９Ｒ、今村豊が最後の最後で逆転２着浮上、これで早々に予選トップが確定した。というわけで、報道陣は今村を捕まえて囲み取材。今村の大きな声も聞こえてきて、オンステージ状態となっていた。今村はもう、余裕たっぷりで、エキシビションレースを満喫し、ピットをぶらぶらし、整備室の椅子でくつろいで、終盤の時間を送っている。
ひとつだけ目についたことがあるとするならば、市川哲也と話し込んでいたことだろうか。その瞬間自体は目撃していないのだが、市川は今村にアドバイスを仰いだ様子。今村はエキシビションを楽しむために１便で帰宿することをしなかったわけだが、市川にはそれが僥倖になったわけだ。
その市川が18位！ ８Ｒで１着を獲って、得点率を５・67としていたのだが、12Ｒの結果を受けて、滑り込みで準優進出を決めたかたちだ。それを知ってか知らずか、あるいは知っていても他の選手の陥落を気遣ったのか、淡々とした表情の市川。今村のアドバイスを準優で活かすことができるかもしれないのだから、これまた僥倖だ。準優12Ｒの１号艇は、その今村。ミスターに一矢報いることができれば、それは大きな恩返しとなる。
12Ｒ、６着で圏内から滑り落ちたのは、渡邊伸太郎だ。６号艇での勝負駆け、果敢に前付けして突破をはかったが、残念ながら報われなかった。悔しいに決まっているのだが、それを癒したのが濱村芳宏。渡邊に寄り添い、からかうように喝を入れると、渡邊の顔がみるみる緩んだ。仲間の心遣いは、きっと渡邊の癒しになったはずだ。
前付けといえば、10Ｒで山室展弘が果敢に前付けを見せた。３号艇からイン奪取！ スタート展示では枠なり３コースだったから、見事な策略でインを奪い取ったわけだ。もし逃げ切っていたら得点率５・83で、結果的に予選突破を果たせていた。ボーダーが下降してきていたのを見て、一か八かの勝負に出たのか。しかしこれは実らず、無念の大敗。それでも、艇界の傾奇者が見せた勝負駆けは、素晴らしかったと言うしかない。
山室は控室へ戻る間もヘルメットを脱ごうとしないので、どんな表情かはよく見えなかった。ただ、歩きながら会話を交わしていた山川美由紀がおかしそうにニコニコしていた。悔しさをどんな言葉で表現していたのか、ちょっと気になった。
逃げて勝負駆けクリアは、烏野賢太。昨日からの連勝で、見事に予選を突破した。１号艇だったからだろうか、レース後の高揚感は４号艇で勝った昨日のほうがあったように思えた。逃げることができた安堵感もそれほど伝わってはこず、とにかく淡々とした様子である。これが１号艇以外の勝負駆けだったなら、どうだっただろう。準優は４号艇。準優を２着条件の勝負駆けと考えるなら、明日の表情がまた気になるところだ。
さてさて、津のピットのボートリフトは、いっぺんに３艇しか乗ることができない。レース後は、まず１～３着が先に乗って陸に上がり、その間、４～６着は係留所で艇旗艇番を取ったり、緩められる箇所を緩めたりしながら、順番を待つことになる（道中で接触があったときなどは、４～６着でもその艇を先に上げることもある）。１～３着が上がり切ったら、ゆるゆるとリフトに乗り、陸の上へ。その頃には１～３着の選手はすでにカポック脱ぎ場へと向かった後となっている。いや、一人だけ、カポック脱ぎ場に向かわない選手がいる。渡邉睦広だ。
今節の渡邉は、１着こそないが、オール３連対。つまり、すべてのレースで先に陸に上がっている。しかし渡邉は、４～６着の選手が上がってくるのを待つのだ。そして、それぞれの選手に挨拶回りをする。カポック脱ぎ場でやってもよさそうなものだが、その場でするのが渡邉の流儀なのだろう。そんな律儀な男が、明日は12Ｒ２号艇。今村豊に立ち向かう。これがＧⅠ４節目、今節以外はすべて地区選という渡邉だが、そんなナイスガイ渡邉が今村を破ったりしたら、これはこれでかなり痛快だぞ。２着でも優出を果たせば、それも痛快！（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 黒須田 ＴＥＸＴ／黒須田）
３着条件の勝負駆けを２着でクリアした倉谷和信。ホッとしたような表情を見せていました。明日の戦略やいかに！
