BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――新鮮なファイナルピット

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 トーナメントだから? SGではなくプレミアムGⅠだから? 決勝戦のピットは、どこかいつもと違う装いなのだった。
 まず、ピット全体が異様に閑散としていた。先日の蒲郡を思い出す。もっと多くの人――選手や報道陣を含む関係者の姿が散見されたものだが、人の数自体が非常に少ない。だから、ざわめきがほとんどない。優勝戦直前になってピットにあらわれた選手は小野生奈と羽野直也のみ。係留所でレースを見ようということなのだが、彼らとて福岡支部の選手が決勝にいたわけではないから、単にライブ観戦するためにあらわれたのであって、だからテンション上げて水面を見つめるというわけではないのだった。

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 レース後がまた不思議で、まず敗者5人が帰ってきて、控室へ走ったあとは、カポックと勝負服の装備をほどいてモーター返納のため走って装着場にやってくるのだが、これがまたなかなか姿をあらわさない。最初にやって来たのは田村隆信で、そそくさとモーター返納。次にやって来たのは毒島誠で、池上カメラマンに渋面を作ってみせたのはまあ、サービスカットであろう。ちなみに、レース直後は何度も首をひねっていて、篠崎仁志に不満の顔を見せている。スタートタイミングはコンマ32。これに納得いかなかったか。

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 それからやや時間が経って、ようやく原田幸哉が大急ぎの態で整備室へ。さくっと返納作業を終えると、また走って控室へと戻っている。

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 初めて見たシーンと断言できるのは、吉川元浩と守屋美穂が完全に帰郷の支度を整えてからあらわれたことだ。スーツに着替え、荷物をまとめてから整備室へ。そのときには周囲があらかた作業を進めていて、文字通りの返納検査OKを受ける程度。整備室を駆け出すと、そのまま荷物を持ってタクシーへと走るのだった。うん、帰りの新幹線がギリギリなんでしょうかね。でも、若松のSGは何度も取材してきたが、優勝戦の選手が返納に向かう前に着替えちゃっているのは見たことがない。周年のピットを取材したことはないのだが、GⅠだとこんな感じなんでしょうか。
 というわけで、先述の毒島以外はレース後らしい表情はほとんど見つけることができなかった。それくらい、みなが帰郷を急ぐ慌ただしいレース後だったのだ。
 いろんな意味で、実に新鮮なファイナル後のピットでありました。こういうのも悪くないだろう。

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 第2代チャンピオンに輝いたのは寺田祥だ。レース前の寺田は落ち着き払っていたように思う。今年は地元SGで優勝戦1号艇に乗った。この若松でもSG優勝戦1号艇に乗ったことがある。プレッシャーはそちらのほうが大きいに違いなく、それに屈することなく優勝してみせた寺田が、トーナメントという他にないルールの大会とはいえ、(プレミアム)GⅠの優勝戦1号艇で震えることがあるはずないだろう。

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 レース後も、特に喜びを爆発させるシーンは探せなかった。8月メモリアルのピット記事を読み返しても、クールなふるまいであったことが記されており、GⅠならそれに輪をかけてクールであることはまあ自然なことではある。

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 ちょっとした面白シーンは、ボートに乗ってのウィナー撮影をしている間、菊地孝平がずっと祝福のため左手を寺田に向かってあげていた場面だ。しかし、テラショー気づかず(笑)。菊地はむなしく手を下ろし、返納検査のヘルプに向かうのであった。寺田が菊地に気づかないほどテンションが上がっていた……などということはないと思います(笑)。寺田はカメラマンのリクエストに応えるのに集中していただけだろう。

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 表彰式で寺田は、グランプリを見据えて、これでいい勢いを保ちたい旨の発言をしている。グランプリ行きの賞金ランク争いには反映されないこのGⅠ、独特なルールであることも含めて、グランプリ出場選手にとってどれだけの影響があるのかは、まだ2回目ということもあってわからない。だが、決勝の枠番抽選で1号艇を引いたことも含めて、いい波に乗れているのは明らかで、これを最大の大一番につなげたいという気持ちは本音以外の何物でもないだろう。去年の覇者である田村は、トライアル1stから出場して、しっかり2ndに勝ち上がったわけだし、2nd発進の寺田は優出につなげたい。
 来年のBBCトーナメントは選出順位1位で出場。防衛を狙う。舞台は鳴門。そう、初代覇者の地元! 田村が出場にこぎ着ければ、今日タイトルを奪った相手のホームで因縁の対決(?)を戦うわけだ。まあ、無理やりではありますが、それには関係なく楽しかったトーナメント、来年も楽しみであります!(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)