BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――激戦セミファイナル!

10R 進入はドラマだ!

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「僕のミスです……」
 たしかにそう聞こえた気がした。インを奪われ、まさかの準優敗退。慰めの声をかける仲間たちに対して、徳増秀樹がぼそりと呟く。それはたしかにそう聞こえたのだ。
 西島義則は、ピット離れでのぞく格好になっている。「バナレで出ると思わなかったので、慌てて締めたんだけど(笑)」。それでも、一気にインを獲り切るようなかたちではなく、徳増も2マーク際で粘るような姿勢を見せていた。しかし、西島のインへの強いこだわりが勝った。もちろん、それが徳増の敗因のすべてではないだろうが、悔いを残す材料になったのは間違いない。その後、誰も選手の姿がない装着場で、操縦席に乗り込んでボートを磨く徳増がいた。己と向き合う時間を過ごしている、と見えた。

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 西島は2着だ。まくり差してきた金子龍介を振り切ったように見えたが、そのときに内に寄りすぎたようで、2マークはふところを開けるようなかたちになった。2着ということは、外枠での優出! 2号艇でも今日のように勝負をかけてくることは多々あるが、外枠であれば絶対に動く。優勝戦は進入から面白くなったぞ! 平時なら畠山とおおいに酒席が盛り上がる夜になるんだけど……。

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 2マーク逆転で金子が1着。ピットに戻ると、松井繁の祝福を受けて、にこにこと頭を下げていた。優勝戦は結果的に3号艇なので、隣のピットから西島が仕掛けてくるわけだが……。10R終了後の会見では「楽な進入はしたくない」と語っている。そのまま受け取れば、黙って入れることはない、ということになるわけだが、最終的な優出メンバーを見ると悩ましいところではあろう。うーん、ますます進入が面白くなりそう! 一人酒でおおいに脳内待機行動を動かすしかないか。

11R ポールポジション

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 予選トップの村田修次が逃げ切った。上平真二の強烈なツケマイを受け止めての逃げ切り。「(2コースの)吉川元浩さんに差されても仕方ないと、牽制しながら回りました」。その覚悟が、吉川の差しも上平の突き抜けも許さなかった。というより、そこまで危ないイン逃げには見えなかった。だが、村田は決して簡単な勝利とは思っていないのだ。
 カポック脱ぎ場への道のりでは、上平と肩を並べて歩くこととなった。村田は、微笑を浮かべながら上平に何かを話しかけている。上平はやはり微笑みながら首を何度か振り、村田の尻のあたりをポンと軽く叩いている。遠目だったので会話はもちろん聞こえてこなかったが、想像するとこんな感じか。
村「あのツケマイ、やられるかと思いましたよ~」
上「いやいやいや」
村「いや、マジで」
上「よく言うよ~~~(ケツをポン)」
 あくまでワタシの妄想ですが、そんなに間違っていない気がする(笑)。健闘をたたえ合う二人だったのだ。

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 優出を逃した吉川元浩は、悔し気に表情を硬くしていた。石渡鉄兵に競り負けての4着。どうも仕上がりが理想通りにならなかったようだ。吉川は12R発売中に着替えを終えてピットにあらわれている。モーターを格納するのかと思いきや、ペラを外して調整室に入った。そして、甲高い金属音をピットに響かせていた。納得のいかなかった感触の、その原因を発見したのだろう。明日のための調整でもあるわけだが、悔しさをがっしり噛み締める時間でもあったことだろう。

12R 明日は記念日

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 初日にセット交換(ピストンリング4、ピストン2、シリンダーケース)を2回、キャリアボデー交換を2回、ギアケースも交換。2日目にはキャブレターを交換。3日目にまたキャブレターを交換し、ギアケースも再度、さらにクランクシャフトまで交換した。発表される8部品のうち7部品を、モノによっては複数回も交換したのだ(残るは電気一式)。まさに大整備の日々、であった。王者がこんなにも部品交換をすることがあっただろうか。もちろん、モーターの動きが悪いと感じるから、ここまでするのである。それでいて、よくぞ優出にこぎつけたものだ。松井繁にただただ感服である。

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 2周1マークで濱野谷憲吾と競った感じでは決して負けていなかったから、それなりの仕上がりにはなっていると見る。松井も「これで行こうと決断したんだから、自分としてはこれ以上はないと思っている」とのこと。上位と言えるかどうかは別として、戦える仕上がりと納得しているわけだ。
 その王者が6号艇となったことで、やっぱり進入が面白くなったわけです。本人曰く「コースはわからないね」とのことだが、このメンバーだけに、動いたとしても何コースになるかは明言できなくて当然だ。6コースもあったりして!? 王者の思惑を明日は堪能するとしよう。

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 逃げた前本泰和は、明日は2号艇となる。西島師匠の前付け必至と理解しつつ、「2コース」と断言している。もちろんこれとて流動的だが、簡単に譲る気はないようだ。まさに仁義なき戦い! 足色的には納得しているようで、だからこそコース主張で勝負したいという部分もあるだろう。この進入争いも見ものである。
 ところで、記者会見で淡々と受け答えしていた前本が、ある質問で突如、照れ笑いを浮かべたのである。その質問とは、「明日が奥さんの誕生日」。おぉ、優勝したら最高のバースデープレゼントになるぞ。前本はハッキリと言ったね。「それを意識してます」。明日は愛妻への思いも背負って走る前本泰和! 勝ったらでっかい花束を抱えて広島に帰ってくださいね!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)