BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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尼崎クラシックTOPICS 4日目

 

 

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 普段は鬱陶しいと感じられることも多々の畠山が、今日は恋しくて仕方なかった。変な意味ではない。今日のような日に不在はなんとも痛かった。実は理系に強い畠山なら、きっとレースを追いながらの得点状況をしっかり把握し、計算も素早く終え、どの結果ならどんな得点率順位になるのかをきっちりまとめていたことだろう。

 数学赤点の僕は、10R頃には完全に頭から煙が出ていた。それまでは取材しているんだか算数のドリルをしているんだかわからない状況で、ついに終盤の時間帯にオーバーヒートした。申し訳ないが、その時点で細かく追っかけることをあきらめた。ピンチヒッター黒須田のメモリ不足を深くお詫びする次第である。

 つまりは、それほどまでに大大大混戦だったのだ。僕だけではない。ピットでは報道陣が皆、得点率表とにらめっこしながら、「誰がトップになりそうなんだ?」「ボーダーはどうなるんだ?」と頭を悩ませていたくらいだ。まさかこんな混沌とした状況になるとは、想像もしていなかった。表現がふさわしいかどうかはわからないが、僕としては警戒もしていなかった。

 

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 3R、1着で6・00だった西山昇一が、2コースから差しをねじ入れた。インから残した上平真二も粘り、バックも、2周目ホームも接戦に持ち込んでいるが、54歳にして今がピークのベテランは若々しいターンでこれをしりぞけた。昨日の時点では、ボーダー想定は6・00だから、西山昇一、勝負駆け成功! そう信じて疑わなかった。SG初準優かあ、すごいなあ、カッコいいなあ、と颯爽と先頭ゴールする西山を見つめていたものである。

 レースが進むにつれて、風向きが変わってきている気配はあった。4Rで徳増秀樹が逃げ切って、しかし6・00には届かず。6Rで萩原秀人が逃げ切って、しかし6・00には届かず。7Rでは古賀繁輝が逃げ切って、やっぱり6・00には届かず。勝負駆け選手のポイントを1号艇の逃げが奪っていたのだ。勝負駆け選手がポイントをうまく稼げずに進むなか、5Rで松井繁が4着に敗れたり、6Rで吉田拡郎が6着に敗れたりと、上位陣の大敗もあった。計算しなくても、混戦模様となっていることは充分に想像できたわけである。

 安達裕樹が逃げ切った8R終了後、記者席にはその時点での得点率表が届けられた。西山は17位。18位は6・00の山本寛久。そして、6・00は21位の西川昌希まで連なっていた。

 

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 予選トップ争いに目を向ければ、篠崎元志がトップに立ち、2位に吉村正明。3位は松井で、4位に石野貴之だった。トップはこのあたりから出るのか? いや、そう簡単に言うわけにはいかなかった。篠崎と吉村が6号艇、石野が5号艇で最終走を迎えるのだ。言うまでもなく、大敗があってもおかしくない外枠だ。やっぱり王者かあ(最終走は3号艇)なんて気分は少々あった。

 

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 9R、吉田弘文が逃げ切って、またまた勝って6・00に届かない選手のイン1着。ここでの波乱は、峰竜太の5着か。5着でも6・00だから、通常ならなんとか生き残ったという大敗である。ところが、ここに来てさらに一人、6・00が加わったのだ。1着2本、2着1本のある峰は、6・00勢では最上位。つまり、8R終了時点での6・00勢はひとつずつランクを落とした。

 篠崎は6号艇で4着。この時点でトップから陥落している。それでも7・20で、残り3Rの結果次第ではまだトップの目が残っていた。この時点でトップの可能性があるのは、王者に吉村に仲口に守田に元志に……と、ここでオーバーヒートを起こした次第である。

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 ともあれ、追いかけることにしよう。10Rも波乱。勝って6・00と、また一人6・00勢が増えそうだった1号艇・黒井達矢がフライング。一方で、前田将太が1着となって、6・17に上昇。一気に6・00勢を抜き去った。波乱というなら、松井繁の5着大敗か。握って攻めて、しかしフライング艇である黒井がややキャビリ気味となった煽りを受けるという不運なレースだった。松井はこれで6・50まで得点を落としている。トップ争いからは脱落だ。

 

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 11Rは西川昌希が逃げ切り! これは今日のなかでは珍しい部類に入ってしまうという、逃げ切って勝負駆け成功というスッキリしたレースで、得点率6・00勢から抜け出した西川は6・80まで得点率を伸ばした。また、仲口博崇が2着で、7・33。ここで元志の7・20を逆転。元志のトップ通過は消えている。トップ争いに関しては、可能性のあった石野貴之が6着で脱落。6・17で踏みとどまって、準優行きは当確だったが、「トップの可能性のある選手が一気にボーダー付近に落ちる」という落差が混沌ぶりをよく表現していた。

 

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 ボーダー争いについては、3着条件だった池田浩二が5着で脱落。もっとも驚かされたのは、吉田拡郎だ。3日目を終えて予選3位だった拡郎は、4着&6着で6・00という条件だった。なんと、その着順を獲ってしまったのだ。西川は6・00軍団からイチ抜けしたが、代わりに拡郎が加わったという。しかも、上位着順の差で6・00軍団のなかでは4番手。事実上の予選落ちが決まってしまったのである。昨日の時点で、この事態はまったく想像できなかった……。

 

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 11Rを終えて、予選1位に就いていたのは吉村正明。2着以上で、予選トップは確定。トップ争いは吉村と、7・33で12Rを待つ仲口、そして守田俊介の3人に絞られた。守田は1着なら7・33。上位着順の差で、仲口を超える。吉村が3着以下に敗れれば、畠山が泣いて喜ぶ予選トップ通過だったのだ。

 

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 一方のボーダー争いは、こうなっていた。ちなみに、6・00ではもはや軍団最上位で、この時点で18位だった峰竜太には届かない状況。

①原田幸哉……1着で6・00。

②菊地孝平……2着で6・33、3着で6・00。2着以上。

③守田俊介……4着で6・33、5着で6・00。4着以上。

④深谷知博……届かず。

⑤毒島 誠……4着で6・33、5着で6・00。4着以上。

⑥吉村正明……無事故完走当確。

 いかに大混戦だったかは、予選トップを狙える守田が、予選落ちの可能性があったという点に最大限にあらわされている。SG初Vに王手もあれば、一般戦回りもあるという天国と地獄感は、そうそう味わえるものではない。

 結果、原田-菊地-毒島-守田-吉村-深谷の順でゴールし、18位以内に変動はなし。峰竜太が18位でギリギリ予選突破を果たしている。

 ということは、残念無念! 西山昇一は次点に終わってしまった。きっちり1着条件をクリアしたはずが、終わってみればわずかに届かなかったという不運。記録として残るのは「予選落ち」だが、記憶には「ピン条件を突破した!」と刻んでおきたい。

 

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 そして、予選トップは仲口博崇! ふぅ……やっとオーバーヒートは収まった。なんだか、ただひたすら状況を追いかけるだけの原稿になってしまって申し訳ありません。数学赤点の僕にはこれが精一杯でした。つまりは、それほどSGではまれに見る超絶な混戦模様だったというわけである。

 オーバーヒートのなかでひとつ感じたことは、これだけの混戦でトップとなった仲口は決して万全ではなかろうということ。実際、パワー的には抜けているとはまったく思えないし、むしろ18位の峰のほうが足は上位の部類だと思われる。畠山がやまと学校に行っている間に、すっかり波乱の気配が漂ってきた尼崎クラシック。穴党の畠山はよだれを垂らしながら明日、尼崎に帰ってくるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)