BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――ヤマテツめげるな

f:id:boatrace-g-report:20171207094513j:plain

 もろもろの仕事をこなして、ピットに入ったのは10R後。記者席でレースを見ながら、畠山と「今のはもしかして……」と話し合っていたわけだが、ピットでもやはり山田哲也の優先艇保護違反について、おおいに話題になっていた。

 まだ正式なジャッジがくだっていない時点だったので、さまざまな見解が耳に入ってきたが、おおむね「今のはアウトだろう」が最終結論。そして、実際にその判定がくだって、ピットには溜め息が充満したのだった。

 優先艇保護違反により賞典除外、が確定となってもなお、見解は乱れ飛んだ。選手同士でも両手をボートに見立てての状況確認があちこちで行なわれていたし、報道陣もまた同様。もちろん、ルール上、山田は違反を犯してしまった。これは覆りようがない。それでも、山田に同情的な声も少なくはなかった。僕も青山登さんにそんなことをまくし立てたりもした。

f:id:boatrace-g-report:20171207094524j:plain

 競技本部に呼ばれていた山田が、係留所へと続く渡り橋の入り口で、篠崎元志、新田雄史と顔を合わせた。それを見て、齊藤仁も歩み寄っていく。明らかにその件が語られていたはずだが、山田の表情はやや淡々としているようにも思えた。ただし、篠崎や新田の顔色は冴えない。3勝目をあげて予選上位につけたかと思われたものが一転して賞典除外となってしまった山田に対して、どんな表情を向けていいかはなかなか難しいところだ。遠目にも、重苦しさは感じられた。

f:id:boatrace-g-report:20171207094532j:plain

 11Rのエンジン吊り後、当事者である岡崎恭裕と山田が会話を交わしている。ルールでいえば、1着となるべきは岡崎だったのだから、彼のほうも実は複雑な心境であるだろう。もちろん、わだかまりはない。岡崎は山田を気遣っているようにも見えたし、「あそこは俺に任せれば……」という声も聞こえてきたので、どう対処すべきだったかを冷静に振り返っていたようでもあった。

 選手たちは、もちろん山田も含めて、「第23条」というこのルールをきちんと理解している。ピットで見ている選手たちも「あれは……」と賞典除外を予感したようだし、岡崎も「これは……」と思ったからこそ、「あそこは俺に任せれば」という言葉が出たのだろう(舳先がかかっていれば優先艇になる内側を走っていたから、岡崎はそう言ったわけだ)。

 ただ、それでも僕は山田に同情する。2マークで岡崎が差してきたことを察知し、絶対に前に出すまいと必死に走っていた山田が、あの微妙な差を判断できなかったとしても、それは責められることだろうか。しかも、どうやら山田は1マークに事故艇が出ていたことに気づくのが遅れたようだ。それほど必死に勝利を目指して走っていたことは、少なくとも我々ファンにとってはむしろ歓迎すべき選手の闘争心だと思う。

 言うまでもなく、選手は事故灯を確認しながら走らなければならないのであり、その部分については山田の落ち度だったかもしれない。そして、繰り返すが、ルール上、山田は違反を犯してしまったのである。だが、あまりに微妙な部分の多いルールであることもまた確かで、そう考えれば、山田はあまりに不運だったと言うしかない、と僕は思う。

 第23条は、選手の身の安全を確保するためのルールである。常に危険と隣り合わせのボートレースという競技において、選手の危険回避は絶対的な、根源的な優先事項である。事故は絶対に起きてほしくはない。これはきれいごとでもなんでもない、本音である。だから、このルールに反した場合、賞典除外という重い罰則が科される必然性はあると思う。

 だが、現状では不運としか思えない事態が起こってしまうこともまた、事実である。選手の安全を本当に考えるなら、改める余地があるのではないかというのが正直なところだ。選手の安全とエキサイティングなレースという、もしかしたら背反しているかもしれないものを両立させるためにも(両立させなければならないのだ)、再考してもいいのではないだろうか。

 とまあ、僕の意見はともかくとして、明日からも頑張れ山田哲也! 岡崎も頑張れ、笹川賞のリベンジだ!と言いたくなったのでありました。

 

f:id:boatrace-g-report:20171207094545j:plain

 もろもろ微妙な空気もあるなか、12Rを快勝したのは池田浩二である。今節は決して順風満帆な予選道中とは言えないけれども、1号艇のここをきっちり勝ち切ったのは大きい。明日の勝負駆けが楽になったのもそうだし、勝負駆けを前に1着をしっかり走れたこともそうだろう。

 エンジン吊りで出迎えたのは、もちろん愛知勢。11Rを快勝した赤岩善生も当然参戦だ。赤岩も11R後には充実した表情を見せており、予選トップに立って気分も上々だろうが、その赤岩に声をかけられて、池田もにこやかに応えていた。いい笑顔だ! 池田の笑顔はやっぱり爽快ですな!

 グラチャン戦線を牽引すべき地元の2人が3日目の終盤をきっちり締めた。明日は原田幸哉、平本真之、石川真二の3人も含めて、果敢に予選最終日を戦うだろう。その他の選手も含めて、明日の常滑に爽快な風を運んでくれますよう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=山田たち、池田&赤岩 TEXT/黒須田)