10Rのファンファーレが鳴るころ、ピット内のモニター前に選手たちが集まってきた。このときはほどんどがルーキーズの面々。スリットを過ぎると、2コースの倉持莉々がヘコんだ態勢で、イン松尾充と3コース佐藤博亮の一騎打ちになりそうな隊形。ルーキーズたちはにわかに「おおっ」などと声をあげていた。すると、中田達也が叫ぶ。
「よしっ、佐藤さん、行ける!」
中田のエールに後押しされたかのように、佐藤のまくり差しがズバリ。「よーし、佐藤さん!」と中田のテンションは上がっていった。佐藤と中田は113期の同期生。ただし佐藤のほうが5歳も上なので、中田はさん付けで呼んでいるのだろう。
団体戦ではあるが、同時に個人優勝も争っている。そして、同じチームであっても、やはりそれぞれに肩入れする選手(同期、同支部など)はいる。まあ、佐藤と松尾のワンツー隊形で、白組にポイントが入るのが確実な状況だったこともあって、中田も同期の声援に回ったということだろう。
9Rはレディースがワンツースリーで圧勝。逃げ切ったのは富樫麗加だ。レディースで上位独占を決めたというよりは、素直に勝ち切ったことを喜んでいたようだった。地元戦ですしね。対戦相手に頭を下げて回る際にも、笑顔があふれていた。
レディースが上位を占めることができたのは、なんといってもキャサリン……いや、谷川里江の道中逆転。黒野元基が1周2マークで転覆しており、その後周回を重ねれば隊形は固まり切ってしまうわけだが、2周1マークで巧みに浮上した旋回はさすがの百戦錬磨なのであった。レース後は、装着場でボートを愛おしむように磨いている姿が。長年続けてきているルーティンなんでしょうね。
というわけで、9Rの奮闘がありつつも、初日の団体戦はレディースが苦戦傾向。ルーキーズ6点、レディース2点と差がついて2日目を迎えることになった。三国は、初日4対4のイーブンでしたね。三国以上にルーキーズがリードしているわけだが、手応えとしては11Rでの渡邉優美の逃げ切りとか、6Rの宇野弥生の勝利などもあって、レディースが数字以上に健闘している感じもある。なにより、9Rは初のレディースワンツースリー(三国ではルーキーズのワンツースリーは何回かあった)。明日以降のレディースの巻き返しは充分にありそうに思える。女子ファンは明日から思い切り応援してくださいね!
さてさて、今日も江戸川ピットだからこその珍しい光景を。昨日は「空飛ぶボート」と題して、ボートを引き上げるときの江戸川の特殊性を記したわけだが、考えてみれば「着水」時も当然、空を飛ばして水面へと運ぶわけですよね。他のレース場では、選手がボートリフトにボートを運び込むわけだが、江戸川ではクレーンの降りてくる場所にボートを置いて、ボートが運ばれるよりも先に水面に向かって自艇を待ち構えることになるわけだ。初参戦の選手は面食らうかもね。
で、そういう運搬方法をするので、江戸川のボートには他場のものとは違う部分が見つかるのである(そもそもの規格も他場のものとは違うのだが)。クレーンのフックを引っかける金属が取り付けられているのだ(写真)。これがボート後部の両側についていて、2本のフックを引っかけられるようになっている(ボート前部は取っ手のような部分にクレーンを引っかける)。レース後のエンジン吊りはもちろん、レース間にも着水に向かう選手がいるため、見ていると艇運係の方たちは動きっぱなし。レース中くらいしか休みがないんじゃないかという感じだ。選手も大変だろうが、艇運さんたちも大変。巨漢の取材者としては、ただただ邪魔にならないように気をつけるとしよう。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)