BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――穏やかに、優勝戦

 

 

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 今村豊が、胸を張るのである。

「今、すごくいいこと言ってきたよ!」

 地上波放送のインタビュー収録を終えた今村、そこで名言を残してきたらしい。ようするに、史上最年長Vの記録は、達成できないからこそ意味がある。達成できなければ、いつまでもチャレンジャーとして戦えるではないか。チャレンジャーであることが大事で、達成してしまったら守りに入ってしまい、それではダメなのだ。そういうことのようだ。えーっと、今日は勝たないほうがいいってことでしょうか(笑)。

 というわけで、「でも勝ってほしいですよ」とツッコミを入れたら、ミスター、ずっこけた。

「そりゃ、僕も勝ちたいんですけどね。うん、負けたいと思って走ってませんから、うん」

 そりゃそうだ。つい本音を口にしてしまって、喫煙所にいた誰かに「お前、俺の前を走るんじゃないぞ!」と八つ当たり(?)。覗いたら、池田浩二でした。池田、今日は4Rですけど(笑)。

 その後は、喫煙所にやって来た喜多條“神田川”忠先生と漫才タイム。お互いをこき下ろしつつ、爽快に笑っていた。「この顔で神田川だもんな~」「俺はいまや演歌の大御所だぞ」「でも、四畳半に住んでるんでしょ?」「三畳一間、だよ!」「三畳じゃかわいそうだな~」。ダハハハ! 本当にあなたは優勝戦1号艇の方ですか? その後、喜多條先生作詞の『ハローグッバイ』も歌ってくれました。ミスターの歌声聞けるなんて、もう舟券当たらなくてもいいな(笑)。

 

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 とまあ、もっともプレッシャーがかかるはずの人がそんな具合だから、優勝戦の朝とはいえ、ピットに緊張感が渦巻くはずがない。他のメンバーも実にリラックスした雰囲気で過ごしており、今日の浜名湖の青空のように、穏やかな空気である。

 菊地孝平が、昨日までよりもずっと柔らかい雰囲気なのにも驚いた。まあ、この時間帯から“菊地モード”に入っていたら疲れてしまってレースに影響するだろうけど、それにしてもここまでにこやかな菊地を今節はじめて見たような気がする。思い出すと、福岡の最終日のほうが緊張気味だったような気がするな。もちろん、雰囲気としては今日のほうがずっといいように思える。

 

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 SG2度目の優勝戦という深川真二にしても、にこやかだ。もしかしたら多少の緊張感があるのはこの人かも、とも想像していただけに、それは朝の時点では見当違いだったようだ。2Rには、後輩2人が参戦しており、エンジン吊りに率先して動いてもいた。1Rの石川真二のモーター返納作業でも、中心人物の一人となって活躍。合間合間に、周りの選手と笑い合ってもいた。まあ、6号艇という気楽さもあるんでしょうかね。いい状態で優勝戦を迎えるであろうことは間違いなさそうだ。

 

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 瓜生正義もまったくいつもどおり。優しい瓜生正義、だ。2R後には、ボートを水面に下ろした瓜生。これが優勝戦メンバーではもっとも早い動き出しだった。ボートを押してリフトに向かう際も、にこやかな表情。瓜生もまた、平常心を保っているのは間違いない。

 

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 服部幸男もいつもどおりで、服部の場合は哲人の表情。物静かにエンジン吊りに出てきては、貫録十分に作業に加わっている。仲間から声をかければ、微笑が浮かび、これがまたなんともカッコいい。こちらもまた、平常心の朝である。エンジン吊り後にたまたますれ違ったので、朝の挨拶を投げかけると、渋い表情で「おはよっす」。その口調がなんとも力強く、まったくもって素敵なのであった。

 

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 もう何度も書いているとおり、史上初の同一SG3連覇がかかる太田和美。彼もまた、言うまでもなく、まったくいつも通りの雰囲気である。平常心にして自然体。もちろん重圧に震えることもない。

 だが、あえて言うならば、メンバー中で闘志が昨日までより色濃く乗っているように見えたのが、太田であった。優勝戦の日を迎え、闘志も高まってきたか。それが新記録への決意とは限らない。むしろ、そういったオマケとは関係なく、SG優勝戦を勝ちたいという思いの強さであろう。それがひとつのメリハリだとするのなら、この男の底力を改めて痛感するほかない。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)