攻め潰した。ほぼ静水面だった今日の4カドも、同じように獰猛だった。スリット付近の行き足~伸びも上々で、パワーと気持ちががっちり噛み合っている。

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そしてまたまた青いカポックを羽織る明日は、3日連続の4カドが濃厚だ。この2日間のレースっぷりを見れば、外枠の2艇も落合のスリット攻撃に活路を見出すことだろう。問題は、「起こしからフル被り全速」を信条とする3号艇・今村豊を超えられるか。このセンター2機の動きが、明日のレースの行方を決めるだろう。今日の晩酌の肴は、これに尽きるな(笑)。

 

あわや1000倍??

 

12R

①古場輝義(富山)31

②瀬尾達也(徳島)35

③倉谷和信(大阪)17

④今村 豊(山口)18

⑤山﨑昭生(香川)10

⑥二橋 学(静岡)17

 

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 すっかり水面は落ち着いたというのに、ちょっと信じられない異変が起きた。20年以上、超人的なスタート勘でファンから絶大なる信頼を得ている瀬尾が、まさかのコンマ35!!!??? 何かの勘違いがあったとしか思えないのだが、同じくドカッてしまった古場とともに、1マークの手前でV戦線からほぼ脱落してしまった。

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 勢い、外の4艇が目の色を変えて1マークに襲いかかる。が、あまりの美味しい隊形に、ほぼ同時に握った山﨑と倉谷がゴッツンコ。これで体勢を崩している間に、なんとなんと超人気薄の二橋が6コースから最内を突き抜けた。山﨑に叩かれて少し差しハンドルが遅れたミスター今村が続く。その差は、2、3艇身。3連単1000倍も散りばめられた、6-4の隊形が出来上がった。

「記念の準優で1000倍かよ~!!」

 記者席のあちこちから、同じような奇声がこだました。が、それらの声は、2周1マークで別種類の奇声に変わった。今村が、全速差し一撃で二橋を捉えてしまったのだ。

「はえーーーー!!」

「さっすが!」

「美しすぎるやろ」

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 今節はスリットで精彩を欠くミスターだが、やはりここ一番の捌きは芸術品だ。この差し一発で、超1000倍の配当は半分以下になってしまった。

 1着・今村豊、2着・二橋。

 瀬尾が遅れて(遅れたから?)、超人気薄の6コースが先頭に立つ。やはり、ボートレースはどんなミラクルだって起こりうるんだよなぁ。明日の二橋は同じ6号艇。まさか、連チャンでズッポリはありえない?? いやいや、今村のスリット攻撃が一息だけに、ミスターと落合が同時に握ってぶっ飛べば……地元の記者たちの間で、二橋が「隠れびわこ巧者」と呼ばれていることをお伝えしておく。(photos/シギー中尾、text/畠山)

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