1R前にペラ小屋を覗くと、優出メンバーの姿はなかったが、「大入り状態」になっていた。そのなかには湯川浩司の姿も見られた。
いつもどおり! やるだけのことはやる選手たちだ。
優出メンバーの姿がなかったのはそれもそのはず。「公開インタビュー」が行なわれたあと、それぞれにTVインタビューを受けたりしており、1R後には優出メンバーでのスタート特訓が行なわれたのだ。
桐生順平などは、インタビューを受けたあと、ボートのもとに走っていって、水面に降ろし、特訓に参加する忙しさだったが、そこにバタバタ感はまったくなかった。軽快に飛び回っているように見えて、好感が持てたものだ。
一人でいるときの山崎智也が少し不機嫌そうに見えるのもいつもどおりか。
いいときの智也は、仏頂面にも見えるような顔で集中していることが多い。
それでも、赤坂俊輔に話しかけられたときや秋山直之を見かけたときなどは、すっと表情をゆるめる。
ピットにいながらも、オンオフの切り替えがとにかく早いのだ。
服部幸男の傍には菊地孝平がいることが多かった。さながら名サポーターのようである。
ただ、1Rのときにピット内のアリーナといえるベンチ席に菊地と平高奈菜が少し間隔を開けて座っていると、服部は一瞬どこに座るかを迷ったような顔をして、菊地の横ではなく平高の横を選んで腰かけた。意外なチョイスだ。
そして、平高の履いているシューズを見ると、「おっ、それはいま話題のヤツ?」などとも質問していたが、平高の履いていたシューズは、服部が言うところの「話題のヤツ」ではなかったようだ。その後は菊地を交えて、ぼそぼそとシューズ談義を続けていた。
そのなかで菊地は「平高ちゃんがまだハイハイしていた頃に流行ったのがあったんだよね」などとも言ってた。
そんな会話も含めて、やっぱりいつもどおりだ。
丸岡正典は、スタート特訓後、見た目にわかりやすく、頬をふくらませていたが、それにしても、とくべつ困ったモードの表情ではなかったようだ。その後、桐生と一緒に特訓のスリット写真を見ながら笑い合っていた。
その写真を確認してみると、一本目は、2人仲良くかなり遅れていて、二本目は2人ともほぼ修正できていた(丸岡はフライングだったが……)。
太田和美も、まさしくいつもどおり。装着場でハンドル調整などをやっていた。
そして1Rはやはりアリーナ席でレース観戦。そこに石野がやってきて、何やら相談を受けると「涼ちゃんも湯川もいるから大丈夫!」などと答えていた。片付けか何かに関する相談だったのだろう。
ふだんは無表情なことが多い太田だが、「上司にしたいボートレーサー」アンケートを取ったら上位に来るのではないだろうか。
今日の優勝戦。とにかく歴戦のツワモノたちが揃った。
桐生にしても、そこに加わってもまったく違和感がない存在になっている。だからこそ、選手たちはみんな、いつものルーティーンといった感じで、自分に必要なことを淡々と進めている印象だった。
ここまで名前を挙げなかった池田浩二もそうだ。
濱野谷憲吾といる時間が多かったが、ボートを見たり、ペラ調整をしたりと、作業を進めていた。
ただし! 1R後のスタート特訓には、優出メンバーでひとりだけ参加していなかった。
それだけはかなり意味深な気がする。
優出選手インタビューでもほのめかしていたが……、やはりコースを動く気なのか!?
そんなことを考えてしまう。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/内池)