BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――さあ、2018最後の決戦

 今日は気温がぐっと上がった。グランプリの住之江も例年より相当に暖かいという手応えだったが、今日の平和島はさらに暖かい。温度計は15℃を指していたが、これは住之江でも見なかった数字だ。

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 というわけで、選手たちは前検で走った手応えについて、一様に「重かった」と口にしている。全員の会見に立ち会えたわけではなかったが、次々にその言葉が出てきた。前操者がこれより低い気温に合わせて調整していたなら、重くて当たり前だ。
 評判機の10号機を引いた中谷朋子も、第一声が「重たかった」である。ただしこれは直線の足色についてで、旋回に関しては「めっちゃ押す」。好感触だ。さらには「調整しない」というから驚いた。中谷といえば、徹底的に調整を続け、ピットではいつも走っているイメージ。それが今回は、ノーハンマーかも、なのである。実は10号機のペラにはヒビが入っていて、叩くと壊れてしまう可能性があるようだ。それを、普段は“ギリペラ”の中谷がどうするかと思っていたのだが、「調整しない」なのである。つまり、それくらい雰囲気はいいのである。

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 もうひとつの注目機である56号機を引いた松本晶恵は、「正直わからなかった」とのこと。今日はどの選手も試運転の時間をあまりとれなかったので、同様の感想は他の選手も口にしている。たとえば山川美由紀は、長嶋万記とのみ足合わせをし、長嶋よりは分が良かったらしいが「長嶋さんとしかやってないから、実際はわからない」という意味のことを口にしている(長嶋は反対で「山川さんより分が悪かったが……」だった)。ということは好感触を口にした中谷はかなり良さそうだが……。松本は「スタートが届きすぎる」と言っていて、これは他の選手があまり口にしなかったものだ。逆に思ったより届かないというコメントのほうをよく聞いた。重たくても届く、というのはこれも好素性の証明ではないか。こちらの評判モーターもやはり悪くはなさそうだ。

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 とにかく、明日は気温が下がるという予報なので、調整は改めて明日の朝から、ということになるだろう。寺田千恵は「平和島は前検であわてるとろくなことがない」と、百戦錬磨らしい心構えも述べている。前検とレースではまるで違うことが多々あるそうで、前検の手応えに焦って調整をしても逆効果になったりするようなのだ。

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 それでも、すでにペラ室に陣取ってハンマーを振るっている選手も少なからずいる。賞金ランクトップで堂々乗りこんだ小野生奈もその一人。シリーズ戦のエンジン吊りには、常にプロペラ調整室から駆けつけている。しかもわりとギリギリのタイミングで。いつも元気いっぱい、真っ先にリフトに駆けつけることが多い小野だから、これはなかなか珍しい光景。賞金トップの責任感みたいなものを感じたりもする。

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 竹井奈美はかなり強くペラを叩いていた。ペラの形が自分が普段乗っている形とまるで違うそうだ。それでも、前検の感触がいいのであれば考えたであろうが、足的にも目立たず、さらに乗りやすさがないとなれば、まずは自分の形に叩いてその反応を知りたいところだろう。気温が冷える明日、試運転に出てみて、どんな感触を得るのか。場合によっては、明日は忙しい1日を送ることになるかもしれない。

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 プロペラ調整に関しては、日高逸子がどうするかも気になる。ついているペラは「最近はやりの形」。フライホイールの仕様が変わり(通称:黒ホイール)、回転を上げる調整をする選手のほうが対応が早い、という評判で、その対応に苦慮した選手が一時成績を落としたりもしていた。つまり、日高のペラも回転が上がる形になっていたということだ。問題は、気温が下がる明日。今日以上に回るのは必至だから、それがどんな足になるのか明日にならなければわからない。日高も忙しい一日になる可能性があるな。

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 シリーズ組。クライマックス組がやってくると、注目はどうしてもそちらにもっていかれてしまうわけだが、シリーズ組も奮闘しているぞ。
 11R快勝の関野文には、大阪支部の先輩が笑顔で声をかける。先の三国レディースvsルーキーズでも、高橋淳美や五反田忍と話し込んでいるのを何回も見ている。高橋は関野のお父さんと同県同期ですね。女子のなかでもひときわ小柄だが、ピットでの様子も元気いっぱいだ。ここでおおいに名を売ってほしい。

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 鈴木成美、土屋実沙希が長嶋万記と輪になってペラを叩く姿があった。土屋はこういう舞台を初めて体験するわけで、長嶋とは女子戦などで一緒になったことはあるだろうが、今回ここにいる長嶋先輩はそのときとは違う立場で戦う存在。そばにいるだけで学ぶことは多かろう。何年か前、JLCの番組でご一緒したとき、夢はSG優勝ときっぱり語った土屋。その足掛かりを、この平和島で見つけてほしいです。

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 本来ならクライマックスにいたかったはずの田口節子は、遅くまで試運転をしていた。シリーズに入ればもちろん格上だが、それで気を緩めるなんてことがあるはずがない。切り上げたあとは森岡真希と真剣な顔つきで話し合う場面も。ここまで着をまとめてはいるが、まだ1着がない状況。今日の試運転は突破口になっただろうか。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)