BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――柔らかい雰囲気

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 通常の前検日と違うのは、モーター抽選ともうひとつ、3~6号艇の枠番抽選が行なわれる点。その分、選手たちがモーターを受領するタイミングも後ろに押されるわけで、普段なら選手たちがガンガン試運転へと出ていく時間帯でも、整備室でモーターの点検などが行なわれているのであった。
 ちょうどピットに足を踏み入れた時、カポックとヘルメットを準備して装着場に向かっている森高一真とバッタリ。森高は開口一番「クロちゃん、ボロ引いてもうたわ!」と吐き捨てたのだった。一発勝負のトーナメント、しかも短期決戦だけに、できるだけ好素性のモーターを引きたいのは当然。ただ、『週刊BOATBoy』でも触れたとおり、畠山の見立ては「直線は悪くなさそうだった」なので、そこまで悲観する必要もないかも。

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 点検などを終え、真っ先にモーターをボートに装着したのは仲谷颯仁。1号機を引いた男が1番最初にモーター装着……というのはまあ、偶然である。1号機は評判機の1基だけに、地元の仲谷としてはいい抽選運だった。

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 それにしても、選手の動きは本当にテキパキとしていますね。それからものの10分~15分で、ほとんどの選手が装着を終えている。モーターを装着するとき、2人でモーターをよいしょと持ち上げて行なうので、必ず他選手のヘルプが必要。それこそ仲谷は“新兵”だから、先輩の装着にはすかさず駆け付けてヘルプするのだが、自身の作業のかたわら、先輩の動きを見逃すことなく動いているのだから、気の遣いっぷりがハンパじゃない。それは仲谷に限らず、ここにやって来たすべての選手が同様なのだから、その目まぐるしくも整然とした動きは、見ていて実に気持ちいいのである。

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 仲谷同様に、新兵の上田龍星はやはり大阪支部の先輩の装着には全力で駆け付ける。そして、一人一人の先輩に改めて深々と腰を折って挨拶をしていた。何しろこの支部には強い先輩がゴロゴロいますからね。もちろん王者のもとにも歩み寄って、丁寧に頭を下げていた。王者も笑顔で返していて、このやり取り自体が上田にとっては大きな経験となることだろう。こうした舞台の常連に、早くならないとね!

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 それにしても、である。去年も書いたことなのだが、お祭り色が強いレースだからなのか、3日前までヒリヒリしたグランプリ勝負駆けの場に身を置いていたからなのか、空気がどこか軽く感じられるのである。運とか選出順位の勝負に占める割合もかなり大きいしね。チャレンジカップでは特に勝負駆け絡みには関係なかった峰竜太にしても、わざわざカメラマンにポーズをとったりするなど、リラックスした様子が見える。勝ったレース後にはアロハアロハとテンションが高いが、実はレース前とか前検日は緊張感のほうを強く感じさせることが多い男なのだ。にもかかわらず、今日はやけに笑顔が多く見える。

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 もちろん、この空気も悪くない。個人的に、こういう企画レースは選手にも楽しんでもらいたいし。そのうえで、一発勝負の醍醐味をファンに示すべく、ガンガン勝ちにいってもらいたい、というのが僕の願いです。去年の第1回大会で、このルールの面白さをいちばん見せつけたのは、やはり田村隆信。2着→3着→3着で決勝戦に勝ち上がり、枠番抽選で1枠を引いて逃げ切って初代覇者に。今年は選出順位1位ということで、まさにタイトルを防衛する立場。BBCTの醍醐味と、その厳しさを体感する唯一の男である。

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 そうそう、篠崎元志と篠崎仁志の二人が言葉を交わしながら歩いていると、その後方にいた金子龍介がしみじみと語りかけた。「篠崎ブラザーズ、やっぱカッコええなあ」。ダハハ、揃い踏みの二人を見て、改めて実感しましたか。ダービーでは優出と活躍したキンリューだが、SG参加回数がそれほど多いわけではないから、この兄弟の絡みをあまり見る機会がなかったかも(ダービーは元志が不在)。先輩にそう言われて兄弟は苦笑いするしかなかったのだけれど、こんなやり取りもまた企画レースならではかも。この雰囲気、悪ない、のである。

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 さてさて、毒島誠がチャレンジカップ制覇で優先出場枠に入ったことから、繰り上がり出場となったのが寺田千恵。おぉ、レディースチャレンジカップ覇者。3日前の夜の主役が勢ぞろいすることになったわけだ。報道陣に優勝を祝福されると、出ましたテラッチスマイル!「もう、みんなとハグしたい!」と記者さんたちを笑わせていたが、はい、ソーシャルディスタンスでお願いします。ということで、一人エアハグでさらに笑わせていたのだった。テラッチも、先週よりずっとリラックスした雰囲気で、いいね! 選出順位最下位は決して有利とはいえないけれども、出場する以上は可能性はある。かつての地元水面でファンにもたくさんの笑顔を振りまいてくださいね。(黒須田)