BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

平和島クラシック準優ダイジェスト

圧倒的優位

 

12R

①坪井康晴(静岡)18

②松井 繁(大阪)21

③石野貴之(大阪)16

④峰 竜太(佐賀)18

⑤角谷健吾(東京)16

⑥吉川元浩(兵庫)13

 

f:id:boatrace-g-report:20171221111510j:plain

 

 

 今日は12Rから書かせてもらう。明日のファイナル1号艇が誰であるか、明確にしたほうが話を進めやすいから。坪井康晴、28号機。準優3個レースの中で、図抜けて安定した勝ちっぷりだった。スリットはコンマ18と、さほど早かったわけではない。が、勝利者インタビューでのセリフが、憎らしいほどふるっている。

「外を見たら抜けてる選手がいなかったので、様子を見ながら行きました」

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221111527j:plain

 

 SG準優の1号艇だというのに、この余裕。もちろんSG2Vの経験もあるのだろうが、エース28号機の出足~行き足に対する絶大なる信頼感があればこそ、だ。裏読みするなら「行く気になれば、コンマゼロ台でも狙って行ける」と意訳してもいいだろう。

 そして、現実のレースがその信頼感を過不足なく裏付けしている。スリットから、坪井だけが伸びる伸びる。様子を見たはずなのに、その伸び返しは全速握りっぱのようなド迫力だった。1マークでは松井よりほぼ1艇身、石野より半艇身ほど抜け出し、ターンの出口で勝利=ファイナル1号艇は約束された。元より28号機は「全部の足が強いバランス型」と見ていたのだが、ペラ巧者の坪井がその全部の足をさらに強化させた印象がある。たとえば、今垣光太郎の行き足を節イチ級と定義すると、坪井もそれと同等のパワーがある。その上で、出足、伸び、回り足も同じようにハイレベル、という感じ。部分的な足でもトータルパワーでもトップなのだから、他の選手にとってはかなり高いハードルと言えるだろう。破壊力抜群のモンスターというより、5教科がすべて90点以上で東大合格率Aランクみたいな足だな(笑)。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221111629j:plain

 

 こうなると、敵はレーサではなく自分自身か。ただ、メンタル面でも死角は少ないと思う。過去のSG2Vは「地元の1号艇」というプレッシャーMAXの境遇で、むしろ今回の方が客観的に自分を見つめられるのではないか。

「そのSG2Vの後、2009年のグランプリファイナルの1号艇で6着に大敗している。何かしらの後遺症はないか」

 そんな疑問にも、坪井本人に代わって「ない」と言い切ってしまおう。あの6着はスタート遅れとは無縁(コンマ12)だったし、2コース瓜生の同体ツケマイを浴びた大敗だった。坪井は油断した己が悔しくて悔しくて、「いつか必ずグランプリの1号艇でリベンジ逃げする」を最大の目標に据えている(後日の取材、談)。今回の舞台はクラシックだが、万にひとつの油断も考えにくい。うむ、こうして書けば書くほど、坪井28号機=大鉄板と思わずにはいられないぞ。「今節は万シューしか買わない」と堅く心に決めている私は、どーすればいいかしらん?

 

f:id:boatrace-g-report:20171221111646j:plain

 

 

 2着の松井は、さすがの貫禄だった。同県・石野のまくり差しにもまったく動じることなく、唯我独尊の小回り差し。2マークでは猛然と襲い掛かる峰らスピード自慢の後輩たちを、全速の握りマイで叩き潰してしまった。まさに臨機応変、百戦錬磨。中堅下位レベルだった64号機に活を入れ、ここまで上り詰めたのも流石の一語だな。

 だがしかし、坪井とのパワー比較だけで言うなら、見てのとおりの大差だった。1マークを回って瞬時に1、2艇身ほど突き放されたレース足の格差は、松井自身がもっとも切実に感じたことだろう。もちろん、ボートレースはパワーだけで決まる競技ではない。明日も松井の勝機はゼロではないが、仮に枠なり3対3でスリットほぼ同体になった場合は限りなくゼロに近づくと思う。それを認識しているであろう王者が、勝つために何をするか。この戦略面には注意を払う必要があるだろう。

 

ぶっ差し!

 

10R

①深川真二(佐賀)12

②田村隆信(徳島)16

③山口 剛(広島)18

④三嶌誠司(香川)12

⑤原田幸哉(愛知)08

⑥今村 豊(山口)07

 

f:id:boatrace-g-report:20171221111729j:plain

 

 

 2コース田村の差しが、ものの見事に突き刺さった。サプライズというほどではないが、よくぞきれいに刺さったものだ。で、この鮮やかな差しきりには、いくつかの要因が考えられる。羅列してみよう。

★まくり艇を意識した深川が1マークを外しすぎた。

★田村の回り足が、私が想定したよりも強力だった。

★深川の27号機は元より伸び型で、出足型にシフトしてきたが完成の域には達していなかった。

★レース本番はソコソコ強い追い風が吹いていて、2コース差しに最適の気象状況だった。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221111750j:plain

 

 大きくは、この4点だろうか。このどれか、または複数が重複して、切れ味抜群の差し抜けになったと思う。では、このレースの1号艇が坪井ならどうだったか……もちろん即断はできないな。これは、明日までのそれなりに大きな宿題として、じっくり考えるべき課題だろう。明日も2号艇なのだから。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221111806j:plain

 

 そして、明日のファイナルの起爆剤になりそうなのが2着・深川だ。4号艇の明日は4カドも、前付けも考えられる(外枠2艇の動きも影響しそう)。足も伸び型→出足型の途上だとするなら、さらなる出足型に特化する(前付け)ことも、伸び型に戻す(4カド)こともできる。坪井を脅かすには、どちらがより効果的か。今晩の深川はその戦法・戦略を練るに違いない。明日、私はそれをいち早く見抜いて舟券戦略に結びつけるつもりだ。深川=スリットまでのレースを作るキーマンだと思うから(←もちろん、穴展開希望)。

 

W惨事、W恵まれ

 

11R

①今垣光太郎(福井)+01

②毒島 誠(群馬) 05

③中野次郎(東京) 06

④守田俊介(滋賀) 07

⑤桐生順平(埼玉) 04

⑥笠原 亮(静岡) 04

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221112413j:plain

 

 光ちゃんがやってしまった。痛恨のコンマ01、フライング。何度か書いてきたが、気持ち=「平常心」で走るタイプだけに、こうした事態が起こりやすいレーサーなのだなぁ(と書きつつ、過去のSG賞典レースでのFや失格は10年ぶり。インを奪われたり、不良航法による賞典除外などのインパクトが強すぎるのかも?)。パワー的にも、レーサーの気質的にも、是非ともファイナルに残ってほしいひとりだったのだが……残念無念。とにかく、切ってしまったという事実とその後の罰則は取り返しがつかないので、しっかり気持ちを切り替えて前に進んでもらいたい。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221112449j:plain

 

 このレースの波乱は、2周2マークにも待ち構えていた。安泰の2番手と見ていた笠原に、毒島が最内から突っ込み。運悪く笠原の艇が先頭艇の引き波に乗って?バウンドした瞬間に接触したため、あっという間に反転してしまった。この見た目の派手さも手伝って、毒島の妨害失格は致し方ないだろう。これは私の勝手な推測だが、2周ホームで最後方だった毒島が、2周1マークの鋭角ターン一発で3番手に浮上。しかも内からグイグイ伸びて笠原に接近したため、俄然ハッスルしてしまったのではないか。それほど、凄まじい半周の追い上げだった。毒島への批難や同情の声は様々なれど、あの鬼の如き追い上げ足は、万人が狙うべきパワーだと思ったのだが、どうだろうか。

 

 さてさて、勝った中野次郎の足は正直わからない。初日から伸びを中心に「わるない」という程度の印象はあるが、優勝戦に入ってどうだろう。現時点でわからないものをあれこれ書いても詮無いので、明日の宿題にしておこう。この次郎と田村の足を、できるだけしっかり把握したい。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221112512j:plain

 

 そしてそして、「F恵まれ×大競り恵まれ」のW恵まれというありえない僥倖で優出の権利をゲットしたのが俊介だ。うん、それだけで怖いっしょ。エンジンは前エース55号機、枠はいちばん動きやすい6号艇、そしてこのクリアーガリ的な優出劇……今垣や三嶌らが脱落したため、パワー的にも坪井の次(ほとんど団子だが)だし。優勝戦に乗った時点で、「舟券に絡む可能性は十二分にあるし、展開がもつれれば一撃のVまでありえるパワー」とお伝えしておく。いや、贔屓目抜きで、マジでそう思いますっ!!(photos/シギー中尾、text/畠山)