勝負駆けの一日。といっても、たいがいこの日の前半の時間帯は穏やかな空気が流れる。大きな作業をしている選手は多くはなく、今日の場合は皆無。慌ただしさよりも、予選突破に懸ける選手の思いがじんわりと静かに伝わってくる感じだ。
●今村豊 当初は姿が見えなかったが、2R発売中におもむろに装着場にあらわれ、速攻でカポックを着込んで水面へと飛び出ていった。まさに電光石火。
●田頭実 1R3着であがってきた小野生奈に、エンジン吊りの間中、言葉をかけていた。優しげな表情で、柔らかく諭すような雰囲気。小野も悔しさを見せながらも、明るい顔でうなずいていた。
●今垣光太郎 大きな動きはなし。エンジン吊りで姿を見ただけだ。
●松井繁 基本的に、昨日までと行動は変わらない。試運転、ペラ調整。ペラのほうは、昨日ほど調整に忙しそうではなく、試運転の後には控室へ戻るケースもあった。理想の仕上がりに近づいてきているのかも。
●服部幸男 今日も昨日までと同じ場所で、根を生やしたように、ペラ調整を続ける。切り上げて試運転に出て、また同じ場所に戻ってきてペラを叩く。いつも通りの服部、ということになるのだが、今回は暑い屋外調整所で叩いているだけに、その一貫した姿勢には改めて頭が下がる。
●市川哲也 マイペースの調整。表情は力強く、気合が満ちている。
●田中信一郎 試運転。装着場やペラ室ではほとんど姿を見ていないが、準備に余念がない様子ではあった。
●山下和彦 ペラ小屋で調整作業。1R発売中に水面へと向かった。試運転の後は、控室に戻った模様。
●前本泰和 やはりペラ調整。忙しそうにしている雰囲気はなく、マイペース調整と言っていいだろう。
●濱野谷憲吾 1Rは大きな着を獲ってしまった。さすがにカタい表情。今節はずっと舟券圏内をキープしていただけに、痛恨事ではあろう。
●山崎智也 大きな作業をしておらず、エンジン吊りで姿を見ただけだった。他選手との絡みを見ていると、表情に余裕があるように思えた。
●石渡鉄兵 ペラ調整→試運転→ペラ調整と、精力的に調整作業をこなしている。ピンピンなら準優に充分届くだけに、準備万端でレースに臨みたいところだ。勝負駆けを戦っている男、という雰囲気が多いに伝わってくる。
●辻栄蔵 いつも通りのペラ調整。試運転をしては、ペラ室へと向かってペラを叩く。レジャチャンサプリのコメントによれば、昨日はなるべくプロペラを触らないように過ごしたとか。なるほど、後半はギリペラでなかったのは、意識的にしていたことだったのだ。今日はもちろん叩いてはいるが、同様の動きになることだろう。
●徳増秀樹 ペラ室、装着場では姿を見ず、1Rのエンジン吊りのみ。3R出走で、係留所での作業をしていたものと思われる。
●原田幸哉 作業らしい作業はしていなかったが、池田浩二らとの絡みで爽やかな笑顔を見せていた。気持ち的には余裕がありそうだ。
●白井英治 2R出走ということもあって、展示ピットにボートをつけたところしか目撃できなかった。
●重成一人 1R展示前には試運転で水面を駆けていたが、その後はペラ室でも装着場でも姿を見ていない。
●池田浩二 プロペラ調整。もうひとつ成績が冴えないが、そのせいもあるのか、表情にやや陰りがあるようにも見える。まあ、こちらの先入観があることは否定しないが。ペラ調整をする姿は、いつも通りに懸命。
●寺田祥 序盤の時間帯は動きなし。3R出走準備を着々と進めていたものと思われる。
●赤岩善生 ピンピン勝負! そう煽ったら、笑顔で「わかってる」。この男がそれを認識していないはずはない。ナイターの4日目12Rは、予選ではあるものの、準優に望みがない選手が組まれる傾向があって、実質的な敗者戦になっていたりするが、今日の赤岩はここに組まれた。しかし赤岩は気にしていない。「勝てばいいんだから、ね」。減点で始まった予選ロード。赤岩はまったく闘志を萎えさせてはいない。
●坪井康晴 1R4着で、後半は厳しい勝負駆けとなった。それが理由かはわからないが、表情は不機嫌に見えた。
●菊地孝平 いつも通り粛々と調整していたわけだが、明らかに表情は変わってきていると思う。ドリーム1着で発進しながら、今日はまさかのピン勝負。視界には何も入っていないかのように一点を見据えて、脳内コンピュータをフル回転させる、というモードに完全に入っているようだ。こうなると、すれ違いざまの挨拶さえ、ためらってしまうような雰囲気になるのである。
●秋山直之 ペラ調整と試運転。2日目にけっこう力強くペラを叩く姿があったが、今日もまあまあ大きな音を装着場に響かせていた。
●中島孝平 係留所へ向かおうとしたとき、報道陣が何人か溜まっている前を通った。報道陣は当然、中島に挨拶の声を一斉に飛ばしたのだが、中島は小さく会釈するだけで通り過ぎていった。2R出走、そのときすでに完全に戦闘モードに入っていたのだ。レース後などに挨拶すると、丁寧すぎるくらいに頭を下げてくれたりする人なのだから。
●笠原亮 2R1着。やっと結果が出た安堵はありそうだ。
●井口佳典 試運転とペラ調整を懸命に。表情は一段と引き締まって見える。
●森高一真 1R発売中に、ボートを水面に下ろした。「こんな暑いんだから、涼しい部屋にいたほうがええぞ」。コワモテだけど、実は優しいのだ。でも、室内にずっといたらピット取材にならないんですけど。
●丸岡正典 1R2着。今日は2着2本の条件で、7Rでもう一丁勝負だ。松井繁が「後半につながったな」とねぎらうと、丸岡は「はいっ」と声を弾ませた。これは王者の激励にほかならない!
●吉田俊彦 ペラ調整。特に目立つような動きは見せず。
●萩原秀人 1R終了後に着水。ボートをリフトに押していくところにカメラを向けたら、いい顔でニヤリ。やっぱり余裕があるのだ。
●中野次郎 1Rの濱野谷のエンジン吊りで姿を見たのみ。ただ、係留所に「中野」のプレートのボートはあった。
●石野貴之 試運転とペラ調整を続けている。今日は渾身の1着勝負だ。とはいえ、前半の時間帯には、特別に力が入っているような様子はなかった。1号艇だからこそ、己のやることをしっかりやり尽くすのみ、といったところか。
●久田敏之 2R展示から戻ってきて、隅のほうで立ち止まったまま、考え込んでいるような様子があった。戦略を考えているということもあるだろうし、それが精神統一になっているようにも見えたのだった。
●山口剛 整備室でプロペラを丁寧に拭いている姿を見かけた。静かな闘志、といった感じ。
●毒島誠 プロペラ調整、試運転を繰り返す。どうにもリズムがもうひとつといった感じだが、調整作業の熱心さはいつも通りだ。この繰り返しがいつか大爆発につながるはずだ。
●渡辺浩司 小野生奈のエンジン吊りで姿を見たのみ。
●長田頼宗 今日の序盤の時間帯に、ペラ小屋にたった2人、という非常に珍しい時間があった。ちょうどペラ調整組が揃って試運転に向かったということだろう。その2人が、この長田と桐生順平。
●岡崎恭裕 2R出走ということもあって、姿は見えず。
●岡村仁 同じく2R出走ということもあって、姿は見えず。
●峰竜太 昨日もそうだったが、序盤の時間帯は非常にゆっくりと過ごしているようだ。エンジン吊りを終えると控室に戻っていくのだ。篠崎仁志とのツーショットもあったが、二人は肩を並べて控室へと向かった。ともにモーターに手応えあり、ということだと思う。
●平本真之 3Rで勝負駆けということもあって、朝から気合を感じさせる表情。いつも通り、にこやかに挨拶をしてきたりもするのだが、その声が妙に野太くなったりもしていた。3Rは3着。ボーダーが想定通りの5・80ならば、残っているのだが果たして。
●新田雄史 今節の新田は、ペラ室か整備室にいるイメージしかない。もちろんそんなはずがないのだが、僕が新田の姿を見かけるときはいつもどちらかなのだ。今日はペラ室。
●茅原悠紀 1R展示前から、入念にペラ調整を行なっていた。切り上げて水面に向かったのは1R発売中。その後、係留所でエンジンを回しての調整を行なうと、いったん控室へと戻り、2R発売中にボートを展示ピットに動かした。その一連の動きが、流れるようにスムーズだった。
●桐生順平 相変わらずペラ調整は続く。クラシックをふと思い出す。やはりエース機を引いた桐生は、節間ノーハンマーだった。だから何度も、喫煙所で姿を見た。タバコを吸いながら、レースへの集中力を磨いていたのだ。今回のエース機は、桐生に真逆の動きを強いている。あと3日、どこかでその成果を見せつけることはできるのだろうか。
●篠崎仁志 緊張感が増している、と言い切っていいのかどうかはわからない。だが、どう見てもピリピリしているように思えるし、表情がいつもの仁志とは明らかに違うと思う。今日は1号艇。辻栄蔵次第ではあるものの、状況によっては逃げ切って「4~6日目を3連続で逃げ切ってV」という王道に乗っかる可能性がある。それを意識していないはずはないだろうし、これは仁志にとって確実にひとつのステップアップなのだろうと思った。
●遠藤エミ 準優当確とはいえ、調整の手は緩めない。試運転とペラ調整を続けているのだ。2R発売中には、松本晶恵との「陸での足合わせ」を見た。係留所から肩を並べて駆けてきて、ペラ室へと飛び込んだのだ。陸での伸びは五分五分でした。
●小野生奈 1R、1号艇で3着。勝負駆けには成功したが、逃げ切れなかったことはやはり悔しかろう、レース後は少し顔を引きつらせていた。田頭に声をかけられていたのは先述の通り。切り替えて、SG2節連続予選突破に達成感を少し覚えたら、明日に向けて突き進め!
●松田大志郎 派手な動きはなく、プロペラ調整など、レースへの準備を着々と進めていた。
●中田竜太 1Rは1着! さすがにニコニコ顔であった。勝利者インタビューから戻ってきてもニコニコ。これで後半につなぐことができた。9Rに注目だ。
●竹井奈美 試運転で水面を駆ける。レースを終えたあとの終盤の時間帯の試運転、は女子選手のルーティンみたいにもなっているが、序盤の時間帯もできうる限り、試運転で走り回っているのである。
●岩瀬裕亮 エンジン吊りでしか姿を見なかった。5R、水神祭を目指す!
後半は勝負駆けの悲喜こもごもも含めて、さまざまな動きがあると思われます。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)