BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――兄弟ワンツーだ!

 

 

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 SGで篠崎兄弟ワンツー!

 歴史的と騒ぐにはちょいと大袈裟だが、艇界最強ブラザーズがついにSGでの上位独占を決めた。これが優勝戦ならもちろん歴史に残るが、勝ち上がりにかかわるレースだったから価値が高いし、しかも揃って勝負駆け成功なのだから意義は深い。さらにSGでは初めての直接対決でいきなりワンツーを決めたのだから、お互いに“持っている”(直接対決自体は今日が33回目で、元志の26勝7敗)。間違いなくボートレース史にとって意味のある一戦だったし、篠崎家にとっては忘れられないレースとなったはず。というわけで、二人の帰還をワクワクして待ち構えていたのだが……。

 特に絡みはありませんでした。元志がエンジン吊りを終えて他の出走選手への挨拶に向かおうとした時、仁志が「ありがとうございました!」と頭を下げたが、元志はそれに気づかなかった。元志が他4選手への挨拶を済ませた後に、仁志が歩み寄って頭を下げ、元志は仁志の右ひじあたりを軽くぽんぽんと叩いているが、これはまあ、相手が後輩であれば普通のしぐさであり、特別なものではない。装着場での絡みはそれだけで、ということはカポック脱ぎ場で会話があるかと思って、追いかけてみたが、目が届く範囲ではやはり絡みはまったくなし。元志はさっさと着替えを終えて勝利者インタビューに向かい、仁志はヘルメットを丁寧に拭きながら桐生順平と話す、というのが最後に確認した二人の姿であった。

 

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 まあ、そういうものなんでしょうね。二人きりになればもちろん感慨深く話し合うのだろうし、宿舎や控室で仲間が話を振ることもあるだろう。先輩では、原田幸哉が「こういう兄弟を息子に持ちたい」と言ってました(笑)。それに対して元志は「明日も篠崎兄弟を応援してください」と大笑い。僕は幸哉とはちょっと違って、こういう兄弟のどちらかに生まれたかったな。もちろんルックス込みで。

 今後は、SGで二人が剣を交える機会も増えるだろう。もちろん優勝戦での兄弟対決だって、必ずや実現する(明後日いきなり、だったりして)。今日は少しやりにくさもあったようだが、これからはそんなことは言っていられない。それぞれが艇界を支えるスターなのだ。“話題性をもった”一個人として、真っ向勝負を繰り広げなければならない。そりゃあ我々は(というか僕は)、「艇界最強の兄弟喧嘩」とか書くだろうけど、それこそが篠崎兄弟のスーパーバリューなのである。

 とりあえず、明後日いきなり、を期待しながら、明日の準優を楽しむとしよう。あ、今夜から、か。二人のワンツーはとっても美味しい酒の肴である。

 

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 その篠崎兄弟ワンツーを演出することになってしまったのは、まずは峰竜太だ。コンマ17は決して悪いスタートではなかったが、他が早かった分、後手を踏むかたちとなってしまった。そして、渾身の勝負駆け、コンマ09の快ショットを放った菊地孝平。スリットでのぞいて絞めまくりに行く、というのはまさに勝負駆けらしい勝負駆けで、菊地らしいスタートも含めて、素晴らしいレースぶりだったと思うのだが、伸び返した元志に止められてしまったのが無念だった。元志は菊地に先んじてまくりを打って、峰を呑みこんだ。その展開を突いて仁志が差し、いったんは桐生順平と吉川元浩にリードを許したものの捌いて逆転、というのがワンツーができあがる大雑把な過程。我々は元志と仁志のワンツー完成に歓声を送るが、峰と菊地はとことん悔しいばかりだ。

 

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 峰は、思い切り顔を引きつらせていた。敗れた後にこんな顔をしているのは見たことがない。悔しそうに顔を歪めたり、失敗を振り返って苦笑いを浮かべたり、あるいは大泣きしたり、というのがいつもの峰竜太。視線の置き場やふるまい方が見つからないかのように、「ザッツ引きつり顔」を見せたのは、勝負駆け失敗も含めて、情けなさばかりがつのる負け方だったということだろう。一方の菊地は、ひたすら硬い表情だった。成すべきことを成したレースだったと思うのだが、しかしそれは慰めにはならない。序盤から足に手応えを感じ、しかし結果には結びつかなかった今節。そうした過程も含めて、菊地は己に不甲斐なさを感じていたか。その表情がまた憤怒の塊に見えたのだが、菊地のそういった表情もまた、これまでにほとんど見たことがないものだった。峰にとっても菊地にとっても、この11Rはかなり究極に近いほど悔しい一戦だったのだ。

 

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 やはり勝負駆けが実らなかった選手は、とことん悔しいですよね。今日が誕生日だった長田頼宗は、予選突破という最高のバースデープレゼントを手にできなかった。10Rではいったん2番手を走った長田。そのままゴールなら6・00、結果的にはそれでも予選突破はならなかったのだが、しかし望みはつながったはずだった。ところが道中で逆転されての4着。

 着替えを終え、エンジンを格納し、控室に戻ろうとした長田の視界に、平本真之の姿が入った。長田はわざわざ足を止め、平本が歩み寄るのを待つ。平本が声をかけようとするとその前に、長田は両手をグッと握りしめて「悔しいぃぃぃぃっ!」と叫んだ。笑みが浮かんではいたが、まさに魂の吐露であっただろう。平本と長田の絡みってあんまり見たことないけど、長田としては誰かに吐き出したかったのかも。僕はレーサーではないけど、その気持ちはわかるような気がする。

 

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 笠原亮は、次点に終わっただけに、「あのときああしておけば」的な思いも浮かんで、悔しさがつのる。しかも、11Rの着順を受けて僕は、笠原に「乗れる!」と伝えている。ようするに計算間違いなのだが(11Rでは峰と菊地の2人が6・00を下回ることになったのだが、菊地がもともと笠原より順位が下だったことを失念していて、笠原が菊地を逆転!とか思ってしまったのだ)、笠原は糠喜びまでしてしまっているのだ。もちろん僕は笠原に平謝りなのだが、足も上向く気配を見せているというだけに、なお悔しいだろう。

 10Rの勝負駆けレースは見事ではあった。4カドからトップスタートを決め、締めていったレースは、11Rの菊地同様、勝負駆けらしい戦いだ。しかし、伸び一息なのか、山崎智也に伸び返されて先まくりを放たれまくり差しにチェンジはしたものの、出口で少しキャビったこともあり、智也と長田に先行を許してしまった。最後は追い上げて、重成一人と長田を捌いて2着浮上。6・00には届いているのだ。18位の下條雄太郎とはタイム差で上回られ、西山貴浩には「亮さんがタイム差で負けるなんてことあるんですか!?」と驚かれている。そういう負け方だから、さらに悔しい。今夜は2日目3日目の5着2本を振り返り、焦れるような時間を過ごすかもしれない。

 とりあえず予選は終わった。しかし戦いはあと2日残っている。勝負駆けを実らせられなかった選手には、この2日で悔しさを少しでも晴らすようなレースをしてほしい!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)