2対2の明暗
連日、ほぼ同じラインアップで申し訳ないが、今日の私の注目ポイントも①地元4人衆の行方、②7R深川VS智也の直接対決、この2点だった。
まずは地元勢。3日目にして4人の明暗が真っ二つに分かれた、と言い切っていいだろう。暗いほうのひとり目は……前本泰和。3Rでやってしまった。前掛かりの気持ちが、そのままスリットに投影された。コンマ02、フライング。
布石があったとすれば、昨日の4・6着だろう。わずか5ポイントの加算で、初日1着の貯金を軽く使い果たしてしまった。今日の3Rで4着以下なら、明日を待たずに黄信号が点る。それは絶対に避けたい。その強い思いが、スリットラインをも突き抜けたのだろう。単なるスタート勘の狂いではなく、このシリーズへの思いが強いからこその勇み足だった。そう思う。
もうひとりは、大将格の市川哲也。前半の2Rでは、予選突破へ少なからぬ光明が射した。インからコンマ08の踏み込みで快勝。この時点で3走17点まで成績を伸ばし、続く6Rで4着以内なら明日へ希望がつながるという状況になった。
その6R、4カドの市川は横一線のスリットから握って攻めようとした。その瞬間、内の馬場貴也も握った。このまま握り合えば、厳島神社まで吹っ飛ばされる。そう判断したであろう市川は、咄嗟に差しに構えた。好判断だ。が、5本の引き波が重なり合うようなスポットで、激しいキャビテーションが起きた。それが引き波のせいだったのか、ハンドル操作ミスだったのかはわからない。わからないが、私の目には気持ちだけが引き波を超え、市川の身体とボートが置き去りにされたように見えた。今節の市川は、こうした気持ちとボートが噛み合わないようなレースが多かった。それが、そのままこのシリーズへの思いの強さだった気がしてならない。ひたすら待ち続けた13年……単純に「リズムが悪かった」とか「チグハグだった」とか、そんな表現では片付けたくない市川の3日間だった。
とは言え、明日の1走を勝てば予選勝率5・60。「限りなく赤に近い黄信号」が点っただけで、ミラクル予選突破の可能性は残されている。明日の5R(6号艇だ)も市川は1着10点を奪いに行くだろう。比喩ではなく、死ぬ気で。
気分を一新して、明の2人に移ろう。まずは、山口剛。ツヨポンも今日の1走で6着大敗なんてことになったら黄信号が点ったのだが、ガッチリと2着8点を加算した。勝率7・00で9位にランクアップだ。明日の10R(4号艇)は「1着なら準優1号艇もありえるし、6着なら予選落ちの可能性大」という、まさに天下分け目の決戦となる。今節のツヨポンは私が予想したより冷静沈着に走っており、同じような心持ちで走れば自ずと結果はついてくるだろう。ただ……そこがそれツヨポンだからなぁ……いや、過去のSGであったあれやこれやを思い出すのはやめておこう。過去は過去、明日は明日。ツヨポンよ、あれこれ考えすぎず、いつもどおりやんちゃに走りなさい!!
もちろん、残るひとりは今節の出世頭、辻栄蔵だ。昨日まで9・33と奮闘してきた辻は、今日の2走で4・2着とやや成績を落とした。それでも、8・00暫定3位はあっぱれな3日間だった。もちろん、明日の1走(3R6号艇)は無事故完走で当確。辻の視線は予選のてっぺんだけを見つめて走ることだろう。パワー的にも、深川真二あたりを除けば十分にトップレベルだし。13年前に西島義則が落とした“忘れ物”を取り戻すためにも「お腹いっぱい」なんて心理状態になったりはしないのである。いつもは淡白な栄蔵だが、待機行動から要注意だぞ!
ゲーム感覚??
で、その辻に睨みつけられている?のが深川真二、山崎智也の71期コンビだ。今日の7Rの同期対決は期待を裏切らない好レースだった。まずは進入。やはり、6号艇の深川は動いた。予選トップ争いに少なからぬ影響を与えそうな直接対決なのである。しかも、昨日の2走でスロー起こしへの自信も深めたはずだ。
対して3号艇の智也には、この前付けを拒否する権利も受け入れる権利も有していた。ほんど迷うことなく、智也は深川にコースを譲った。もちろん、同期愛とかそんなことではない。伸びーーる深川にまくらせて連動する、などの戦略的なコース譲渡だ。
スタートは、インの石川真二がコンマ05で深川がコンマ13。スリットから深川がぐいぐい伸びたが、さすがに石川の舳先には届かない。臨機応変、まくり差しを選択した。で、差しハンドルを入れた瞬間、外の智也が握った。この決断の早さは「(深川)真二が握ったら差す、差したら握る」とハナから決めていたに違いない。深川のまくりだけを想定していたら、あれほど早くは反応できなかったはずだ。レース戦略というより、今日の直接対決をゲーム感覚で楽しんでいたのかもしれない。
深川にとっては惜しい1マークだったな。まくり差しが決まるかと見えた瞬間、2コース平石和男の艇が流れてわずかに接触したのだ。あれがなければ、一撃で突き抜けていただろう。その後も、同期ふたりは抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げた。深川の足はもちろんのこと、智也のパワーも半端なかった。実に見ごたえのある攻防だったが、なんとなく、喧嘩半分でじゃれ合う小熊の兄弟みたいに見えないこともなかったな(笑)。で、両者の着順だけでいうなら、智也に軍配が上がった。智也2着、深川3着。
この結果も踏まえて、予選の暫定順位は1位・深川9・50、2位・智也9・00。最終的にどうなるかはまったく予断を許さないが、おそらくこの2人のどちらかが予選トップの座を勝ち取ると思う。(photos/シギー中尾、text/畠山)