BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――唖然呆然憮然

 

 

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 こんなにもピットで呆然となったのは初めてかもしれない。いや、最初はテンパったのだ。大混戦の予選戦線、TOPICSで書いたとおり、計算に追われ、想定に追われ、さらに取材に追われ、別に激しく動いているわけではないのに、肩で息をする始末。ついにはオーバーヒートして頭からシュワシュワと泡を吹いたあげく、呆然となった。その時の僕はほとんど、息をする人形だった。

 癒してくれたのは松田大志郎だ。「黒須田さーん、マンシュウぜんぜん出せてませーん」と声をかけてくれたのだ。これでスイッチが入った。算数方面のスイッチは故障したままだったけど。

 まだ2日残しているではないか。明日は5号艇と6号艇? アウトから一発かませば、マンシュウでしょうが!「10マンシュウ、20マンシュウになるかもしれないですね~」。そうなれば僕も畠山も大喜びですよ! 僕は完全に煽りマシーンと化していた。

 ここまで大苦戦の大志郎、やはりちょっと意気消沈している様子があった。西川昌希の水神祭を待つ間、「西川君は大物になりますよ~。僕は小物程度ですけど」と同期を持ち上げつつ、自分を卑下してしまったりしている。そのあとも力弱いことばかり言うので、煽りマシーン化している僕はつい、「なんでネガティブなことばっかり言うのよ!」と突っ込みを入れてしまった。すると大志郎はダハハハハと大笑い。うむ、その元気があれば大丈夫!

 初めてのSGで、大志郎はいい経験をしていると思う。これで次から何をしていけばいいのかを、きっと感じ取れているはずだからだ。あと2日、頑張れ大志郎。10マンシュー20マンシューを期待しつつ、舟券で追っかけるぞ。

 

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 もちろん、西川昌希もいい経験をしている。しかも西川は結果がついてきている!

 おめでとう、水神祭!

 同期の大志郎ももちろん参加して、11R後に行なわれたおめでたい儀式。先輩の安達裕樹や東海地区の仲口博崇らも加わって、春の陽気のなかで賑やかに行なわれている。ウルトラマンスタイルで持ち上げられ、放り投げられると、西川はくるりと空中で一回転! 水中では笑顔満開で、気持ちよさそうに平泳ぎで陸へと戻ってきた。

 

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 水神祭もめでたいが、初準優もまためでたい。明日は王者もいる番組に入っているが、まさか怯むような西川ではあるまい。もちろん1号艇の元志にだって張り切って攻め込むだろう。艇界トップツーのイケメンに挟まれた稀代の個性派若武者・西川昌希。何をするにしろ、また何もできないにしろ、彼の今後のSG路線の歩みの第一歩として、絶対に注目すべき一戦である。

 

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 勝負駆け組については、黒井達矢のフライングが残念だった。勝負駆けで迎えた1号艇。いろいろな意見はあろうが、スタートで思い切りよく踏み込んだことは、今後SGで戦っていくうえにおいて、教訓という意味も含めて、悪くない経験だと思う。レース後はさすがに顔色を失い、我がことのように沈痛な表情で出迎える先輩たちに頭を下げていたが、これを糧としてまた明日から力強く歩んで行ってほしいと思う。

 

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 同じレースでは、松井繁の憮然とした表情も印象に残った。5着ということは、シンガリ負けである。1マーク握って攻めて、しかしキャビった黒井の煽りを受けた。黒井がフライングしていたわけだから、不運極まりないと言うべきだろう。ただし、王者の憮然はただ黒井に向けられたものではない。納得のいかない敗戦を、言い訳もせず、愚痴もこぼさず、一人噛み締める王者の姿がこれなのだ。さすがにモーター格納中には、心安い整備士さんとレースを悔しそうに振り返ったりもしていたが、相手が選手ではないから語れることもあるものだろう。王者には悪いけど、松井って負けたときの色気がまたカッコいいんです。それが王者たるゆえんなのだと、僕はいつも思う。

 

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 予選トップは仲口博崇だ! ダービーを思い出すなあ。緊張感に包まれまくっていた、あの仲口を(笑)。報道陣に問いかけることで、自分の立ち位置は11R2着後には理解していた様子の仲口。ただ、その時点ではトップ確定ではなかったので、かなりリラックスムードではあった。ピットに笑い声が響いたりもしていたものだ。

 12Rが終わり、仲口のトップが確定。JLCの展望インタビューを受けるため、座り込んで待機していた仲口の表情は……緊張しているように見えました(笑)。先入観があることを否定はしないが、なんか早くもじっと考え込む表情になっていたのは確かで、僕はこれが仲口博崇という人の魅力だとも思う。

 少なくとも、そのドキドキが足かせになるようなことはないと思う。すでに一度経験し、しかももっともっと大きなプレッシャーを味わっていた常滑ではそれを跳ね返しているのだ。白井英治がSGを勝って、これでぽんぽんとタイトルを獲りまくるだろう、と言われた。それを先にやってみせるのは仲口かも! あ、準優12Rは仲口と白井の直接対決じゃないか……。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)