憤然。
毒島誠のレース後の表情を一言で言うと、そうなる。ついに始まった戦い。とびきりの気合で臨みながら、結果は6着。レース前とレース後の感情の落差はとてつもなく大きかったはずだ。2マークでキャビった太田和美を避けるという不利もあったが、おそらくそれは関係ない。望んだ結果を出せなかったことがただただ悔しい。毒島にあったのはそれだけだろう。
落胆。
石野貴之のレース後の表情を一言で言うと、そうなる。いや、ガックリと落ち込んでいるというわけではないと思う。ただ、強い思いで臨みながらも結果を出せなかった自分にガッカリしているという感じか。エンジン吊りを終えてもヘルメットを脱がず、うつむきながら、誰からも話しかけられるのを拒絶されているかのように控室に向かう姿は、毒島の様子に近かった。その後、着替えを終えてリプレイを見ている際の石野は、ひたすらに苦笑いを浮かべていた。そこに落胆を見たわけである。遅れてあらわれた菊地孝平が、「落としたらわからんよ、って言ったじゃん!」と声をかけた。朝見かけた、石野が菊地に話しかける瞬間。そこで交わされた会話の復習だろうか。石野はさらに苦笑を深くし、やっちまった感を菊地に向けた。アドバイスを活かせずすみません、という顔にも見えた。やはり、気持ちの落差は大きかったのだ。
どデカい苦笑。
桐生順平のレース後の表情を一言で言うと、そうなる。毒島との表情の差は、6着と3着という結果ではない。バックは先頭で出てきたのに、2マークで大きく大きく流れてしまった。あわや消波装置に激突か、という航跡。装着場で観戦していた他の選手たちが身を乗り出して心配そうに桐生を目で追いかける、というシーンがあったほどだった。大過なくレースには復帰し、3着まで追い上げたのは機技ともにすごいというしかないが、桐生にしてみれば惜しい星を落としたのであり、「あぁ、悔しいなぁ……」と呟くのも当然というものだ。仲間たちにあの場面をもろもろツッコまれたのも、苦笑を生んだ要因だと思われる。
堂々。
篠崎元志のレース後の表情を一言で言うと、そうなる。これはもう、手応え十分の逃げ切りなのだから、こうなって当然。長い2日間を送り、ということはレースをしたくてウズウズしながら今日を迎え、足的にも充分に好感触で、そして逃げ切ってみせた。最高の気分だろう。
「2位で来て、1号艇のメリットを活かせたと思います」
そんな思いも、篠崎に胸を張らせることになったか。「1走して気持ちがさらにグッと上がった」というから、明日はさらに堂々たる篠崎元志を見せることになるかもしれない。
まあ、敗れたものは悔しがり、勝った者は誇らしげになる、というのは自然なことだ。短期決戦だからなおさら。気づけば巻き返しが利かなくなっている、なんて事態は、予選5~6走制よりもあっさりと訪れる。だから、山崎智也は安堵の表情を見せていたし、池田浩二は顔をしかめていたし、峰竜太は太田和美にからかわれたのかニコニコと笑っていたし、まあそういうことだろう。12人がほぼ結果通りの表情をしていたのは確かなことで、これは明日の第2戦後にはさらに鮮明なものとなっていくはずである。
さて、枠番抽選。まずはB組(12R)から。いちばん最初に引いたのは山崎智也で、いきなり白が出たものだから、会見場は大きくどよめいている。時折見かけるシーンだ。続く峰竜太が赤、桐生順平が黒と内枠を順番に引いていって、石野貴之は思わず「なんだつまらん」と呟いていた。あぁ、そんなことを考えてしまったからか、次に引いた石野は緑! またまた深い苦笑いを見せながら、天を仰ぐ石野であった。それにしても、明日の12R組の2~5枠が強烈だなあ。桐生、峰、毒島、茅原。ニュージェネが中枠にズラリだ。智也はどう受け止めるのか。石野はどう間隙を突くか。そして新世代ターンを駆使する4人はどんなせめぎ合いを見せるのか。これは楽しみな一戦だ。
続くA組(11R)はB組とはまるで違う様相を呈した。最初に引いた篠崎元志が黄色、次の笠原亮が黒、中島孝平が緑と、5~6枠が先に埋まっている。4番目の守田俊介が赤を引いて、残された二人は「おっ、残った!」と白がまだ出ていない状況に色めきたった。
次は太田和美だ! 気が急いたのか、太田は並べられた椅子につまずきながらガラポンの前へ。それを見た池田浩二は、「和美さん、今のでもう終わってる」とはやし立てた。さあ、太田は何を引くか…………青! 終わってた(笑)。悔しがる太田を見やりながら、笑う池田。で、もっと笑ってたのがこの様子を眺めていた峰竜太で(ただし太田の自己申告・笑)、太田は「峰、お前、何笑ってんだ!」とツッコミを入れている。峰は当然「笑ってないっすよ~」と返すのだが、峰くん、ニッコニコですよ。シリーズ記事で書いたように、松井繁は表情ひとつ変えずに抽選の模様を見つめていたが、このときだけはさすがに爆笑してました(笑)。
で、最後の池田浩二はもちろん白。深々とお辞儀をして、「ありがとうございました!」だって(笑)。最後はお笑い満載の枠番抽選なのであった。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)