BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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中田竜太が3代目トーナメントチャンプ!――レース回顧&ピット雑感

 

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「差さってそうな感じでしたね」

 1マークを、中田竜太はそう振り返る。たしかに吉川元浩の2コース差しは、先に回った中田に舳先をかけたように見えた。しかし、そう見えただけだった。出口ではかかっていたかもしれないが、バック中間あたりで両者が接近した時、中田の艇ははっきりと1艇身、吉川をリードしていた。

 2~5コースがぴったりコンマ21で揃い、トップスタートは新田雄史のコンマ17だったが、さすがに6コースから他艇を出し抜くアドバンテージにはならない。そんななかで中田はコンマ19のスタート。吉川に迫られたように見える場面はあったものの、これは完勝と言っていいだろう。

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 レースは1マークで終わっている。4コースから差した篠田優也がバランスを崩し、最内差しの新田に接触しながら転覆してしまったからだ。篠田は博多特有の波に足をとられてしまったか。バックは中田→吉川→仲口博崇→山崎智也→新田の順。2マークで智也がひとつでも着を上げんと、仲口を制して先マイに打って出たが、仲口がこれを捌いて、篠田以外の艇番順であとは2周をこなすだけになった。

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 篠田にとって、自分以外はすべてがグランプリ経験者であり、SGまたはプレミアムGⅠウィナーというメンバー。ここでデビュー初優勝を果たしていれば、忘れられない水神祭となったはずだが、別の意味で忘れられないレースとなってしまった。レース後は、ともに戦った先輩たちに頭を下げて回り、また体をいたわられてもいた。特に大きなケガはなかったようだ。それよりも、接触を受けた新田雄史が足を引きずっており、「大丈夫です」とは言いながらも、かなり痛そうだ。次の戦いまでに癒えればいいのだが。

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 吉川はピットに上がるや、瓜生正義に「惜しいっ!」と声をかけられている。選手たちも、吉川の差しが決まったように見えていたのだろう。吉川は「ワハハハッ!」と大声をあげて笑った。吉川自身も、差さったと思った瞬間があったかもしれない。

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 山崎智也は瞬く間にモーター返納を終えると、100m9秒98級の全力疾走で控室へと戻り、素早く着替えを終えて、風のようにレース場を去っている。智也の後姿を見送ってふとモニターを見ると、まだ表彰式さえ始まっていなかったほどだ。仲口博崇は、僕の顔を見て、ニッコリ笑った。「俺もたまにはやるでしょっ!」。たまには、って(笑)。今節はたしかに魅せてもらった。トーナメントの6号艇からの3コース奪取、まくり一撃は今節のベストレースだろう。たまにはなんて言わずに、またビッグでおおいに魅せてもらいたい。

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 レース前のピットは、SGとは違って人っ気がほとんどなく、かえって緊張感が伝わってきたものだった。優勝戦の神聖性が、たしかにそこにはあった。展示から帰ってきたとき、あるいは敬礼をして本番ピットに向かうときのファイナリストからは気合が感じられたものだった。SG優勝戦と比べれば、敗者の悲壮感みたいなものは薄かったかもしれないが(篠田以外は)、これが特別な戦いと感じられる何かは間違いなくあった。

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「ボートレースはギャンブルなんですけど、勝っても負けても、また見に来ようと思ってもらえるレースができるよう、頑張りたいです」

 中田は優勝会見でファンに向けての一言と振られて、そう言った。ファン感謝3Daysと銘打たれたシリーズだからこそ、その思いを強く意識して戦ったのだ。それは他のファイナリストも、あるいは参加選手も同じだろう。だから、これはやはり単なる一般戦ではない。ピットに笑顔で凱旋してきた中田竜太の笑顔を見て、そう実感した次第である。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)