BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――大敗は許されない第2戦

f:id:boatrace-g-report:20191220155932j:plain

 地上波放送のMCを務めている元サッカー日本代表の武田修宏さんが、ピットでの取材を終えての帰り道ですれ違った際、「峰さん、元気ないよ」と言う。峰竜太の元気がない? それはたぶん、元気がないんじゃなくて“入ってる”んですよ。そう言ってピットに向かうと案の定。特に感触がいいときに多いと思っているが、ここぞというときの峰は朝から“入って”いて、声をかけてもどこか上の空、ということがよくある。おそらく緊張もあるのだと思うが、妙に物静かでもある。それはレース直前に限らず、早い時間帯から、だ。トライアル初戦を終えて、さらにスイッチが入ったということだろう。

f:id:boatrace-g-report:20191220160018j:plain

 もっとも、それは峰に限らない。瓜生正義も、いつも通りの端正さをたたえながら、顔つきが違っている。初戦6着の瓜生の場合、今日が早くも勝負駆けだから、なおさら緊張感が漂う。といっても、関係者に声をかけられるたびに丁寧に受け答えしているのだが。そこの瓜生らしさは失われない。

f:id:boatrace-g-report:20191220160058j:plain

 やはり初戦6着の菊地孝平は、腕を組んで考え込む様子が見られた。菊地の思索モードはまあいつものことだが、今日は腕を組んでいる分さらに思索が深いように錯覚してしまう。いや、錯覚ではないか。調整の方向性はもちろん、6号艇の今日は戦略も練りに練って、ということになるだろう。そのとき菊地がどちらをより考えていたかはわからないが、切れ味抜群の思考は今日はさらに研ぎ澄まされることになるだろう。

f:id:boatrace-g-report:20191220160142j:plain

 整備室では井口佳典が本体整備だ。2ndを戦って、ベスト6との機力差をさらに実感したか。井口は初戦4着、今日6着となればファイナル行きが相当に厳しい状況となってしまう。もちろん6着を避けられればいいということではなく、勝ってゴールデンヘルメットに近づくために整備を重ねる。井口の闘志にも火がついている。

f:id:boatrace-g-report:20191220160222j:plain

 池田浩二はギアケース調整。初戦5着だから、今日は大敗で終戦に近づいてしまう。池田が5号艇で登場する12Rは6号艇に菊地。前付けも充分あるだけに、どう対処するかもカギになってくる。黙って2戦目を迎えるわけにはいかないのだ。

f:id:boatrace-g-report:20191220160259j:plain

 白井英治は2R終了後に水面に出た。まず西村拓也と足合わせで1周走り、調整用の係留所に向かう。昨日あたりもそうだが、白井にしては始動が早い。2nd初戦を戦い、ある程度急いでの整備調整が必要と判断したか。すれ違いざまに挨拶を交わしたときの雰囲気は柔らかかったりするのだが、しかし気合はさらにもう一丁、入っているように思える。白井も今日の大敗が許されない一人だ。夜に向かってさらに気持ちは高まっていくだろう。

f:id:boatrace-g-report:20191220160400j:plain

 シリーズ組。2R、3番手争いを演じたのは守屋美穂と磯部誠。守屋がリードする展開となったのだが、3周2マーク、磯部がねじ伏せるようなツケマイを放っていった。なんとか応戦する守屋だが、態勢は明らかに磯部に分があった。ところが、くるりと回って粘った守屋は、ゴールまでに舳先を前に出した。隣で見ていた前田将太が「女子力か」とポツリ。女子力? エンジン吊りに向かっていた徳増秀樹も、坪井康晴に向かって「女子力発揮だ」。女子力って、料理がうまいとかお化粧がどうとかじゃないの?
 ようするに、軽量であることでコーナーの立ち上がりが良い、ということらしい。磯部のターンも悪くなかったのだが、立ち上がりの部分で守屋に前に出られた、ということだろう。もちろん残した守屋の技量もあるわけだが、男子と相対したときの女子には軽量という武器があるということ。女子力を駆使して、男子トップレーサーをキリキリ舞いさせるシーンをもっと見たいぞ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)