一撃パワー差し
10R
①秦 英悟(大阪)08
②平本真之(愛知)14
③桐生順平(埼玉)17
④前本泰和(広島)20
⑤松井 繁(大阪)15
⑥丸野一樹(滋賀)09
穏やかな枠なり3対3のスリットから迫力満点に攻めたのは、なんとF2持ちの松井だった。暮れの地元GPに参戦するにはほぼほぼ優勝しかない身の上、今節の自慢の行き足~伸びを研ぎ澄まして1着=明日の好枠を狙いに行ったのだろう。惜しくもその猛攻は3コース桐生にブロックさせたが、その意気やよし。来年も王者を侮ることはできない、と改めて肝に銘じさせる5コース猛攻だった。
桐生が松井を止めてセンター水域がゴチゃついている間に、実戦はトップスタートで逃げる秦vs2コース差し平本の一騎打ち。ターン出口では秦が断然有利な態勢に見えたが、そこからの平本の行き足がエゲツない。
内からグングン伸びて伸びて、スリット裏で秦を完全に捕えきっていた。秦49号機の足も今節屈指と評価しているが、ことパンチ力に関しては平本27号機がはるかに上だった。
「エンジンのおかげです」
レース後に本人も吐露したとおり、絵に描いたようなパワー差しでファイナル好枠をGET。昨日の6着の借りを返しきったかどうかは微妙だが、明日もスリット隊形次第では自力攻めで頂点に立つだけのパワーがある、とお伝えしておく。外枠に回る秦は、平本など他の選手に攻めに連動してどこまで展開を鋭く突けるか。49号機も、ツボにハマればバック突き抜けるだけの底力は持っている。
『ハカイダー』まくり
11R 並び順
①濱野谷憲吾(東京)08
③深川真二(佐賀) 18
⑤江口晃生(群馬) 14
②辻 栄蔵(広島) 06
④深谷知博(静岡) 06
⑥馬場貴也(滋賀) 08
一般戦も含め、今日イチ展開がしっちゃかめっちゃかになりそうな乱戦カード。スタート展示からスロー①③⑤/ダッシュ②④⑥が鮮明に分かれ、スリット次第でどっちのブロックが勝っても不思議じゃない隊形となった。3連単オッズは①③⑤が30倍で②④⑥が36倍! SG準優では超レアな「二分戦」だ。
そして、いざ本番でその優劣を大きく後者(偶数艇ライン)に引き寄せたのは、赤城のインファイター江口の飽くことなき闘争心だった。スタ展よりも、さらに過激なオラオラの前付け。通常、スタ展で内艇に強く反発された場合、我が身の可愛さもあって本番はより穏やかな進入になることが多い。だが、この男にそんな常識は通用しない。ゴリゴリ×2の猛攻を選択し、濱野谷・深川も負けじと抵抗して3艇の起こしは80mを切っていた。
一方、ダッシュ3艇はピットに接触するほど深く深く艇を引き上げた。嗚呼、眩暈が起きそうな最終隊形。絶好のチャンスと見た偶数艇ラインは長い長い助走を怯むことなく直進し、↑スリット隊形で勝負あったと言いきっていいだろう。
スタートをほぼ同じだけ張り込んだイン濱野谷も、節イチのパワーを誇る深川も、まったく抵抗できない。ボートレースの1着は【選手の実力の利・コースの利・パワーの利・スタートの利・スリット展開(進入隊形)の利】のどれか、または複数の要素で決まるのだが、この鉄火場にコースの利とパワーの利が介在する余地はなかった。
4カドからコンマ06の忍者・栄蔵が一気に突き抜け、あたかもイン逃げのように1マークを先制する。同じく5コースからコンマ06の深谷が、あたかも2コース差しのようにバック突き抜ける。ただ、本来の2コース差しとわずかに違ったのは、実物のイン濱野谷の捨て身の抵抗を浴びた部分だ。スリットからの勢いも加速度も違う深谷が接触しながらも切り抜けたが、このチョイ競りがなければ間違いなくバックで先頭まで突き抜けていただろう。
昨日も書いたように、辻の相棒50号機(2連率30%)は【ピストン2・リング4・シリンダーケース・キャリアボデー・クランクシャフト・キャブレター】という恐るべき部品交換ラッシュで、まったく別物のモーターに変身した。人造エンジン『ハカイダー』。このフランケンシュタインが優勝戦のパワー相場ではどのランクに位置づけるべきか、私はまだまったく分かっていない。今日がパワー不問の展開決着だったから。それでも、前検初日にワーストと揶揄されたこのモーターとは天地ほども違うレベルであることを、改めて肝に銘じる必要があるだろう。
仕上がった!
12R
①峰 竜太(佐賀) 10
②白井英治(山口) 08
③古澤光紀(福岡) 11
④山口 剛(広島) 09
⑤松田大志郎(福岡)11
⑥上野真之介(佐賀)10
てんやわんやの11Rと打って変わって、花形スター峰を擁するこのメインイベントは超穏やかな枠なり3対3で落ち着いた。6艇すべてがたっぷり助走をとって、スリット隊形は↑御覧のとおり美しいまでの横一線。
こうなれば、選手の実力とコースの利が大きく物を言う。インコース峰が1マークを先取りし、2コース白井が例によって俊敏に差して、バック直線は早々に両雄の一騎打ちモードに突入。峰の快速インモンキーはわずかにターンマークを漏らしていたが、白井の追撃を許すほどのミスではなかった。
そこからだ。10Rの平本のように、白井が出て行く出て行く! 9R後のスタート特訓でも白井が出足~行き足の部分で峰を圧倒しているように見えていたから、今日の白井38号機は昨日までとは別物と断言できるほどに仕上がっていた。元より三島敬一郎が高く評価していたモーターが、5日目にして完全覚醒したのだ。
「間違いなく、今節でいちばん良いです。全部の足が上向いた」
レース後の白井の言葉も明るく弾む。「悪くはないが回転が合わせきれない」というコメントが多かった今節、この大一番でど真ん中のストライクに持ってきたのは流石の一語。もちろん、明日も今日と同じ足を維持できれば、1号艇の平本27号機、2号艇の栄蔵ハカイダーにも十分に対抗できるパワーとお伝えしておきたい。
一方、山口との2着争いでも苦戦を強いられた峰10号機は、今日は合わせきれていなかった可能性が高い。白井が良すぎたのか、峰が悪すぎたのか。今晩からそのあたりも検証しつつ、明日のファイナル全体のレース展開を思い描く必要があるだろう。現在のボートレース界で最強レベルに立つふたりなのだから。(photos/シギー中尾、text/畠山)