BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優ダイジェスト

鬼の刃

10R 並び順
②西島義則(広島)11
①徳増秀樹(静岡)22
③金子龍介(兵庫)17
④平尾崇典(岡山)20
⑤荒井輝年(岡山)14
⑥立間充宏(岡山)39

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 前付けの鬼・西島が大一番で隠していた刃を振りかざした。オレンジブイを超えた瞬間、腰を跳ね上げて徳増に強ツケマイ! そのままするするターンマークににじり寄り、追いすがる徳増を封じてインコースを強奪してしまった。昼の特訓もスタート展示も何食わぬ顔で穏やかな2コースだったのに……本当に、この勝負師だけには一分の油断も隙も与えてはならない(かと言って、徳増にも油断はなかったと思うのだが)。嗚呼、この津スタンドに満員のファンがいたなら、どれほどの歓声、奇声、怒声、罵声が沸き上がったことだろう!!

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 この1×2号艇の電光石火の交代劇がレースに与えた影響は、もちろん小さくなかったはずだ。望外の2コースを余儀なくされた徳増は、今節も切れまくっていたスタート勘を完全に逸した。一方のポールポジションを得た西島は、100m起こしから自慢のスーパー出足で嬉々としてスリットを通過する。コンマ11の完璧な踏み込み。

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 この内2艇のギャップを抜け目なく射抜いたのが3コースの金子だ。出足の差でさらに凹んだ徳増に、ツケマイを浴びせるような激辛のまくり差し。1マークまでに2度の“ツケマイ”を喰った徳増に、もはやファイナルに乗るだけの余力はなかった。直近イン無敵の男が、闇のように深い落とし穴にハマった、としか言いようがない。次に西島と相対する徳増は、おそらくフトコロに「鬼滅の刃」を忍ばせていることだろう(笑)。

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 バック直線からは、逃げる西島vs激差し金子のほぼ一騎打ち。激しい鍔迫り合いの末に西島が金子の舳先を斬り捨てたかに見えたが、2マークはマイシロのない小回りに。さらにハンドルをわずかに切り直すロスもあって、金子に逆転の差しを許した。インを奪いながら逃げきれなかったのは悔しいだろうが、この男に細やかな枠番勘定はいらない。明日も外枠からレバーを握りしめ、隙あらばインまで獲りきってしまうことだろう。80m起こしでも微塵の不安もない出足とともに。

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 4カドから猛攻すると見ていた平尾は、スリットで前を行く金子を叩ききれずに二番差しに甘んじた。今節の平均どおりのコンマ20。今シリーズは果敢に握って攻める平尾スタイルが何度か見られたが、B2という肩書とともに未だ払拭できない心の闇が残っているかも知れない。来るべき完全復活を待つとしよう。

土下座カウントダウン!?

11R
①村田修次(東京)08
②吉川元浩(兵庫)06
③上平真二(広島)06
④石渡鉄兵(東京)06
⑤安田政彦(兵庫)13
⑥野添貴裕(大阪)20

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 予選トップのムラッシュがインから押しきり、12Rを待たずにファイナル1号艇を確定させた。うむ。スタートは今節の平均まんまのコンマ08。1マークは上平のまくりも吉川の差しも許さない王道の逃げ。明日も同じスタート、同じターンでバック突き抜ければ、今節の村田を軽視していた私は土下座することになるだろう(←昨日のTOPICS参照)。

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 だったら今のうちに村田と村田ファンに陳謝し、明日は心置きなく村田アタマの舟券を買うべきなのか。はい、それはないっすね(苦笑)。今節は(も)負けっぱなしで穴しか買えない身の上だし、今の今になってもまだ村田32号機が盤石の本命とは思っていないから。何というか、1マークの攻防もそこから2マークまでの足色も、「明日も大丈夫!」と太鼓判を押せるほどではなかったと……多分に色眼鏡が入っていることも自覚しつつ、そういうことにしてしまいます!

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 実戦に戻ろう。内4艇が横一線のスリットから、やんわり出て行ったのは2コースの吉川だった。得意の2コースまくりもありえる流れだったが、村田はすぐには1マークに艇を寄せず、3コース上平のツケマイに艇を合わせる先マイとなった。
「上平さんのまくりだけを警戒して回って、吉川くんには差されても仕方がないと思って行った」
 レース後のコメント通り、元浩の2コース差しに絶好の展開に見えたものだが、その差しはまったく届かず。代わって4コース石渡の二番差しが軽快に引き波を超えて行った。今日の元浩33号機の出足は、私のA想定に遠く及ばなかったと言うしかない。その後の競り合いでも、ターンするごとに元浩はズリ下がっていた。スリットの行き足は上々だったから、おそらく直線寄りに偏ってしまったか。

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 では、このレースの2コースが元浩ではなく西島や前本だったら……現時点では妄想の域でしかないが、明日の同時刻にそのあたりのせめぎ合いが発生する可能性は低くない。そして、それは私が土下座するかどうかの大きなターニングポイントになることだろう(笑)。

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 上平×石渡×元浩の2着争いは、巧みなターン回りで徐々に優位を築いた上平が生き残った。2日目の段階で「31%の数字どおりの足」とやや自虐気味に話していたが、今は少なくとも37%程度にはアップしているだろう。最近の上平はモーター出しも道中の立ち回りも唸るほどに素晴らしく、今節も両方の持ち味を十二分に生かしてここまで昇りつめた、と私は思っている。ファイナル5号艇のスリット同体から自力で攻めきる足ではないから、進入争いがもつれればもつれるほど勝機が増すはずだ。たとえ6コースでも。

王者の執念

12R
①前本泰和(広島) 07
②濱野谷憲吾(東京)19
③松井 繁(大阪) 13
④太田和美(大阪) 17
⑤市川哲也(広島) 21
⑥深井利寿(滋賀) 20

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 今節の前本の最大の敵は、選手ではなくスタート勘なのかも知れない。昨日もスタート直前に上体を持ち上げ風圧でアジャストしていたが、風向きが一変した今日は50m手前から上体を上げっぱなし!

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「フライングを切ったかどうか心配で、バックではそればかり気にしてました」
 それでコンマ07となれば、かなりズレている可能性もあるな(笑)。とにかく直立不動でスタートした前本だっだが、↑スリットでの貯金と自慢の行き足をじんわり伸ばして1マークでは2艇身ほどのアドバンテージ。あとはくるりと回って松井のまくりも濱野谷の差しも寄せつけなかった。出口から後続をスーーッと2艇身ほど引き離した部分も含め、出足~行き足は今日もゴキゲンの一語。2号艇の明日は、その部分の足を活かす展開になるかどうか。なってしまえば、優勝の可能性は格段にアップすることだろう。

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 混戦の2着争いを制したのは、王者・松井だった。1周バック~2マークあたりでは濱野谷にかなり分があったが、そこから半周でその差をひっくり返してしまった。憲吾にとっては、松井のみならず4番手・太田も含めた強靭な大阪ラインとの攻防だったか。2マークでは太田の押っつけを抱いて交わしている間に内から松井が忍び寄り、2周1マークの手前では5艇身ほど後方の太田がスーッと最内に寄って憲吾の戦術の選択肢を狭めた気がしてならない。「差すと危険」と見た憲吾は連続の握りマイを放ったが、その外マイは完璧に王者に見透かされていた。

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 こうした駆け引きはともかく、2周ホームで先を行く憲吾にぐんぐん追いついて行った松井の行き足~伸びは相当なものだった。3日目あたりは勝った直後なのに「ヒドイ」というセリフを連発していた松井だが、現状はファイナルでも戦えるレベルになったと思っていいだろう。今節はピストン・リング・シリンダーケースのセット交換、キャリアボデー、キャブレター、クランクシャフト、ギヤケース……つまりは、電気一色以外の交換発表されるすべての部品を交換した王者の執念が、ファイナル6号艇という褒美につながった。その一方で自重していたスタートも、今日はコンマ13まで踏み込んだ。もちろん、優出6号艇というポジションで満足する男ではないことは、改めて言う必要もないだろう。(phtos/シギー中尾、text/畠山)