感無量
12R優勝戦
①守田俊介(滋賀)06
②松井 繁(大阪)13
③山田雄太(静岡)12
④太田和美(大阪)12
⑤原田篤志(山口)21
⑥石野貴之(大阪)30
俊介が勝った。
さて、何を書こう。いろいろ書いたらキリがない。つか、早く酒が呑みたい。昨晩から予定稿であれこれ書いとこうかと思ったのだが、それをやったら負けのフラグが立ちそうな気がしてやめた。うん、まずは今日のことだな。レースについては、見てのとおりの圧勝。コンマ06の全速で完璧なスーパーローリングカメハメハシースーインモンキーターンが炸裂してしまっては、今節の俊介は負けようがなかった。レースについては、以上。
あ、本番の待機行動中に、後ろにいた若造が「なんかヤバイ風だなぁ、守田俊介、フライング切っちゃうんじゃねーか、返還になったらどえらぁことになってまうでぇ」とか縁起でもないことを言った。ジャケットに100円ライターを押し付けようかと思ったが、やめた。実は今日、私も何度も同じことを考えたから。
俊介がブッチギリのトップSでスリットを通過したとき、私はかすかに聴こえる実況に耳をすませた。実況アナさんの「ギャーーッ」なんて叫び声が耳に届いたら、その場で浜名湖の水面に飛び込んだかもしれない。が、大歓声の中でかすかにだが「守田だけがコンマゼロ台の……」という弾んだ声が聴こえて、私の心も弾んだ。そして、1マーク……
あ、結局レースのことを書いている。そんなヒマはないのです。
レース後だ。ウイニングランを待つ間、これまた後ろにいた別の若者が携帯で誰かと話しはじめた。
「え、なんでレース観てないの? なんやそれ、自分が観たら負ける気がするから? テレビ消したって……うん、うん、ちゃんと勝ったよ、しっかり逃げたから……え、ああ、すごい、いっぱいいる、人気あるんだよ…(略)…これでまた、SGを獲れそうで獲れないでいた選手がまたひとり抜けたね……うん、うん、おめでとう、よかったね」
嗚呼、素晴らしい。私はその若者を、いや、携帯の向こうにいる超コアな俊介ファン(女性?)を思いきり抱きしめたかった。よし、この会話は絶対に書こうと思った。その会話につられてスタンド全体を見回すと、まあ、いることいること。老若男女がぎっしりスタンドを埋め尽くし、なかなか現れない俊介を待ち続けていた。そう、人気あるんだよ、俊介は。
で、ポケットに突っ込んでいたガラケーに目をやると、13通のメールが届いていた。東京から兵庫から福岡から、嬉しい祝辞が……チビッとだけウルッときた。
確か、19年前だ。黒須田が手掛けた『競艇ツケマイ読本』に参加した私(実は参加して
いない。住之江で蛭子さんの密着取材をした私は、原稿を落として姿をくらました。代わりに黒須田が書いた)は、そのときはじめて競艇の存在をしっかり認識した。それから数ヵ月後、ふらり平和島に行った。
コレの、どのへんが面白いんだろなぁ。第1コーナーでほとんど着順が決まっちゃうやん。
とか思いつつ。ぼんやり舟券を買ってぼんやりレースを観ていたら、なんだかシャーーーッッと凄いターンをする選手がいた。そのダイナミックさとかターンのフォームなんかが、他の選手とまったく違っていた。50mくらいぶっちぎって勝った。
わわわ、なんだかこの人、凄いな。
出走表を見ると、確か「21歳」とか書いてあった。若い。この若さで、こんなに凄いターンをするのか、なんだなんだ、この子は、天才か、天才なのか?? とか思うと次の日も行きたくなり、そこでまた凄いターンを見たら次の日もまた行きたくなり、その次の日も……で結局、5日間通ってその選手が優勝して私は7万円くらい儲けた。
競艇、おもしれえ。
そのまま私はどっぷりと競艇に染まり、そのキッカケである若い選手に惚れ込んだ。刷り込みってヤツだ。さらに数ヵ月後、私は新宿路上で寝るホームレスになったりもするのだが、その若い選手のことが気になって仕方がない。気づけば、限りなくストーカーに近い追っかけになっていた。17年前の常滑の周年には黒須田から交通費+αを借りて現地に飛び、5コースまくりで優勝したと思ったらフライング。15年前の新鋭王座の優勝戦は完璧に逃げきったと思ったらフライング。その夜、大阪梅田の酒場に入り虚しい返還金で呑んでたら、隣にいたふたりのギャンブラーが「今日、びわこの新鋭で凄いことがあったらしいで。集団フライングで17億円の返還やて」「そらぁえらいこっちゃ、若いヤツはすぐ切りよるから」みたいなことを話していた。苦い酒だった。
美味しい酒もいっぱい呑んだな。12年前の近畿地区選でGI初優勝し舟券も大儲け。それから福岡の新鋭リーグで優勝して大儲け。津の準優に行って……これまたキリがないな。とにかく、優勝戦に乗ったと知るやカネがある限り(ほとんど借金だったかも)どこにでも飛んだ。
いや、違う。こんな自慢半分の私小説じみたことを書くはずじゃなかった。もっと俊介のあれやこれやを……でも、俊介本人は、「あの子は凄い」みたいなことを書かれるのは苦手なタイプだと思う。謙遜でも何でもなく、本気で嫌がる気がするな。だから、今日のところはこれまでにしておこう。え、脈略もオチもなさすぎる? 何も書いてないに等しい? ただ酒が呑みたいだけ。うーーん、その通りです、もう我慢ができないので呑みに行きます。つづきはまた、俊介が次のSG(賞金王??)を獲ったときにでも!(強制終了)
とにもかくにも、おめでとう、俊介!! そして、ありがとう。俺の15年来のメールアドレス『syunsukesg@×××』がやっと身の丈に合うアドレスになったどーー!!(photos/シギー中尾、text/畠山)