BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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平和島クラシック 優勝戦私的回顧

絶対エース!

 

12R優勝戦 並び順

①坪井康晴(静岡)16

④深川真二(佐賀)19

②田村隆信(徳島)18

③中野次郎(東京)15

⑤松井 繁(大阪)15

⑥守田俊介(滋賀)15

 

 坪井、3度目のSG戴冠、おめでとう!

 スリット以降は文句なしの圧勝パターンだったが、それまでは実にスリリングな展開になった。まずはピットアウト。このレースのキーマンと見ていた深川が、ズルリ立ち遅れた。スタート展示でも半艇身ほど遅れたから、何かしらの問題があったのだろう。で、スタ展でそれを見抜いていた松井が、本番では容赦なく締めた。私にはそう見えた。左右の艇に挟まれる形で、深川は蚊帳の外に押し出された。選手が選手だけに、一大事。

「アウトだけにはならん!」

 

 

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 血相を変えてぶん回した。ぐるーり大回りで内水域に陣取る。坪井もエンジンを噴かせて艇番を主張する。しかも、どこで浴びたものか、坪井は必死でボートの中の水を掻き出している。いろんな意味で、非常事態だ。

 2艇がぐんぐん深くなるのを尻目に、田村と中野がゆっくり艇を流して3、4コースのスロー。スタート次第で一撃もありえるセンター2艇になった。

 松井と守田は艇を翻してのダッシュアタック。これまた、5カド松井のスタート次第では一発がありえる。2対2対2。進入隊形だけで言うなら、すべての選手にほぼ均等に勝機がありそうな並びに見えた。

 

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 もちろん、大いに肝を冷やしたのは、坪井のアタマ舟券をしこたま買っているファンだろう。想定(練習)より20m近く深くなるわ、水をもらうわ、「これでまともなスタートが行けるのか?」、厚く張っている人ほど心臓がちんまり縮まったに違いない。

 だがしかし! 今日の坪井28号機はモノが違った。初日から昨日までずっと節イチだったけれど、今日の28号機はさらに進化していた。何度かの足合わせで相手を寄せ付けず、展示タイムはシリーズ最高の6.60。どこをどう整備したのか、エース機がメガ進化したのである。

 

 

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 スリットほぼ横一線からの坪井28号は、ただただ驚くしかない。90m起こしでもっとも助走距離が短かったのに、1艇だけが異次元の行き足で突き抜けていった。1マークの手前までで、完全に1艇身のアドバンテージ。他艇はスリットままの横一線。1マークを先取りした瞬間、3艇身ほどぶっちぎっていた。あとはもう、安全運転に徹するのみ。

「やっぱ、エース28号機は凄かった」

「優勝はエース機のおかげ」

 そう思われた方もいるだろうが、私の思いは違う。確かに28号機は常に安定して上位級のパワーを発揮してきた。節イチレベルだったことも多い。それでも、今日のスリット~1マークまでのような「うわっ、なんだこりゃ??」的なビックリ仰天するようなパンチ力は感じたことがなかった。今節にしても、昨日までは「うーん、やっぱ全部の足がいいなぁ。しかも、日々ちょっとずつ強くなってるなぁ」と惚れ惚れしつつ、『モンスターエンジン』の域ではない、と思い続けてきたのだ。優勝戦が終わった今、私はこう宣言しなければならない。

「今日の28号機は、モンスターだった」

 

 

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 つまり、エース28号機を日々コツコツと坪井が育て、調教し、もっとも重要なレースで無敵の怪物に仕上げきった。私はそう思う。もう一度、スリットからの光景を思い起こしてほしい。で、仮にあのスリットが横一線ではなく、中外の何艇かが凹んでいたとしよう。普通なら深インの選手には大ピンチの展開だが、スリットから1艇身突き抜ける坪井28号にとって、その凹凸すら関係なかったはずだ。誰がどう仕掛けても、坪井の先マイを防ぐことができなかった。坪井は、負けようがなかった。そう考えれば、やはりモンスターの称号が相応しい。今日の坪井28号は、コンマ30みたいなドカ遅れがない限り、レース前から優勝が約束されていた。と言ったら、言い過ぎだろうか。

 

 

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 最後に余談。今日のレースを踏まえて、個人的な楽しみがひとつできたな。モンスターになった28号機が、次節以降どんなパフォーマンスを魅せてくれるのか。私は去年からBB誌でモーターについてあれこれ書いているのだが、いくつかの場で急に機力がアップしたモーターの素性を調べると、そこに坪井康晴の名前が現れることが多い。

「あれ、坪井が乗ったあたりから良くなってるじゃん」

 そう思ったことが2度や3度じゃないのだ。かねてから独創的な整備巧者、ペラ巧者として知られる坪井が、凡機を上位機に、上位機を超抜機に進化させている。だとするなら、元からエースだった28号機の今後は……? ここは私のホームプールだけに、眼前でのレースっぷりが楽しみでならない。ムフフン、次節からできる限り通っちゃうぞ~!!(photos/シギー中尾、text/畠山)