生き残った怪獣
10R
①茅原悠紀(岡山)12
②峰 竜太(佐賀)12
③桐生順平(埼玉)13
④西山貴浩(福岡)11
⑤魚谷智之(兵庫)12
⑥杉山正樹(愛知)15
あの衝撃の平和島GPから5年半ぶりのSG制覇へ、茅原がまずは第一関門を突破した。ただ、レース内容は「イン逃げ圧勝」とは呼べないだろう。
スリット隊形は↑ご覧のとおり美しいほどの横一線。つまりは絶好のイン逃げ隊形なのだが、ここから2コースの峰が出て行く出て行く! 茅原と峰の行き足の差は桁違いで、瞬く間に峰が半艇身ほどのアドバンテージを奪った。
勢い、峰は「まくれる!」と判断したのだろう。2コースの常套手段である「外を止めての差し」という戦法を捨てて、内へ内へとズンズン茅原に艇を寄せて行った。あるいは茅原にとことんプレッシャーをかけての差し、という戦術だったのかも知れないが、峰自身のマイシロも消失してゆく。内に寄るだけ寄ってからの差しハンドルは、先マイを目指す茅原を捕えることはできなかった。
この1マークの攻防で惜しかったのは4カドの西山だ。「内の桐生に攻めさせての決め差し」と思っていたらば、実戦はさっぱり伸びない桐生を自力で叩いてのまくり差し!! 見た目には一撃で突き抜けそうなほどの勢いだったが、茅原と峰の間隙があまりにも狭すぎた。茅原に接触して舳先が浮き上がり、この強襲は惜しくも空砲に終わった。内2艇の隙間がもう50センチほど開いていれば、おそらくファイナルの最初の切符は西山の手に渡ったことだろう。
レース全体でもっと惜しかったのは桐生だ。窮屈な2コース差しの峰、不発に終わった西山を横目に、3コースの桐生は冷静な2番差しでスルリと2番手に躍り出た。2マークも外から追いすがる峰、強引に内へと切り返した西山をシャープに交わしてその差は3艇身。桐生の技量をもってすればセイフティと呼ぶべき大差に見えたが、その足色はどうにも頼りない。
2周1マークを回って、峰、西山との差は2艇身。さらに直線でもじわじわ詰め寄られた桐生は、2周2マークを珍しくオーバーラン。膨れて回ったところを西山・峰にズボズボ差し込まれ、西山と接触して大きくバランスを逸した瞬間に峰と体が入れ替わった。これら一連の逆転劇は、やはり桐生のパワーが劣勢だったから、としか思えないのだがどうだろうか。
大混戦の末に2着をもぎ取った峰は、言うまでもなく怖い存在だ。選手の怖さのみならず、今日のあの行き足~伸びは文句なしのトップレベル。準優予想のA【出A・行A】からA+【出A・直S】へと昇格しておきたい。もちろん、「4カドでも十分に優勝が狙える足」と補足しておこう。
サプライズボーイ
11R 並び順
①山口 剛(広島)13
②長田頼宗(東京)13
③篠崎元志(福岡)11
④高野哲史(兵庫)17
⑥徳増秀樹(静岡)17
⑤石野貴之(大阪)29
2010年のクラシック以来、10年ぶりのSG制覇を目指す山口もインから押しきった。進入は徳増が動き、石野だけが舳先を翻しての12346/5。スロー5艇は100mちょいの起こしで「石野の十八番、前付け艇を入れての一撃カドまくりがあるか?」と思われるスリリングな隊形ではあったが、F持ちの石野がドカ遅れ。ダッシュの脅威が削がれた1マークを、インの山口が豪快にぶん回して逃走態勢に持ち込んだ。やや握りすぎにも見えたインモンキーだが、こちらは完勝と呼んでいいだろう。相棒の28号機は前検から好モードで、「全部の足が強めのバランス型」と見ている。山口本人は「特に出足・回り足が強力」と言っているから、現状はやや手前寄りか。とにかく2コースから勝負するのに適したパワーであることは間違いない。
スリット隊形&パワー的に2着も内寄りで決まりか、と思いきや、ターンの出口からニュッと舳先を突き出したのはあっと驚くSG初参戦の高野!!?? これは参った。初めてのSG、初めての準優だと言うのに、高野は4カドから内の元志が握った瞬間に自身もレバーオン。プレッシャーを微塵も感じさせない、ルーキーシリーズのような全速旋回でブイ際を突き進んでいた。展開云々ではなく、迷いのないスピード戦で大先輩たちを一蹴した、と言い切っていいだろう。
もちろん、SGでは無名の新兵に出し抜かれて黙っている先輩たちではない。1周2マークでは石野が高野の前を遮る切り返し、2周1マークでは内の元志と外の石野が挟撃態勢で攻め、さらに2周2マークでも石野がこれ以上ないほどの激辛にして嫌味な切り返しで高野を脅かした。私の目には「どこかで間違えろ、間違えろ、ほれ、間違えるやろ!」みたいな波状攻撃に移ったが(笑)、高野はそれらすべてのトラップを冷静なターンで切り抜けた。
うーーん、正直、私も今節の高野に関しては「どこでポイントを稼いで鳴門に来たの?」くらい無頓着で、3日目に予選3位になったときも「いやいや、そんなそんな、結局は準優に乗ったとしても、ねえ」くらい軽くあしらっていた。まさかまさか、準優の大舞台で自由奔放に立ち回れるほどの強心臓の持ち主とは、微塵も思っていなかった。で、こんなことを書いてる今も「いやいや、そんなそんな、優勝戦の6号艇になったとしても、ねえ」くらいの心持ちでいることを白状しておこう(笑)。もちろん、明日も舟券に絡めば一気に配当が跳ね上がるであろう高野君。心の中で「いやいや」とつぶやきつつ、こっそりと3着の舟券は買っておくとしよう。
トリプルリーチ!!!
12R
①瓜生正義(福岡)08
②枝尾 賢(福岡)10
③磯部 誠(愛知)14
④松井 繁(大阪)17
⑤白井英治(山口)18
⑥深谷知博(静岡)22
5億円以上の売上となった最終バトルも、大本命の瓜生がインから鮮やかに押しきった。このレースの直前、朝から猛烈に吹き荒れていたホーム向かい風が嘘のように止み、水面には向こう岸の山々が映るほどの穏やかな水面になった。まあ、それはそれでスタート勘は難しいとしたものだが、インの瓜生だけがゼロ台まで踏み込む絶品スタート。そこから段々に遅くなっていく斜め横一線となっては天下の瓜生が負けるはずもなし。同県の枝尾を壁に、1マークを柔らかくくるり旋回して明日の1号艇を確定させた。文句なしのイン逃げ決着!
明日も瓜生が逃げきれば、3つの偉業がいっぺんに達成されることになる。デビュー通算2000勝とオーシャンカップ連覇と、福岡が誇る『艇王』植木通彦さんのSG10Vを凌ぐ11V。天邪鬼な私であっても、聖人君子のような瓜生にこのトリプルリーチを達成してほしい、という思いはある。
ただ、何度か書いてきたように、こと瓜生77号機のパワーに関しては「盤石のパートナー」とは思っていない。今日のイン圧勝を見てもトータル中堅上位あたりと鑑定している。だいたい、こうした難癖をつけた優勝戦1号艇は今まで文句なしのイン逃げを決めているのだが(笑)、明日もちょいと眉に唾を付けながら瓜生の気配をチェックすることになるだろう。
で、最後のファイナルチケットを手にしたのは、瓜生の同県の枝尾だった。初日にいきなりセット交換をしてパワーアップ。さらにこの1年ほど当たっているペラ調整で初めてのSG優出を決めた。この勢いは看過できないが、現時点の枝尾36号機の評価もやはり中堅上位レベル。つまりは福岡コンビの機力をあまり信用していないのだが、今節は「どんぐりの背比べシリーズ」だっただけに展開一本の突き抜けもありえる。4号艇にあの怪獣がいるのだから。(photos/チャーリー池上、text/畠山)