BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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尼崎オールスター 準優ダイジェスト

2マークの新ダンジョン

10R 並び順
①前田将太(福岡) 16
②小野生奈(福岡) 17
③松井 繁(大阪) 20
④新田雄史(三重) 16
⑥今垣光太郎(福井)18
⑤毒島 誠(群馬) 11

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 女子レーサー史上3人目のSGファイナルへ、小野生奈の挑戦はわずかに届かなった。掛け値なしに、ほんのわずか。あの1マーク、私も含めて観戦した多くのファンが「決まった!」と思ったことだろう。それほど素晴らしい、完璧な差しハンドルだった。優出へのプレッシャーなど微塵も感じさせない軽快なモンキーだった。その舳先は、バック半ばで前田の内に突き刺さるほどだった。
 1着か、悪くても2着か……とにかく優出だ!

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 そう思った瞬間から、異変は起こる。生奈の舳先が前田の艇とわずかに接触し、弾かれるように抜け落ちた。前田がやんわり絞め込んでもいたが、生奈もやや外に寄れているように見えたのは気のせいか。まあいい。それでも、3番手の松井との差は2艇身。艇を外に持ち出して2マークを目指したときに、王者の勝負手が放たれた。
 百戦錬磨の切り返し。
 つ、つ、つと内に寄りはじめ、やわらかな弧を描く生奈の航跡を最短コースで遮った。そして、生奈に「さあ、どうする?」と問うた。握って交わせば流れるし、行かせて差せばスピードが殺される、絶妙のコース取り。やや慌てたように生奈はレバーを握ったが、すでに松井が半艇身ほど抜け出してそのスピードを抹殺した。

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 数秒前に戻ろう。生奈が松井の勝負手に気づいたのは、どのあたりだったか。とにかく、生奈があのトラップから脱出するには、「松井がそうするであろう可能性をあらかじめ想定し、未然に防ぐ行動(おそらくより早い初動の全速ターン)を取るしかなかった」。つまり、SG準優の“2着争い”のシビアさを補うだけの経験則がなかった。私は勝手にそう思う。そして、まさに今日がその経験則になったことだろう。
――セイナガアタラシイスキルヲゲットシタ。
  小野生奈の次なる挑戦を楽しみにするとしよう。

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 さてさて、決死の勝負手を成功させた松井だったが、諸刃の剣というのか、松井自身も無傷ではなかった。生奈に艇を預けてブロックしたため、外へ外へと流れる。その間隙を縫って、ズッポリと差し抜けたのが新田だった。
 1着・前田、2着・新田。

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 前田の足は、地味ながらも実に力強い。つまりストレートは中堅に毛が生えた程度だが、回り足を主体とする出足系統がトップレベル。イン逃げや2コースから差すのに相応しいパワーだ。ただ、インコースが節イチの中島とするなら、差して届く可能性はそれほど高くはないだろう。
 新田の足は前検でも回り足がやや目についたが、やはり出足系統が強めの中堅上位レベルか。スリット同体の5コースから正攻法の握りマイでは勝ち目は薄い。ただ、今節も一発決めたように、「パワー不問の全速まくり差し」というスピード勝負は常に警戒しておきたい。

達人差し

11R
①吉川元浩(兵庫)11
②白井英治(山口)14
③茅原悠紀(岡山)10
④秋山直之(群馬)24
⑤菊地孝平(静岡)13
⑥羽野直也(福岡)14

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 やはり、ダッシュ勢の攻め手は5コースの菊地だった。スリット自体は菊地としては穏やかなコンマ03。ただ、4カドの秋山が凹んだため、内への視界が完全に開けていた。すぐには絞らずじわりと内に艇を運びつつ、3コース茅原が握ると同時に進軍開始。ぽっかり空いた内水域に狙いすましたまくり差しハンドルをぶち込んだが、ターンマークに衝突して失速。菊地◎の私としては残念なアクシデントではある。ただ、あのまま最内を貫いたとしても、おそらく逃げる吉川、差した白井には届かなかっただろう。

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 菊地のそれもあって、バック直線は内2艇の一騎打ち。と言っても、ターンの出口から2コースの達人・白井の舳先がしっかりと食い込んでおり、もはやそこで勝負あったと言うべきか。2マークまでにさらに1艇身ほど抜け出した白井が豪快なモンキーでぶん回り、準優としての大勢が決した。
 1着・白井、2着・吉川。

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 このレースの予想欄で、私は6人全員を「B+」つまり中堅上位と鑑定した(菊地のみ、伸び足に「A」)。吉川も白井もおそらく見立て通りで、どちらかと言えば出足系統寄り。つまり10Rのふたりも含めて出足型の面々ばかりが優出したことになる。こうなると、1マークの交差ターンの出口から誰がいち早く抜け出すか、という戦いにもなりそうだが……中島がインだとするなら、ふたりともに現状のパワーでは届かないだろう。もちろん、白井には目の覚めるような3コースまくり差し、吉川には地元の意地でのスタート勝負、という武器も考えられるのだが……。

レース×レース=??

12R
①中島孝平(福井)15
②中田竜太(埼玉)18
③山崎智也(群馬)19
④松本晶恵(群馬)12
⑤峰 竜太(佐賀)12
⑥平本真之(愛知)13

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 レースは2度あった。まずはホーム水面、スリット隊形を見てあっと驚いた。4カドの晶恵はじめダッシュ3人が、スロー勢を半艇身ほど牛耳っているではないか!! その隊列だけで穴党の血がむずらむずら騒いだものだが、晶恵は元より差し職人。絞めまくるタイプではなく、じっと直進して地元の大先輩が動くのを待った。ある意味、それが功を奏したかもしれない。怖い怖い峰を自然にブロックする形になり、「見る前に動く」峰の初動を遅らせたのだ。

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 やや凹んだ智也が動くのを待って、外の3艇もほぼ同時に動く。ほぼ同時の初動だから、峰のスピード旋回の破壊力も半減する。中田に続いて晶恵が2番差しに入り、その外から峰が特異な放物線を描いて襲い掛かったが、多くの引き波込みでギリギリ抑え込んだ。

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 ここからが第2のレースだ。ただひとり、インから圧倒的な強さでイチ抜けした中島を除く5艇立て。外から順に紹介すると、3コースから握った智也、2コースから差した中田、5コースからまくり差した峰、4コースから差した晶恵、6コースから根っこ差した平本……バック中間で、この5艇が奇跡的にほぼ横一線の隊列を築いたのである。正確に言うなら、“インコース”の平本だけが1艇身ほど凹んで“2~5コース”が見事な横一線。誰がいちばん有利かと言えば……“2コース”の晶恵だ!
 なんと、生奈ではなく、アッキーだったのか??
 私は再び第3のSG女子ファイナリストへ夢を馳せた。が、それもまた数秒の淡い夢でしかなかった。“3コース”の峰が、2マークのかなり手前で「もう、待ちくたびれた!」とばかりに晶恵にツケマイを浴びせつつ、強引豪快にぶん回したのだ。その引き波を浴びながらも晶恵は得意の小回りで応戦しようとしたが、態勢が不安定だったために2マークの寸前でキャビテーションを発症。舳先が1/4ほど空回りして晶恵の優出アタックも万事休した。
 で、2着は峰だったかと言うと、これもまた違った。“インコース”で凹んでいた平本が晶恵が狙っていたであろうブイ際をくるりと旋回。バック追い風で外へと流れている峰を横目に、すいすいとファイナルロードを突き進んだのである。峰の全速マイはらしいターンではあったが、一撃でケリを付けようとしすぎたのが裏目に出たか。今日の峰にとっては、2度に渡って晶恵が“天敵”だったと言えるだろう。
 1着・中島、2着・平本。

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 中島の足については、「全部の足がトップ級」という言葉で十分だろう。しいて挙げればストレート足がトップとは呼べないが、優勝戦に残った面々はすべて出足型で、スリット同体から一撃でやられるような相手は見当たらない。ならばモノを言うのは出足、行き足、回り足、出口からのレース足。ここはほぼ間違いなくすべてトップであり、インからターンミスさえなければ90%以上優勝は堅いとお伝えしておく。

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 そして、今日の“第2レース”に見事な“インモンキー”を繰り出して優出した平本だが、私の現状の見立ては「B」の中堅ど真ん中……出足の強い面々ばかりが揃った明日のファイナルで、今日と同じような芸当を演じることは、たとえ2着でも奇跡に近いだろう。ちなみに私は、『BOATBoy』6月号に「今年のオールスター優勝戦は6号艇が優勝する。だから⑥アタマ舟券で勝負する」などと書いており、明日は玉砕覚悟で平本アタマを買うつもりだ。できれば、パラ券で許していただきたい(笑)。
(text/畠山、photos/シギー中尾)