強者の証明
12R優勝戦
①毒島 誠(群馬)13
②井口佳典(三重)12
③山田康二(佐賀)15
④篠崎仁志(福岡)13
⑤桐生順平(埼玉)09
⑥新田雄史(三重)08
おめでとう、毒島。
勝つべき男が勝った。憎らしいほどの強い勝ちっぷりだった。3夜連続のイン戦。一昨日のそれは、あわや2コース井口の差しが入るかという薄氷の逃げだった。昨日も3コース新田の渾身のまくり差しに脅かされた。
だが、今日のインモンキーはどうだ。スリットほぼ同体からスーッと艇を伸ばし、1マークの手前でクックッと小刻みに舳先を左に寄せ、回った瞬間には5艇身ほども井口らを突き放していた。なんというハンドル捌き、なんというスピード、なんというパワー。昼の優出インタビューで「初動の掛かりだけがちょっと気になってたんですけど、さっきやっと改善されました!」と声を弾ませていたが、そのセリフをまんま象徴するようなレース足だった。
今年はSGでのモーター抽選運に恵まれず、エンジン出しにも悪戦苦闘し続けた。「整備巧者」というレッテルが薄れかけてもいた。今節は、そんな雌伏の1年をいっぺんに吹き飛ばした。上位レベルのパワーを相棒にしたら、この男がどんだけ速くどんだけ強い男かを改めて全国のファンの脳みそに刻ませた。整備巧者としての一面も垣間見せた。勝者については、これ以上多くを書く必要もないだろう。
チャレンジカップとしてのもうひとつのミッションについて書こう。毒島があっという間に50mほども突き放した2周ホーム。この時点で、すでにGPボーダーラインの圏外からふたりの選手が這い上がっていた。毒島と仁志。逆に圏外へと脱落したのは坪井康晴と辻栄蔵。この入れ替わりが決定的になり、まだ受け取り手が決まっていないGPチケットは1枚のみ。その条件は、「新田が2着に食い込めば新田、3着以下なら前本泰和」という二者択一に絞られていた。
それらを頭に浮かべながら、私は新田を探した。4番手。2番手の井口から5艇身ほども離された絶望的なポジションだ。が、もちろん是が非でも2着が欲しい新田は諦めない。2周1マークの手前、新田はすぐ眼前にいる仁志には目もくれず、そのはるか前を行く2番手の井口目指して突き進んだ。弟子が、師匠を打ち負かしに行った。私の目にはそう見えた。自分目がけてやって来る愛弟子の姿が見えたかどうか、井口はまったく動じることなく全速の抱きマイでこれを交わし、無理な切り返しを見せた新田は他艇に接触して力なく減速した。事実上、この瞬間に賞金トップ18がすべて決まったと言っていいだろう。喉から手が出るほど欲しい2着を奪ったのは、師匠の井口。いささか残酷なドラマではあるが、チャレンジカップでは当たり前レベルの出来事でしかない。
盤外戦としては、6日間に渡る前本と辻の賞金争いも残酷ではあった。11カ月間の最後のレースで生じた27万円の差が、ふたりを天国と地獄に振り分けた。毎年のことだが、これがチャレンジカップだ。かつて黄金のメットを被った辻は来年の再起を己に誓い、前本は辻の分まで戦うと心に決めたはずだ。
毒島がブッチギリのゴールを通過し、下関の夜空に季節外れの花火が何発も打ちあがった。初冬の乾いた空に連なる色とりどりの光は、真夏とは違う美しさでピットを照らし続けていた。
最終ランキング
1峰 竜太
2石野貴之
3桐生順平
4白井英治
5寺田 祥
6井口佳典
…………
7毒島 誠
8松井 繁
9茅原悠紀
10菊地孝平
11魚谷智之
12深川真二
13田中信一郎
14原田幸哉
15中田竜太
16森高一真
17篠崎仁志
18前本泰和