BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

優勝戦 私的回顧

無人のカーニバル

12R決勝戦
①吉川元浩(兵庫代表) 17
②今垣光太郎(石川代表)09
③峰 竜太(佐賀代表) 06
④萩原秀人(福井代表) 12
⑤田村隆信(徳島代表) 13
⑥瓜生正義(福岡代表) 13

f:id:boatrace-g-report:20200712183900j:plain

 稀代のお祭り男が豪快なまくり差しで難敵を撃破。真紅の大優勝旗を福井支部から佐賀支部へ、力ずくで転送する勝利だった。うーーーん、強い。今年の峰は20シリーズに参戦して16優出10V(うちGI2V、GⅡ1V)。この枠なり主流のご時世で、1着率はなんとなんと約57%。SGやGIを主体としながらのこの数字は、モンスター級と言っても言い過ぎではないだろう。

f:id:boatrace-g-report:20200712183930j:plain

 今日の最大の勝因はスタートだ。インの吉川を半艇身ほど置き去りにするコンマ06、しかもフルスロットル!(本人談) 内の今垣もしっかり踏み込んていたためすぐには攻め込めなかったが、苦しい態勢から先マイを目指す吉川&勝機と見て差しに構えた今垣を視野の片隅に入れながら、例によって異次元のターンスピードでふたりの間を切り裂いた。

f:id:boatrace-g-report:20200712183957j:plain

 この一連の流れを意のままに進捗できたのは、やはりスタートの利があればこそ。吉川も同体ならば窮屈な差し場しかなかったし、最大の脅威だった萩原18号機も同体ならばソッチの応戦にも大なり小なり手を焼いたことだろう。
峰「ゼロ台で入ってると思ったので、握りっぱなしでした♪」
MC「コンマ06でした」
峰「わっ、思ったより早い!」
 ってことは、峰は07~09の間と確信して握り続けたわれか(笑)。まあ、ターンスピードのみならず、この能天気なまでのクソ度胸がお祭り男たる所以だろう。

f:id:boatrace-g-report:20200712184025j:plain

 一方、4カド萩原18号機は地元レーサーとしての責任もあって?コンマ12まで。さらに、今日は気温、気圧、風向きなど気象環境がかなり変わったせいか、昨日までのスリットから突出する伸び足もやや迫力を欠いていた。ここ2カ月ほど18号機のストレート足に惚れ込んでいる私としては残念な結果ではあったが、これもボートレース。また次の節で18号機がどんな挙動を魅せてくれるのか、楽しみに待つとしよう。でもって出足・回り足を重視する萩原にとって、今節の相棒は「じゃじゃ馬」以外の何物でもなかったはず。6日間に渡って押したり引いたり機嫌を取り続けたハギちゃんに、心の底から「お疲れさま!」と労いの言葉を送りたい。

f:id:boatrace-g-report:20200712184102j:plain

 さてさて、最近のビッグレース同様に今節の甲子園も売れまくった。売上目標の57億円に対して約87億円!!! 無観客なのに、GⅡなのに、何年か前のSGと同じレベルの数字であり、去年の浜名湖・甲子園(有人)のそれを24億円ほども凌駕した。
 何度か書いてきたが、この「開催すればバカ売れ」というバブル現象に対して、施行者などの運営サイドが「本場に客がいなくても売れるじゃん」などと安易に考える風潮が蔓延しないことを切に祈りたい。バブルが必ず弾けることは歴史が証明しているし、本場での生レース、モーター音、水しぶき、食堂などが真に熱い固定ファンとボートレース文化を育んでいく。ネット投票の魅力はギャンブル的な利便性でしかない。

f:id:boatrace-g-report:20200712184135j:plain

 そんなことを危惧しつつ、今回のボートレース甲子園がバカ売れした事実は、違った視点で嬉しいトピックでもある。地元にボートレース場がない人々、本場からあまりにも遠すぎて行きたくても行けない人々、つまりは私が「ボートレース辺境地」と呼んでいる地域(北海道、東北、鳥取、島根などなど)の人々も、ビギナーとしてこの大きな数字に貢献してくれたのではないか。ネット投票の急速な普及が、ボートレースファンの裾野も急速に広げてくれたのではないか。そんな楽しい想像が膨らむから。

f:id:boatrace-g-report:20200712184207j:plain

 全国47都道府県の代表選手がすべて参戦し、それぞれの地元のヒーローをそれぞれの地域の人々が応援し、その情熱がボートレース自体の普及にもつながる。そんな大会の基本理念が、今回のバカ売れした数字の中に何パーセントかでも混入しているとするなら、この特殊な性格を持つGⅡは大成功だったと思いたい。そして、来年の大会ではもっともっと辺境地レーサーが活躍し、もっともっとボートレーサーの卵が誕生してほしい。そしてそして、できることなら来年こそは、我が故郷の北海道に深紅の大優勝旗を!(笑)
(photos/チャーリー池上、text/畠山)