BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――今年最初のSG準優勝負駆け

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 整備室の自動ドアが左右にすーっと開いて、中からはボートを押して白井英治があらわれた。どうやらボートを持ち込んでの調整を行なっていたようで、整備状況表示板をチェックすると、ギアケース調整だったようだ。白井は1着2着の勝負駆け(ボーダー6・00と想定して)。簡単なノルマではない。このあとはプロペラ調整ということになるだろうが、朝から精力的に調整をしていたわけだ。普段は寺田祥と行動をともにすることも多いが、得点トップを独走する寺田とはさすがに今日は動きが変わってくる。2R発売中には試運転も行なっていた。

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 整備室内にボートはもう1艇あって、長田頼宗のもの。これも表示板でチェックすると、キャブレターの分解点検とあった。昨日まではプロペラ調整室で姿を見ることが多かったが、2着条件の勝負駆けの今日は、さらに別の個所にも手を入れているというわけである。この勝負駆けは、なにしろ6号艇。進入も含めて、さまざまな方策を練って厳しいノルマに挑む。

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「兄貴~~~!」
 レースの発走が迫って、やや静かになっていたピットに、菊地孝平の叫びが響いた。菊地はそれまでリードバルブの調整を行なっていて、モーターがまだボートに装着されていなかった。バルブ調整を終え、モーターに取り付けて、いざ装着へ。架台を転がして整備室を出ると、そのとき装着場にいたのは作業に一区切りをつけて控室へ向かっていた白井英治のみ。というわけで、兄貴、装着を手伝ってくださいと、背中から呼び止めたのであった。普段からそう呼んでるんでしょうな。菊地は5着条件の勝負駆けだが、5着でいいというわけではない。できるだけ上位で予選を終え、準優の枠をひとつでも良くしたいわけだ。バルブ調整が当たるかどうか。

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 5R1号艇で登場の仲谷颯仁は、ピン勝負! レースまでの時間はそれほど残っているわけではないから、とにかく忙しそうに動いていた。プロペラ調整、試運転、プロペラ調整、試運転。その間には、新兵仕事もちょこちょことあるから、なんとも慌ただしい。もっとも、そのほうが妙な緊張感を抱かずに白いカポックを着られるということはあるかもしれない。

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 1R、井口佳典が差し切って1着。ゴールした瞬間、菊地孝平が「ヒューッ!」と声をあげ、平山智加は「つないだ!」と笑った。そう、井口は1着2着の勝負駆け。この1着で、後半に望みをつないだのである。エンジン吊りでは菊地が笑いかけると井口もにっこり。その後も井口にはさまざまな選手が声をかけていて、そのたびに井口を笑みを返していたが、それほど深い笑いは見せていなかった。そう、勝負駆けをクリアしたというわけではない。文字通りの勝って兜の、というやつで、気分は悪くなさそうだったが、気を緩めてはいないのだった。後半は6号艇だけに、なおさらここで安心してなどいられない。

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 2Rは石野貴之が3コースからまくり切って1着。こちらは3着4着条件ということで、これで後半は無事故完走で準優当確である。その分、というわけでもないだろうが、さまざまな選手に声をかけられながら、ヘルメットの奥では目を思い切り細める石野であった。そうは言っても、やはり後半でさらなる得点の上積みを果たし、いい枠で準優を迎えたいのは当然。その後は引き締まった顔に戻って、勝利者インタビューなどに向かっている。後半の5号艇も楽しみだ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)