BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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児島クラシックTOPICS 初日

ぶち込み王子の逆襲

 

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 今日のMVPは井口佳典で文句なし、だろう。まずは3R、2号艇の井口はあっさりと「コースの利」を捨てた。6号艇・村上純の前付けをどーぞどーぞと招き入れて、1356/24の5カド選択。枠なり偏重のこの時世にはいささか珍しい「3人ご招待のカド狙い戦法」だ。しかも外コースに不利なホーム追い風が吹き荒れていたから、かなり潔い英断でもあった。

 で、この戦法を選んだからには、自力で攻めなくては5カドの顔が立たない。井口はコンマ07全速のスタートをぶち込んだ。内4艇もコンマ10前後の横並びだったが、加速がまるで違う。カド受けの村上はじめ3人の“招待客”を力ずくで呑み込み、まくり差しもありえる態勢からインの田頭実まで強引に攻め潰しに行った。この猛攻は追い風の煽りも喰って6コース毒島のマーク差しを浴びたが、「これぞ、ぶち込み井口!」と唸らされる立ち回りだった。

 

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 攻めっ気120%の井口アタックは続く。4号艇の9Rは迷うことなく4カドを選択。内3艇がややもつれてずんずん深くなる中、井口は颯爽と舳先を翻した。

 また、やらかすのか??

 例によってピット付近の奥深くまで艇を引いたとき、そんな不気味な予感が走った。正直、ここ2年ほどの井口には「艇を深く引っ張ってはみたものの……」的な物足りなさを感じている。スタートで後手を踏んだり、スリットからの攻めが半端だったり、特にSG戦線ではチグハグな印象を抱くことが多かった。が、今日の井口には1ミリの迷いもなかった。コンマ13全速。90m起こしで加速のつかない内3艇を、ひとつひとつ踏みつぶすようにしてまくりきった。

 

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 5カドから絞めまくって2着、4カドからハコまくりで1着……今日の井口は見た目にもド派手ではあったが、それだけではない“凄み”を感じさせた。元より、己のバイオリズムや心の在り方が、真っすぐに水面に反映されるレーサーだ。津GI東海地区選~徳山GⅡモーターボート大賞を連覇した勢いが、まんまスリット~1マークに凝縮されていた。揺るぎのない自信がボートに乗り移っていた。

 ここ10年ほど、艇界を牛耳るトップレーサーたちは「2、3年周期で頂点に返り咲く」ような気がしているのだが、今年の井口がまさにその周期のてっぺんに再到達するのではないか。そんな予感を抱かせるカドまくり×2連発だった。明日の3号艇も要注意だ。

 

独断のパワー評価

 

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 強い追い風で足色を測るのが難しい1日だったが、私なりのパワー評価を記しておきたい。まず、前検でS級に指名した向所浩二は、評価を少しばかり下げざるをえない。今日の5Rはスリット付近の行き足やターン回りに見るべきものはあった。全体的に強めの足、とも感じた。ただ、3周目に上平真二と競り合って逆転されたのはマイナス材料だ。舳先を突っ込まれ、それを振りほどけずに先マイを許してしまった。あの場面は、しっかり伸びきって舳先を封じてほしかった。一気に評価を下げるほどできないものの、A級あたりが妥当だと感じた。

 

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 次に期待していた安田政彦の足は、A級としては十分に満足のゆくレベルではあった。服部幸男を追い抜き、飯山泰の猛追を退け、接戦に強いパワーという印象も抱いた。だからと言ってS級に昇格するほどの凄みは感じられず、こちらも現状ではA級据え置きにしておきたい。

 

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 前検でトップ時計を弾き出した新田雄史は3コースからのまくり差しが惜しくも届かず、さらにイン戦でも2コース伊藤将吉に差されて2着・2着。大崩れのない安定パワーは随所に感じられたものの、直線でもうひと伸びの足がピンピン連勝もありえただろう。今日の風と54キロの体重がどこまで影響したか。判断は難しいが、間違いなくAランクの足はある。私の予感としては、このまましっかり上位着順を並べて準優好枠~優出までは行きそうな気がするのだが、どうか。

 長嶋万記もイン戦で勝ちきれなかったが、パワーそのものに不安は感じられなかった。案外だったのは太田和美と毒島誠(1・2着でも道中で追い上げられる感じが……)で、今日の実戦足はAランクに相応しいものではなかった。魚谷智之、松井繁もやや割引か。

 

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 一方、前検ランク外で馬鹿に良く見えたのは、村越篤のレース足だ。2Rで逃げる渡辺浩司に舳先をねじ込み、道中では先行する田中信一郎にもこれまた舳先を突っ込んでギリギリ逆転の1着をもぎ取った。後半11Rは6号艇で4着だったが、やはり道中の追い上げにはウムムと唸らせるものがあった。風があってもなくても、あの実戦足はかなり怖いと思う。

 

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 他では飯山泰のストレートの伸び足、上平真二の回り足、芝田浩治のターン出口からの加速感、平本真之のターン回りの安定感、大整備で行き足が良化した赤岩善生、前出・井口佳典の行き足~伸びは明日以降も大いに警戒すべきだろう。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)