BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――リラックスムード

 

 

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 この世代の達人たちはさすがと言うのか、準優組はリラックスした雰囲気で朝を過ごしている。こうした日の過ごし方、あるいは戦い方を熟知しているだけに、ジタバタもしないし、ピリピリもしすぎない。かといって、もちろん緩みすぎもない。モーターにしろメンタルにしろ、仕上げ方を長年の経験が身に着けさせているのだろう。

 1R、3着であがってきた大賀広幸が顔をしかめて新良一規に言葉をかける。それを聞いて、カハハハと野太い声で笑う新良。準優の大一番を控えた選手という雰囲気よりも、後輩を見守る優しい先輩という雰囲気のほうが強い。その横でニコニコと笑っている今村豊も同様。今朝のびわこの天気のように、穏やかな空気である。

 

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 地上波放送のMCを務める武田修宏さんがピット取材で烏野賢太に声をかけていた。宇野の顔が途端に柔らかくなる。烏野と武田さんは同い年。同世代のアスリート同士の気安さもあるだろうか。そこに濱村芳宏も合流。サッカーの話なども織り交ぜながら、プロの戦いを知る者同士の交流をはかっていたようだ。濱村も表情は穏やか。同県同期の二人が武田さんを前に、相好を崩していたわけだ。12Rで相まみえる者同士とは思えない和やかさがそこにある。二人ともマスターズでは“新人”だが、数々の修羅場をくぐり抜けてきたSG覇者たちだからこそ、準優の朝に見せられる表情がある。

 

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 では、リラックスムードだからといって、みなのんびりしているかといえば、そうではない。調整などの動きについては昨日よりもずっと目立っていると言っていい。2R発売中には、今村豊がプロペラを叩く姿があった。締切5分前ほどにいったん切り上げて、モーターに装着。すでに2R発売中の試運転タイムは終わっているが、3R発売中には下ろす準備を進めていた。ちなみに今村が叩いていた場所は整備室脇の調整所で、今日もそこに小畑実成の姿があった。

 

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 田頭実の姿も頻繁に見かけた。田頭もプロペラ調整をしていて(こちらは調整室のほう)、その合間にも装着場を歩いている姿があったのだ。関係者などに挨拶を振られると、柔らかな笑顔がさっと浮かぶ。やはりリラックスしている雰囲気だが、調整の方向性を頭に思い描いているのか、さっと顔つきは真剣なものに戻り、思索しているような表情にもなっている。

 

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 そうしたなかで、少し異質な雰囲気に見えたのは、西島義則である。1R、山室展弘が転覆し、岡山勢をはじめとする中国地区の選手がボートリフト前に集まっている。転覆艇があったときには、同地区の選手がボート引き上げや転覆整備のヘルプをするのがならわしのようになっていて、西島もその輪に加わっていたわけだ。いや、輪に加わっていた、は正確ではないかもしれない。参加はしたのだが、少し離れたところで、ひとり神妙な顔で立っていたのだ。少しピリピリした雰囲気もあって、すでに戦士の表情になっているようにも見えた。準優1号艇だから、というのはおそらく当てはまらない。そんなことは山ほど経験してきているのだ。西島義則はいま、ひとつの覚悟を抱いて走っている。それはきっと、来月のオールスターでも、あるいは一般戦のピットでも、見せてくれるもののはずだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)