BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――勝負駆けへの思い

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 青山登さんとくっちゃべっていると、鶴本崇文が通りかかった。鶴本が新鋭リーグを走っていた当時、青山さんはJLCでまさに新鋭リーグのピットレポートを担当しており、この世代には特に思い入れが強い。だから、青山さんも激励に力が入る。「頑張れよ! 今日は何着だ?」。勝負駆けの条件を尋ねる。ボーダーを6・00とするなら、鶴本は4着条件。ただ、6号艇での出走ということで、鶴本は不安そうな表情を見せた。それを見て青山さんの口調にはさらに力がこもった。「4着と思って行ったら5着になる! もっと上を狙っていけ!」。なるほど、4着を狙って走る選手などいるわけがないし、全員が1着を狙って走っても望みどおりに1着を獲れるのは1人だけなのだ。青山さんの力強い言葉に、深くうなずく鶴本であった。

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 1R、湯川浩司が1着。ピットに戻ると、まずは安堵の表情を見せた。石野貴之に声をかけられて、さらに表情が緩む。1着を称えられたのだろう。しかし、湯川の表情が一瞬だけ、くっと引き締まった。「まだ1回だけや」。今日の湯川の条件はピンピン。まだ第一関門をクリアしただけなのだ。望みがつながったことは安堵を呼ぶが、まだ気を緩めるわけにはいかない。湯川は勝利者インタビューから帰ってくると、速攻で次走への準備を開始。2R終了後すぐに、ボートをふたたび水面に下ろすのだった。

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 2着の上野真之介は、2着3着条件。後半のノルマを少々楽にする結果となった。ただ、1周2マークで先頭を走っていた山川美由紀に突っ込むかたちとなり、軽く接触もしている。これで山川は流れて、湯川と上野が逆転したわけだ。それもあって、上野は少々不安そうな顔であがってきている。そんな上野に対して、師匠の峰竜太が身振り手振りを加えながら、“指導”らしきことを話していた。峰竜太の旋回講座を身内として聞くことができるのはなんとも贅沢だし、そしてこのレースへの反省にもなるだろう。ちなみに不良航法はとられていない。後半は6号艇、峰の教えをさっそく糧にできるかどうか。

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 整備室を覗き込んだら、平本真之が本体整備をしていた。4日目にして、いよいよ勝負をかけてきたか。その後はさらにギアケースも調整。新人の頃から世話になってきたであろう整備士さんと話し合いながら、入念に作業をしていた。今日の平本のノルマは4着。しかし、先ほどの話ではないが、4着で良しとは考えていないはずだ。この整備がどこまでパワーを引き上げてくれるか。出番の7Rまではさらに調整が進められるだろう。

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 ところで、艇界きってのボクシング通といえば篠崎仁志。何年か前にいちばん期待できる日本人ボクサーとして井上尚弥の名前をあげていたのだから、その慧眼、含蓄ともに本物である。というわけで、昨日の村田諒太の勝利について、その見解を訊いてみたかったのだが……、1号艇での出走を控えている今日、とてもそんな話題を振れるような雰囲気ではなかったのであった。当たり前か。仁志はここで1着を獲っても、6・00にはまったく届かない。勝負駆けとしては終わってしまっている状況だ。しかし、勝負を投げることがあるわけもなければ、この1号艇は必勝である。今日は準優行きを争う一日であるのは確かだが、しかしそうでなくとも全員がしっかりと勝負を戦うのである。というわけで、8Rを逃げ切ったら、その後にでも話を聞いてみよう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)