11R発売中のこと。若手を中心に、ボートリフトに選手がわらわらと集まり出した。何かと思えば、試運転を終える選手のエンジン吊り。そう、今日はこの時間帯まで試運転を繰り返す選手が実に多かった。3日目を終えて、明日は勝負駆け。団体戦も後半戦を迎える。少しでも上積みを、の思いも強まるわけだ。
試運転組の大半はレディース。女子選手が遅くまで試運転をしているというのは、レディースチャンピオンなどでもお馴染みの光景だ。五反田忍、茶谷桜、西坂香松、清水さくら、土屋南といったあたりが、続々と試運転を切り上げピットに帰還。そのたびに若手たちがボートにさーっと群がって、手際よくエンジン吊りをヘルプする。やがて、試運転選手が若手たちに「ありがとうございましたー!」と声をあげる。そんなシーンが何度も何度も繰り返されたわけだ。
レディースに混じって、岩橋裕馬もあがってきた。彼の周囲にも同じように選手が殺到する。エンジン吊りの面々はたいがい岩橋にとっては先輩なので、岩橋は丁寧に頭を下げる。年齢でいえば、デビューの遅かった岩橋は30歳と年上になるわけだが、ボートレーサーの世界は登番優先。岩橋も年下の先輩たちに礼を尽くすわけである。
水面が静かになっても、リフト前の若手たちは動かなかった。まだ試運転をしている選手がいるのかな、と眺めていたら、樋口由加里がゆるゆるとデッドスローでリフト前にあらわれた。リフト揚降の係員さんがリフトを降ろすと、樋口は「まだです」と一言。そしてリフト前の選手たちに向かって、「足合わせ!」と声をかけた。
すると、エンジン音がブルルンと聞こえて、松尾充登場! 松尾は先に単走すると、2マークで待ち構えた樋口に合わせて併走し始めた。樋口は松尾が走り出すのを待っていたのだ。結局、足合わせのあとに松尾はさらに単走で1周。最後に試運転を切り上げたのは松尾となった。今日の6着大敗を明日帳消しにするべく、必死な調整&試運転を続けた。成果は出るか!?
さあ、団体戦。11Rは男子内枠、女子外枠ながら、小野生奈が1着、大豆生田蒼が2着と、レディースがルーキーズをぶち抜いた。今日は全体的に内寄りが強かったわけだが、終盤に来て外からの攻撃が決まった。
レース後、紅組の面々が次々にねぎらいの言葉をかけていった相手は、今井美亜だ。4カドの今井はスリットでのぞくや内に攻め込んでいき、抵抗を受けながらもまくりを放っている。これで生まれた差し場に飛び込んだのが小野と大豆生田。レディースのポイント奪取に貢献したのは美亜ちゃん、アナタよ!というわけだ。今井自身は5着に敗れてしまい、決して納得のいく表情ではなかったのだが、先輩たちに声をかけられて次第に笑顔が深まっていった。海野ゆかりは、よくやったとばかりに肩をポンポン。団体戦ならではの光景だろう。これが団体戦でなければ、今井としてはひたすら悔しい一戦だったわけだが、団体戦の妙を生むことができた、すなわち紅組に貢献できたことで少しは癒されただろうか。
そして12Rは男子が意趣返し! 鈴木雅希が4カドからイン長嶋万記、3コース遠藤エミの強力布陣を一気に飲み込んだ。さらには外枠の竹田和哉、石丸海渡も引き連れて大穴を叩き出したのだ。前半では1号艇で敗れて悔しがっていた鈴木。その借りを返し、さらには白組に大貢献したことで完全に憂さは晴れた! こうやってみると、内枠外枠分離のブロック戦では4号艇あるいは4コースが団体戦のカギを握るケースも少なくないわけですな。明日は勝負駆けでもあり、4号艇で勝負駆けに臨む、たとえば松山将吾や渡邉翼、渡辺千草、浜先真範といったあたりは気合のまくり勝負があるかも!? もちろん5日目以降も4コースの動向には気をつけておきたい。団体戦、盛り上がってまいりました!(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)