BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――見返せ!

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 青山登さんが怒り狂っていた。「ヘタクソ!」。4着条件で臨んだ1R、金子賢志がまさかの落水。カタくもなっていただろうし、1マークで後塵を拝してしまった焦りもあっただろうが、青山さんは「かわいそうでもなんでもない!」と一蹴していた。つまり、青山さんはそれほどまでに金子を応援していたし、かわいい後輩だと金子を思っていたのだ。

 もちろん、いちばん悔しいのは金子であろう。レース後には、同期生など多くの仲間が金子に声をかけている。誰もが金子の心中をよく察していたのだ。唯一の地元参戦、引き当てたエース機、見えていた準優進出……すべてが打ち崩されてしまったのだから、金子のなかで今日の2マークは忘れられないものとなっただろう。

 3週間前、毒島誠でモーターボート記念で優勝したとき、青山さんは底抜けの笑顔で喜んでいた。群馬支部の後輩は、青山さんにとって身内なのだ。金子は直接お説教も受けていたが、ナニクソ、この親父を見返してやる!と思えばいい。そして、残り2日で意地を見せればいい。そのとききっと青山さんは笑ってくれるし、金子の気持ちも少しは晴れるだろう。

 

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 しょっぱなから勝負駆けで波乱が生まれた4日目。まさかの1着条件に追い込まれた深谷知博は、本体整備を行なっていた。深谷によれば「気になるところがあったので、元に戻した」とのこと。相棒の46号機は2節前に桐生に参戦した際にも引いたモーターで、しかも優勝をプレゼントしてくれた良機。しかし、ここまで思わぬ苦戦を強いられ、メイチ勝負となる今日、セッティングを元に戻したということのようだ。

 今節の深谷はオレンジベストを着用しているが、「特にどうということではなく、気持ちの問題」と深谷は言う。減量を己に課すことで、気持ちを高めているわけだ。そんななかで迎えた1着ノルマの戦い。深谷の気迫はさらに高まっていると見ていいだろう。

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 本体整備は、片岡雅裕も行なっている。片岡はすでに準優当確。エンジン出ているという選手間の評判もピットで耳にしている。にもかかわらず、片岡は本体を割った。11R1回乗りで1号艇。何事もなければあっさり逃げ切っておかしくないのに、片岡はあえて整備をしているのだ。さらにパワーを上積みし、慢心することなく確勝を期す。ブレイクの要因はこうした姿勢にもあるのだろうか。

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 そういえば、前田将太もギアケース調整をしてたな。こちらは準優当確どころか、予選トップ。ラストが6号艇だけに予断を許さぬ状況ではあるが、それでもきっちり仕事をこなすあたりは、さすがのSGクラスである。

 一方で、篠崎仁志がゲージを擦っている姿もあった。今節、篠崎がゲージと向き合うシーンはもう何遍も何遍も見た。ゲージ擦りのテーブルに篠崎がいることが当たり前とさえ思えるほどに。仁志も準優当確、しかしのんびりなどすることはない。銘柄級が圧倒的に強い今節だが、こうした場面を目撃すれば、まあそうなんだろうなと思うしかないですな。

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 で、桐生順平。今節はあまりここでは触れていないが、そりゃ雰囲気は別格なのである。モーターは明らかに劣勢、だというのに連には絡みまくって3日目時点で予選4位。格が違うとしか言いようがない。桐生を見かける場面というのは圧倒的にペラ叩きで、次に試運転。こうして力が発揮できる環境は最低限整えて、レースでは格上のハンドル捌きを見せるわけだから、このレベルではモノが違うと言うしかない。

 そうした自覚が本人にあるかどうかはともかく、すれ違ったりしたときなどに感じる雰囲気に暗さはまったくない。余裕すら感じるたたずまいだ。凡機を抽選で引いた際、いいハンデだ、なんて声もあったわけだが、本当にそうかも。逆に言えば、絶対本命の下馬評を覆すチャンスが、ライバルにはかなりあるわけなのだが。

 

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 さて、1Rで渋谷明憲が逃げ切って1着。尾嶋一広がやけに喜んでいた。出迎える近畿勢は全員が沸き立っており、水神祭だっけ?と記憶をたぐらねばならなかった(去年やってます)。渋谷って、人気者かも! ファンの皆様、渋谷メーケンにぜひご注目を!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田=金子、深谷、渋谷 TEXT/黒須田)