BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――一世一代の勝負!

 

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 グランプリ当確組が準優の半数を占め、一発逆転組のチャンスは決して多くはない。現時点で17位の辻栄蔵が予選トップの1号艇、16位の重成一人が予選5位の2号艇、さらに20位だがその上が茅原、峰なので実質18位の魚谷智之が予選4位の2号艇、という状況を考えれば、現在グランプリ圏内にいる選手のほうがどうにも優勢に見える。しかも、当確組も含めた圏内組は、決して緩める気配はない。辻にしても、いつも通りにペラ室にこもって、精緻な調整を重ねている。表情はやや硬いようにも見えなくもないが、そうだとしてもそれは優勝を意識してのもののはずだから、ネガティブな要素ではないだろう。

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 菊地孝平も、昨日の終盤にもそんな気配は見えていたが、今朝は特に、集中モードに突入している。今節序盤に比べればずっと視線は鋭いし、その厳しい表情からは脳内コンピュータがフル稼働しているであろうことは充分に察せられる。昨日の不良航法で順位を下げてしまったこともあわせて、より自分を追い込んでいる雰囲気が間違いなくある。

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 そんななかで、一発逆転組はもちろん虎視眈々と浮上を狙っている。彼らは、今日を乗り切らなければグランプリへの道は断たれる。赤岩善生、吉川元浩、谷村一哉、森高一真、長田頼宗、丸岡正典の6人は、優出できなかった時点で、ベスト18入りの目はなくなるのだ。優出すれば本当の勝負は明日ということになるが、まずは今日が一世一代の勝負。赤岩善生の寄らば斬るの如き顔つきを見ていると、すでに戦闘態勢に入っていることは明らかだった。

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 吉川元浩も、かなり鋭い表情になっていた。いや、この人がキリリと凛々しい顔つきになっているのはいつものことだが、勝負駆けという先入観を差し引いても、目に力強さが増しているのは間違いない。吉川は早くから着水して、試運転と調整に励んでおり、12Rまでには何としても万全にもっていこうという姿勢も強く感じられる。準優組には本格的な調整作業に入る前の選手も見かけられたが、吉川は始動が早い部類だったと言える。それ自体が、気合のあらわれであろう。

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 もちろん、リラックスして過ごしている選手がいないわけではない。長田頼宗はとにかく笑顔が目立った。毒島誠にじゃれついたり、桐生順平と談笑したり。年代が近い同地区勢と、穏やかに過ごしていたわけだ。ただ、どうだろう、深読みかもしれないが、そうして逸る心を押さえていた可能性はないだろうか。長田と毒島、桐生は普段からもちろん仲良さそうにしてはいるが、特に毒島に絡んでいく姿は少し特別なシーンにも見えたものだった。昨年はグランプリシリーズV。それは、ひとつ上のステージに立つ決意を長田にさせるのに十分だったはずだ。ニコニコと笑っている長田を、単に余裕ある様子と考えるのは早計かもしれない。

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 で、森高一真はおそらくはいつも通りの朝を迎えていることと思う。3年前のチャレンジカップ優勝戦の朝も、SG初優勝の大チャンスを前にして、森高はとりたてて心を乱すことなく過ごしていた。今日も傍目には、昨日までとは何も変わらないように思えた。2Rが終わると、ペラ調整所に向かって作業を始めている。昨日の差し切り勝ちの後は「たまたまや、たまたま」と笑っていたが、その顔はまんざらでもなさそうで、気分の良さが伝わってきた。それを変なふうに引きずるのではなく、準優への良質な糧へと変換して、今日を過ごしているように思えた。状況こそ違うが、3年前の再現があってもおかしくなような気がしてきたぞ。

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 女子も今日は勝負駆け! クイーンズクライマックスに出るために、今日を乗り切らねば最高の舞台に立てない。……と言いつつ、昨日終了時点で予選2位の大瀧明日香は、優勝しても12位には届かなさそうだ。この状況、参加した時点である程度は割り切れていたはずだが、どうにもやるせなくなってくる。ただ、大瀧はそんなことなど関係なく、必死に調整し、また仲間たちと笑顔で語らいながら、懸命な戦いを見せている。12人に入るのも重要なことだが、GⅡ制覇自体が勲章である。今日も全力疾走を見せてくれるはず!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)