BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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大接戦に大盛り上がりの優勝戦ピット

 まずは10Rだ。
 別記事にあった通り、ルーキーズは特別選抜戦のどちらかでポイントを獲らないと団体優勝が消滅するという状況だった。ただし10Rは内3艇がレディースで、白組が4~6枠と条件は厳しい。ここを枠の利でレディースが獲れば、11Rは崖っぷちの戦いということになる。

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「よっしゃーっ!」
 若々しい男の声がピットに響く。4カドの井上忠政がのぞいたスタートから攻め、ぽっかり空いた差し場に金児隆太が突っ込んだ。インの小野生奈はなんとか逃げ粘り、池田明美も2番手争いに持ち込んだが、2マークで金児が2番手、井上が3番手を獲り切った。そして、その時点で浜田亜理沙はやや離れた6番手。このままいけば4ポイントは白に入ると、ピットにいたルーキーズが盛り上がったのだ。そして、団体優勝のゆくえが優勝戦に持ち込まれると確定した瞬間でもあった。最後の最後まで勝負は終わらない!

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 11Rは上位3着をレディースが独占。8ポイントを獲得している。しかし、これは団体戦の趨勢にはあまり影響を与えない。もし優勝戦をレディースが獲れば大差での快勝、ルーキーズが獲れば逆転勝ち、という状況を作ったに過ぎない。ということもあってか、戦った選手もピットの選手も、特に盛り上がりはなし。みな粛々とモーター返納作業を行なっていた。

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 さあ、優勝戦だ。とにかく、ここでポイントをゲットしたほうが団体優勝! といっても、やはり優勝戦を戦うメンバーは、まず己の優勝のために全力を尽くす。展示ピットにボートを移したあとは、みな一様に気合のこもった表情。最後に展示ピットにボートを入れたのは塩崎桐加で、できうる限りギリギリまで、プロペラと向き合っていたわけだ。逆に真っ先に入れたのは初優出の澤田尚也。前半ピットでは緊張してるかもしれないと書いていたわけだが、レース直前になると実に落ち着き払っていた。

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 レースは、松尾拓がインからきっちり逃げ切り、差した竹井奈美が2番手追走。そして、2番差しとなった吉川貴仁が3番手を走り、その時点で「よしっ!」という声があがっている。声の方向を見たら、豊田健士郎と廣瀬篤哉がモニターを見ながら笑顔を見せていた。1着と3着を獲っておけば、ルーキーズの勝利である。

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 ところが、にわかにピットがざわつき出す。4番手だった塩崎が吉川にぐっと迫り、逆転の目が出てきたのだ。その瞬間、嬌声をあげたのは山下夏鈴!「塩崎さーーーーーーーーーーんっ!」。山下は矢も楯もたまらず、試運転用の係留所に駆け下りていく。少しでも近くで声援を送りたかったのだろう。それからピットにとどろくのは山下の甲高い塩崎へのエール。そして3周2マーク、山下の声援が届いたかのように、塩崎はさらに吉川を追い詰める。

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 このとき、5番手には大瀧明日香、6番手に澤田尚也。つまり、吉川が逃げ切れば1着3着6着で17ポイントとなり、2着4着5着で14ポイントのレディースを上回るが、塩崎が逆転すればルーキーズは1着4着6着で15点、2着3着5着でレディースが16ポイントとなる。この地元3番手決戦が団体優勝のゆくえを決める! こんな大接戦、過去3回にはなかったぞ。そしてゴール。豊田が「10万円が……マジで!?」と敗戦を覚悟して呟いた。そう、それくらいに際どかった! 対岸のビジョンには「ゴール判定中」の文字。どっちだ、どっちなんだ……。

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 エンジン吊りに出てきた選手たちも、腰をかがめてビジョンを注視。判定はまあまあ長く、選手たちはやきもきしながらビジョンを見つめていたが、やがて3着には「3」と記された。よーーしっ! 沸きに沸くルーキーズ。あーーーーっ! 天を仰ぐレディース。団体優勝は、大逆転でルーキーズだ! 4回目にして、こんなに盛り上がったピットは初めてです。

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 個人優勝の松尾拓は、白組団長でもある。まずは勝利を祝福されていたが、その後ろで起こっていたことを伝えられて、吉川に向かって親指を立てた。よく粘ったぞ、という称賛であろう。自身の勝利に対しては、安堵の思いも強かったようだ。JLCのピット解説を一節間務めていた村田瑞穂さんに祝福され、ふっと頬を緩めた瞬間があった。三重支部の大先輩の笑顔は、きっと松尾の心をほぐしたに違いない。

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 というわけで、これで団体戦の通算成績はルーキーズ3勝、レディース1勝となった。今節は終始ルーキーズをリードしてきたレディース陣営は、これで黙っているわけにはいかなくなった。次回は5月丸亀、紅組はさらに気迫の戦いを見せてくれるだろう。斡旋はもちろん未定だが、誰が出場することになっても、この結果を見ていた女子レーサーたちは闘志を燃やすに違いない。次回もますます楽しみが増しそうだぞ!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)