BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――終盤の悲喜こもごも

 

f:id:boatrace-g-report:20171228182520j:plain

 11R、3周2マークで2番手逆転劇が起きた。先行していた坪井康晴を、篠崎元志がくるりと抜いたのだ。見事な元志の逆転劇、と見えたが、坪井にとっては痛恨極まりない場面だ。ピットに戻ってきた坪井はヘルメットをかぶっていてもわかるくらいに顔を歪ませており、出迎えた静岡勢に向かって何度か首を傾げた。

 驚いたのはその後だ。素早く着替えを終えた坪井は整備室へと駆け込み、本体を分解し始めたのである。言っておくが、坪井が走ったのは11Rである。整備が許される時間は、12R発売中の20分ほどしかないのだ。しかし坪井は本体をバラした。時間があろうがなかろうが、整備をせずにはおれなかったのである。12R発走の直前、坪井は本体を組み終えている。すさまじい集中力で、短時間の整備をやってのけたのだ。部品交換の有無については明日確認しよう(ピストンを手にしていたので、交換していた可能性はある)。その執念は、これぞSGレーサーだと唸るしかない。

f:id:boatrace-g-report:20171228182535j:plain

 その少し前、池田浩二も本体整備をしていた。池田の居場所はプロペラ室、というイメージがあるが、調べてみると本体整備もちょくちょく行なっている。去年のグランプリでも部品交換をしているし、メモリアルではクランクシャフト交換も行なっている。SGでなくとも、たとえば一般戦でも部品交換の記録がけっこう見つかるので(わりと節の早いうちに行なっていることが多い)、実は珍しいことではないわけである。といっても、整備をするからには足色に不満があるわけで、明日からの巻き返しやいかに、ということになる。明日の動きにも(モーターの動きも池田自身の動きも)注目するしかない。

f:id:boatrace-g-report:20171228182551j:plain

f:id:boatrace-g-report:20171228182605j:plain

 池田が本体整備をしていた頃、江口晃生と田中信一郎が整備室で話し込んでいた。時折プロペラの翼面を指差しながら、遠目には激論と映るほどに、お互いの意見を交換していた。百戦錬磨の二人だから、引き出しは山ほどあるだろう。いや、プロペラに関してが話の中心ではなく、もっと全体的なディスカッションをしていた可能性もあるか。こちらは装着場から様子だけを眺めているので、中身については探る由もなかったわけだが、この二人のホット(にしか見えない)トークだけにとにかく目を惹くのだった。

f:id:boatrace-g-report:20171228182623j:plain

 11Rに話を戻すと、勝った松井繁に歓喜の様子が見えなかったのが印象的だった。1号艇でイン逃げを決めたくらいで喜んではいられない、などという感じではなく、表情がやや厳しめに見えたのだ。その後に大きな作業をしている様子はなかったものの、感触にまだ納得のいかないところがあるのか。明日は6Rに登場。早くから精力的に動くはずなので、その様子をチェックしたい。

f:id:boatrace-g-report:20171228182641j:plain

 12Rドリーム戦。今垣光太郎は結局、4カドに引いた。ダッシュには行かないって会見で言ってたのに……というのはともかく、それが今垣の勝負手だったのだろう。しかし、カドまくりは石野貴之との握り競りのようなかたちとなり、飛ばされ敗退。ピットに戻ってきた今垣の肩ははっきりと落ちていた。他の5選手が控室に向かうなか、今垣は装備を解くことなく整備室のモニターでリプレイに見入る。リプレイが終わると、自分の艇に歩み寄り、舳先を持ち上げて底部をチェック。さらに貼り出されたスリット写真を確認して、他の選手が控室に消えて数分後にようやく、控室へと向かったのだった。ヘルメット越しの目は落胆の色が濃かった。

f:id:boatrace-g-report:20171228182656j:plain

f:id:boatrace-g-report:20171228182712j:plain

 一方、まさかのスタート遅れから展開を突く差しで2着となった菊地孝平は、苦笑いを多少含みながらも、笑顔が絶えなかった。控室に戻る際には王者と会話を交わしながら笑い声も起きた。ツイてた、というところだろうか。で、JLCのブースがちょうどリプレイを映し出したときにその場に差し掛かった菊地は画面を見入った。その展開を菊地はどう見ただろうか。いずれにしても、この10点は明日以降に向けてかなり大きいだろう。

f:id:boatrace-g-report:20171228182727j:plain

 さて、今日のレースぶりで最も目立ったのは、井口佳典だろう。2回走りが2回ともカドまくり! 3Rの5カドまくりは毒島誠の差しを許してしまっているが、9Rは4カドまくりで突き抜けた。いずれも進入に動きがあり、スローが深い起こしになっていたことは確かだが、その好チャンスに好スタートを決めて一気に攻めたのだから、お見事というべきだろう。「今日のカドまくり大賞っすね」と振ったら、井口は「ぜんぜん、ぜんぜん。たまたまですよ、たまたま」と返してきたが、本人としてはそう言うしかないとしても、非常にいいもの見せてもらいました! この積極性こそ井口の持ち味。今年はGⅠ、GⅡを制して好調モードの井口だけに、明日からも豪快な走りを期待しよう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)

f:id:boatrace-g-report:20171228182745j:plain

 6号艇3着スタートは大きい! と飯山泰に言ったら、「配当が高くなって良かったですね」と笑った。お客さんの利益のことを考えてくれるなんて、さすが信州人!