BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――仲間の後押し

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 12Rを控える福田宗平が装着場を歩いていると、ペラ室にいた上條嘉嗣が飛び出てきて、福田の肩をガッと抱きかかえた(写真は別のシチュエーションです)。その時間帯は装着場にほとんど人っ気はなく、静かなピットに二人の笑い声が響く。上條が肩を抱きながら福田を振り回すようなかたちで、これはどうやら手荒い激励のようだった。そこまでオール3連対の福田、6号艇の12Rで着をしっかりまとめれば、準優にグッと近づくことができる。大阪軍団のリーダー的存在である上條は、それをおおいに期待しただろう。ニコニコ顔で言葉をかける上條に、福田もまた爽快な笑顔で応えるのだった。
 結果は4着。それでも暫定5位につけて、明日は5着勝負となる。健闘を見せた福田を、上條をはじめとした大阪勢が笑顔で出迎えた。なんたって、3日目終了時点では大阪勢のなかで最上位。明日の6Rも、福田は仲間の後押しを受けて戦うだろう。

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 激戦となった11Rで浜先真範が5着。その浜先を出迎えた同支部の大上卓人が、エンジン吊りが終わったあとも浜先に言葉を投げかけていた。身振り手振りを加えながら話す大上は、どうやら道中の走りについて、アドバイスを送っていたようだ。浜先は残念ながら準優行きはかなり厳しくなっているが、しかしGⅠの舞台で先輩とともに戦うすべてが血肉となるのは間違いない。今日の大上先輩の言葉が、きっと明日につながるのだ。この経験はかなり大きいと言える。

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 JLC専属解説者の青山登さんが今日からピット入り。その姿を見つけた関浩哉が、そそくさっと歩み寄って深々と頭を下げた。群馬支部の超大先輩に、礼を欠くことは許されない。来てたことに気づきませんでした、などと言うわけにはいかないのだ。
「(勝負駆けには)残ったのか?」
「はい、2着2本の勝負です!」
「獲れ!」
「は、はいっ!」
「選手紹介で優勝しますって言ってただろ!」
「は、はい……」
「準優くらい乗れ!」
「は、はいっ!」
 遠目にはおっかないオジサンが若い子を脅してるようにしか見えない(笑)。もちろん関も、青山さんがコワモテだけど優しいのは知っている。勝負駆けを前に、いい喝を入れられたということだろう。明日は気合で走る!

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 その青山さんには近江翔吾も挨拶に訪れている。青山さんが新鋭リーグを担当していたころに気安い関係になったようだ。とにかく機力が厳しいと嘆く近江に、青山さんは自分の現役時代の体験談を話し聞かせていた。青山さんがバリバリだったころとはもろもろ状況が違うわけだが、近江にとってひとつのヒントになったに違いない。「明日はいろいろ試してみます」と意を強くしたようだった。
 その近江は11Rで3カドに引いて2着。しかし、「今日は悔しくて寝られないですよ」とレースぶりをおおいに悔やんでいた。インを奪った木下翔太に対して、2コースとなった1号艇の春園功太がツケマイを放っていき、近江には絶好の展開になっている。近江もチャンスと差しハンドルを入れたが、少し大事に行き過ぎたことで4コースから島村隆幸に頭を叩かれてしまったのだ。「本当に恥ずかしいレースだった」と近江はひたすら顔をしかめる。3カドに引いたのは、展示で島村に伸びられていたため、カド受けで叩かれるのを避けるため、ダッシュをつけて対抗しようと考えたもの。その策はまんまとハマっただけに、悔しさは大きい。実は前検の前日、福井に前乗りした際、僕は近江に目撃されていたらしい。近江がちょうど到着したとき、目の前に酔っ払ってフラフラしている僕がいたそうなのだ。まったくもってお恥ずかしい姿をお見せしたものだ……と話したら、「いや、今日の僕のレースより恥ずかしいものはないですよ」と近江。青山さんも言っていたが、その思いが必ずや糧となる。眠れない夜も、近江をより逞しくする時間になるのかもしれない。

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 さてさて、3日目を終了して、予選トップに立ったのは永井彪也! SG出場経験もあるのに失礼だが、戦前はどちらかといえば伏兵サイドの存在だったと思う。12Rは、村岡賢人との2番手争いに競り勝ってポイントアップ。出迎えた東京勢はみな、満面の笑顔であった。東京勢では佐藤隆太郎も3位につけて当確、北山康介と今泉友吾も18位圏内で、宮之原輝紀が20位につける。東京のファンとしては、若き力の台頭は絶対的に望んでいるもの! 仲間と刺激をし合って、このヤングダービーを駆け抜けろ!(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)