BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――朝のひとたち

 

 

 

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 朝イチ(1R展示前)のピットはやはり静かだが、整備室ではひとり、毒島誠が本体を割っていた。奥のほうに寺田千恵がいたが、寺田はおそらくギアケース調整をしていたのだと思う。

 毒島は、「最後の最後のパワーが止まる」と感じていたことから上積みを求めての整備だったようだ。

 毒島がのんびりしているところはあまり見かけたことがない。少しの時間もムダにしないようにと作業している姿を見ていると、この2、3年で、ものすごく高いレベルの安定感を身につけてきた理由もわかる気がする。

 

 

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 装着場のいちばん隅では、三嶌誠司がボートに着けたままのモーターをチェックしていた。JLC解説者の青山登さんに声をかけられたとき、「簡単(な作業)です。すぐ終わります」と答えていたが、昔から三嶌は、隅のほうで作業をすることが多かった気がする。奥ゆかしいというか、集中しやすいということかもしれない。

 この後に三嶌は、傍にいた遠藤エミに話しかけ、「女子がマスクをしていると、みんな、ざわちんに見える。年かな」と笑っていたが、そんな一面もまた素敵である。

 

 

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 1Rが近づくにつれ、ピット内には選手の姿が増えていったが、1R後のエンジン吊りでは、ちょっと興味深い光景も見られた。

 まず松田祐季が数段重ねにして重ねていたゼッケンナンバーとアカクミ(水抜きのスポンジ)を石野貴之ら何人かに配る。

 そして、このレースで勝ったのは福井支部の萩原秀人だったが、松田は萩原のほうには行かないのだ。

 萩原のもとには中野次郎ら東京支部勢が集まり、松田や中島孝平ら福井支部勢は、石田政吾、守田俊介らのほうへと散っていった。そこに松井繁ら大阪支部勢も加わる。

「あっ、このレースは近畿勢が多いんだ」と気付いたが、1号艇に乗っていた遠藤もまた近畿だ。その遠藤のもとには川野芽唯、滝川真由子の女子勢が寄っていく。

 選手たちはほとんど言葉を交わし合うこともなく、ほぼアイコンタクトだけでこうした役割分担をしていくのだ。決して珍しくはない光景といえるが、なにかいいものを見たような気になった。

 そういえば展示前だったかに、萩原は「ブス、おっはー」と妙なタイミングでの挨拶をしていたところを見かけたが、この人もまた、独特の空気感を持っている。

 

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 その後、遠藤らのもとにはゆっくりと寺田が寄っていき、レースの「感想戦」を始めた。

 寺っち塾開講である。

 遠藤だけでなく、川野も滝川もしっかりと寺田の話を聞いている。女子選手にとっては本当に頼もしい存在といえる。おそらく花粉症対策なのだろうメガネをかけていたこともあり、寺田が「ザ・女教師」のように見えたものだった。

 

 (PHOTO/中尾茂幸&池上一摩 TEXT/内池)