20号機の行方
9R
①魚谷智之(兵庫)16
②原田幸哉(愛知)14
③長田頼宗(東京)15
④西山貴浩(福岡)13
⑤松井 繁(大阪)21
⑥辻 栄蔵(広島)18
松井がやや凹んだ程度で、あとはスリットほぼ横一線。こうなればイン魚谷が絶対有利。1マークまでしっかり伸びきり、他艇を寄せつけずに逃げきった。これは文句なし。3コースの長田がキップのいい握りマイで幸哉を引き波に嵌め、それを見た4カドの西山がすかさず差しに構える。2着争いは、この2艇がバックでグイッと抜け出した。態勢はやや西山有利に見えたが、2マークで西山が握ったところを長田が冷静的確に差し抜けて単独の2番手に。1マーク、2マークともに長田のハンドルワークがキラリ光った。
1着・魚谷、2着・長田。
魚谷20号機はしっかり仕上がった印象だ。元よりこのモーターは「全部の足が強めのバランス型」と見ていたのだが、現状はそのまんまのパワー気配か。ただ、ここ2カ月ほどは行き足~伸び=パンチ力も増してきており、明日の整備次第ではそのあたりももっと引き出せるのではないか。現状のままなら明日は展開を突く戦法。パンチ力が付けば、自力勝負も可能になる。ただ、2コース想定を菊地とするなら、パンチ力よりも回り足や引き波を超えるレース足を強化させたほうが得策かもしれない。
長田の足は日替わりで変わっている印象もあるが、全体的には初日から強め。今日の見立ては「出足、行き足、回り足ともに中堅上位で伸びは中堅」という感じに見えた。チルトを極端に跳ねたりしない限りは伸びが付きそうにもないので、5号艇の明日はスタート勝負でのまくり差しか展開待ちのレースになるだろう。
レコード逃げ
10R
①菊地孝平(静岡)06
②須藤博倫(埼玉)11
③柳沢 一(愛知)05
④毒島 誠(群馬)07
⑤齊藤 仁(東京)12
⑥池永 太(福岡)13
もう、これはスタートに尽きる。昨日はコンマ13とやや手控えたが、ここ一番の勝負どころでコンマ06。菊地がらしいスタートをぶち込んで、一目散に逃げきった。やはり凄い。このS力はもちろんそのまま大きな武器だし、他の選手に「菊地より早いのを行ったら危ない」という警戒心も抱かせる。つまり、スリットで主導権を握ることができる。このメリットも馬鹿にならないだろう。
2着争いは3コースからまくり差した柳沢と4コースから鋭角に差した毒島の一騎打ち。バック中間、柳沢が2艇身ほど抜け出した。ただ、相手は今をときめく毒島だ。必死に逃げる柳沢を強烈な全速マイで毒島が追う、というスリリングなチェイスになったが、柳沢はまったくターンミスをすることなく地元のスピード王子の猛追を振りきった。お見事。
1着・菊地、2着・柳沢。
菊地31号機はBB誌の機力評価で「常に行き足~伸びは上位」として注目していた。ヨーイドンで一気に突き抜ける破壊力はないが、まさに上位レベルの行き足だと思う。そこに今節の菊地の「起こしから握りっぱなしコンマゼロ台全速」がプラスされれば、その行き足は何倍もパンチ力が効いたように見えるだろう。今節、何度も観衆を驚かせたように。出足、回り足も間違いなく強め(かそれ以上)。今日の勝ち時計1分49秒1は目下のシリーズレコードで、常に全力で走る毒島のそれ(1分49秒5)をも軽々と超えてしまった。つまり、S力を利しての自力まくりもあり、差してバック勝負もあり、のマルチパワー。ややスタート勘や機力に不安のある石野より、完成度では菊地のほうが上なのかもしれない。
柳沢47号機はまったくのノーマークだったのだが、回り足を中心に力強い気配を保っている。毒島の猛追をある程度余裕を持って凌ぎきったあたり、パワーへの信頼も高そうだ。ただ、伸び足はさほど期待できそうにもなく、4カドからスタート一気の展開は難しいだろう。3コース想定の魚谷が展開待ちになったとき、その外から何ができるか。そう考えると、やや後手を踏みそうな予感もある。
薄氷の王手
11R
①石野貴之(大阪)20
②平本真之(愛知)15
③瓜生正義(福岡)28
④笠原 亮(静岡)28
⑤寺田 祥(山口)16
⑥茅原悠紀(岡山)16
イン逃げ圧勝が2発続き、「石野はもっと安泰だろう」と見ていたらば、このレースがもっとも妖しい展開になった。まずは待機行動。瓜生がまさかまさかの3カドアタック!! 瓜生といえば「常に正攻法」というイメージがあるから、これは驚いた。スタンドも騒然、大興奮。が、渾身の勝負手は空振りに終わる。起こしから明らかにタイミングを逸し、スリットでドカンと凹んだ。おそらく4カドを決め込んでいた笠原も動揺したのだろう。瓜生とまったく同じ起こしでダダ凹み。イン石野にとっては、なんとも心寒いスリット隊形になってしまった。
この展開で燃えに燃えたのが5コースの寺田だ。凹んでいるセンター2騎を一気に叩き、スロー勢に襲い掛かった。が、平本が敢然とブロックしそうな態度を見て、まくり差しに構えた。その間に、石野がくるりと1マークを旋回して、命からがら逃げきった。
1-5か!?
思った瞬間、視界の左に桁違いのスピードで艇団を割るボートが見えた。確認するまでもなく、それは茅原だった。寺田に連動しながら、レバーを放ることなくセンター勢にツケマイを浴びせていた。あっという間の2番手進出。自力で展開を作った寺田とはすでに2艇身ほどの差があり、その差をじわじわ広げながら茅原が最後のキップをもぎ取った。寺田さまさまの2着ではあったが、並の選手では3着がやっとだったと思う。そのスピード、やはり恐るべし。
1着・石野、2着・茅原。
まず、茅原43号機はおそらく中堅か、よくて中堅上位まで。そこそこパワーアップしたとはいえ、上位とは呼べないと思う。明日の6号艇は、もちろん今日以上に厳しい戦いになるだろう。が、パワー云々とはまったく別の次元で、常にこの男には勝ちきるだけのポテンシャルがある。全速のスピードが生きる展開になるかどうか、をしっかり見極めたい。で、そのためには……。
石野28号機は初日から「中堅上位」と決めつけてきた。今もそれは変わりないのだが、ちょっと気になる点がある。今日の展示時計6秒61(シリーズのトップ時計)でわかるとおり、妙に伸び型になっている気がするのだ。しかも、やや後伸びではないか。だとするなら、イン戦には無用の長物でしかない。明日の石野に必要なのは、スリットから伸び返す行き足とサイドの掛かり、そして出口で押して行くレース足。その理想の足と現状の足がフィットしていないとなれば、石野にあれこれ迷いが生じるかもしれない。明日は何を考え、どんな調整をするのか。かなり気になるところではある。
明日の優勝戦、誰が勝つかはともかく、まずはイン石野vs2コース菊地の最前線での局地戦がレースを大きく左右するだろう。コースの利は石野。実戦でのメンタル面に関して、石野に対する不安は微塵も感じない。SG連覇へのプレッシャーなんぞ、考えるだけ野暮だろう。たとえ機力に不安があっても、開き直って本番に臨む。それが石野という男だ。課題はその機力と、今日もやや逸してしまったスタート勘か。
一方の菊地は、桐生に来る前から完全なるチャレンジャー。予備3位の参戦で怖いものなしの上に、明日は2号艇というこれまたチャレンジャーの立場だ。で、機力はおそらく石野より上、スタート勘は文句なし。それらの要素を鑑みて、どちらがどれだけ有利なのか……その判断が正しければ、他の選手たちの展開や勝機も自然に見えてくるのではないか、などと考えている。(photos/シギー中尾、text/畠山)